株式会社キャンバス(4575 Growth)
CBP501欧州での開発に活路を求める

2024/02/19

ベーシックレポート改訂版
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

CBP501 欧州に活路を求める
がんを取り巻く微小環境の解明が進展し、2010年以降、がん治療は、オプジーボなどの免疫チェックポイント抗体出現というパラダイムシフトが発生した。しかし、免疫チェックポイント抗体の有効性は、がん種によって高低があることがわかっている。CBP501は、免疫着火剤として、免疫チェックポイント抗体の有効性を高める作用があり、免疫チェックポイント阻害剤が効きにくいすい臓がんで、しかも3次治療を対象としたPhase2は、前半部分のみの解析で良好な結果が得られた。このため、後半部分をスキップし、Phase3へステージアップする計画であったが、今般、米国FDAより、Phase2bとして、Phase3より小規模の症例数で2群比較試験を行うよう指示が出された。キャンバスは、2023年10月の欧州腫瘍臨床学会(ESMO)にて、先般のPhase2の結果が高い評価を受けたことから、欧州でのPhase3開始を本命とし、米国でのPhase2bをリスクヘッジとし位置づけ、欧州での開発を推進する方針へ転換した。

今後のシナリオ
今後のシナリオとして、さまざまなシナリオが想定されるが、ベストシナリオは、2024年2月中に欧州医薬品庁(EMA)にPhase3申請を提出し、年央までにPhase3開始が承認され、年末までに組み入れ開始となり、リスクヘッジとしている米国Phase2bが準備段階で中止できる場合である。セカンドシナリオは、欧州でのPhase3準備がやや長期化し、米国でPhase2bの中間解析を行い、2025年央から欧州でのPhase3が始まるケースである。いずれのケースでも、上市目標年の大幅な後ろずれを回避し、従来の資金計画でPhase3のかなりの部分をカバーできる。最も望ましくないシナリオは、欧州でのPhase3に関する協議が長期化し、米国でのPhase2bをStage2まで行い、その後、米国・欧州どちらでPhase3を実行するかの選択を迫られるケース・米国Phase3前協議が難航するケースである。前2つのシナリオのどちらかで事態が進行することを望みたい。

市場規模は欧州と米国を合わせると1600億円
米国で3次治療のすい臓がん患者で薬物治療を選択する患者数は2万人程度と想定される。欧州で3次治療のすい臓がん患者で薬物治療を選択する患者数は1万3千人程度と想定される。現在、2次治療薬として承認されているオニバイド®の薬価を参考に、CBP501の市場規模を試算すると、ピーク時米国で1060億円程度、欧州では560億円程度の売り上げが期待できる。ベストシナリオでは、欧州市場を対象としたパイプライン価値は300-400億円程度と試算さる。さらに欧州での承認後、大きなコストをかけずに米国でも追随承認されれば、大きな上乗せが期待でき、合計1000億円のパイプライン価値も展望できる。順調に欧州でのPhase3が開始できるか否かは予断を許さない。しかし、欧州のKOL(Key Opinion Leaders)がCBP501を評価していること、過去のFDAとPhase3に関する協議が難航し、欧州で開発承認された後、米国でも承認された例は存在する。投資家サイドは、冷静にCBP501の試験の進行状況と結果を評価したうえで、その価値を考察する段階にあると言えよう。

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