シンバイオ製薬株式会社(4582 Growth)
BCVのプラットフォーム化が進展

2024/01/29

フォローアップ・レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

2023年12月米国血液学会(ASH)にて有望な成果公表
シンバイオの次期主力品候補、抗ウイルス剤ブリンシドフォビル(以下BCV)は、さまざまな疾患領域を対象とするプラットフォームとして、現在、開発が進展中である。このうち一番開発が先行しているのは、免疫不全状態のアデノウイルス(AdV)感染症等を適応症とするもので、2023年12月、米国血液学会(ASH)にて、Ph2に関する有望なトップラインデータが公表された。コホート3において、全例、比較的早期に血中ウイルス量が検出限界値以下に減少しており、また、用量依存的に抗ウイルス活性があることが確認された。また、安全性に関して、治療に関連した重篤な有害事象の発生例は無く、治療に関連した有害事象は全27例中7例あったがいずれも、一過性で、投与終了後は軽快している。現在、投与回数を半減させたコホート4の治験が進行中であるが、これまでの結果で、推奨用量もコホート3の用量で確定されたと考えられる。実際、2024年1月、コホート3までのデータを基に、日本でAdV感染症を対象としたBCV注射剤の用途特許(2043年8月まで有効)が迅速承認された。今後、欧米等でも同一内容の特許を出願していく予定である。

BCVのプラットフォーム化が進展中
BCVが対象とする疾患領域は、免疫不全状態のAdV感染症に限定されるものではない。次に有望視されるのは、免疫不全状態のサイトメガロウイルス(CMV)感染症である。現在、既にこの分野ではマリバビルが承認されているが、耐性の出現が報告されており、耐性出現の可能性が低いBCVの開発が急務である。2024年には、造血幹細胞移植後の感染症等を対象とした次の治験申請へ進むと見込まれる。また、EBウイルス陽性を含むリンパ腫を対象としたBCVの有効性の解明も進展してきており、ここでは免疫チェックポイント阻害剤との併用が検討されている。加えて EBウイルスが原因の一つと考えられる多発性硬化症を対象とした開発も2024年初頭には動物実験段階に入る予定である。このほか、CMVとの関連が考えられる脳腫瘍でも動物モデルの種類を増やして非臨床試験を継続する予定であり、BCVはさまざまな疾患を対象としたプラットフォームとして注目を集めていく可能性が高い。

海外大手製薬会社とのパートナリングの可能性も
トレアキシンの売上げがジェネリック浸透によって浸食されているシンバイオにとって、BCVの開発をすべて独力で行うことは至難である。腎移植後のBKウイルス感染症の開発(Ph2)は症例集積の遅延から一旦プロトコルの見直しになっているが、臓器移植の件数が多い欧米では注目されている分野であり、シンバイオでは2024年中にプロトコルを修正の予定で、欧米の製薬会社と共同開発として開発を再スタートさせる可能性を模索している。また、 BCVはがん微小環境に作用し免疫環境を変える可能性があるため免疫チェックポイント阻害剤との併用が有効であると想定されるなか、免疫チェックポイント阻害剤を有する大手製薬会社とのパートナリングの交渉が浮上する可能性も考えられる。多くの免疫チェックポイント阻害剤の特許切れが2027~2028年に迫るなか、免疫チェックポイント阻害剤を有すると大手製薬会社でも新しい用途を模索し、パートナリングには積極的になってきていると考えられる。

>>続きはこちら(3MB)

TIW/ANALYST NET
証券アナリストに限定せずに、コンサルタントや研究者など幅広い執筆者による企業分析・評価によってアナリストレポートへのアプローチと収入基盤の多様化を目指すプロジェクトです。
本レポートは、株式会社ティー・アイ・ダヴリュが「ANALYST NET」の名称で発行するレポートであり、外部の提携会社及びアナリストを主な執筆者として作成されたものです。
  • 「ANALYST NET」のブランド名で発行されるレポートにおいては、対象となる企業について従来とは違ったアプローチによる紹介や解説を目的としております。株式会社ティー・アイ・ダヴリュは原則、レポートに記載された内容に関してレビューならびに承認を行っておりません。
  • 株式会社ティー・アイ・ダヴリュは、本レポートを発行するための企画提案およびインフラストラクチャーの提供に関して、対象企業より直接的または間接的に対価を得ている場合があります。
  • 執筆者となる外部の提携会社及びアナリストは、本レポートを作成する以外にも、対象会社より直接的または間接的に対価を得ている場合があります。また、執筆者となる外部の提携会社及びアナリストは、対象会社の有価証券に対して何らかの取引を行っている可能性あるいは将来行う可能性があります。
  • 本レポートは、投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたものであり、有価証券取引及びその他の取引の勧誘を目的とするものではありません。有価証券およびその他の取引に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任で行ってください。
  • 本レポートの作成に当たり、執筆者は対象企業への取材等を通じて情報提供を受けておりますが、当レポートに記載された仮説や見解は当該企業によるものではなく、執筆者による分析・評価によるものです。
  • 本レポートは、執筆者が信頼できると判断した情報に基づき記載されたものですが、その正確性、完全性または適時性を保証するものではありません。本レポートに記載された見解や予測は、本レポート発行時における執筆者の判断であり、予告無しに変更されることがあります。
  • 本レポートに記載された情報もしくは分析に、投資家が依拠した結果として被る可能性のある直接的、間接的、付随的もしくは特別な損害に対して、株式会社ティー・アイ・ダヴリュならびに執筆者が何ら責任を負うものではありません。
  • 本レポートの著作権は、原則として株式会社ティー・アイ・ダヴリュに帰属します。本レポートにおいて提供される情報に関して、株式会社ティー・アイ・ダヴリュの承諾を得ずに、当該情報の複製、販売、表示、配布、公表、修正、頒布または営利目的での利用を行うことは法律で禁じられております。
  • 「ANALYST NET」は株式会社ティー・アイ・ダヴリュの登録商標です。