オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Growth)
大きなリターンが期待できる製薬企業型事業モデル

2023/07/12

フォローアップ・ レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

テロメライシン®のGMP製造確立は順調に進展
オンコリスバイオファーマの主力開発品は、テロメライシンという遺伝子を改変した腫瘍溶解ウイルスである。現在、オンコリスバイオファーマ独力での製品化に向けて、食道がんに絞って、順調に臨床開発を推進しており、2024年承認申請まであと一歩のところまで来ている。承認申請には、商業規模でのGMP製造のプロセスバリデーションが求められているが、すでにHenogen社(ベルギー)における商用規模でのGMP製造は、1回目が完了した。先月、オンコリスバイオファーマ社が、Henogen社に査察を実施した結果、いくつか改善が必要な部分はあるものの、各製造段階での品質チェックで問題は発生しておらず、また各工程もスムーズに流れており、想定通りの収率が得られている。

承認に向けて安定供給体制の整備に着手
2023年7月7日、オンコリスバイオファーマ社は、商用規模でのGMP製造の確立が順調に進捗していることを背景に、承認申請に向けて、テロメライシン®の安定供給体制整備のための資金調達を発表した。安定供給体制は、マイナス80度の冷凍状態で日本国内に輸入したテロメライシン®製剤に対し、国内販売用に向けて2次包装等を施す国内製造所と出荷検査を行う体制の整備、並びに承認後にスムーズに製品が供給できるように在庫の事前準備から構成される。また、承認申請のためには製造販売体制の構築も不可欠であり、薬事三役の選定と安全性評価のための市販後調査機能の設置を実行している。以上の安定供給体制および製造販売体制のため、調達された資金が振り向けられる予定である。なお、自社で安定供給体制の整備を先行して実施することにより、販売提携交渉もオンコリスバイオファーマ社に有利な条件で進展する効果も期待できる。

大きなリターンをもたらす製薬企業型事業モデルへの投資
オンコリスバイオファーマ社では、テロメライシンに関し、自社で製造販売承認まで開発する製薬会社型事業モデルを採用し、他のパイプラインでは、比較的早期の開発段階で導出するライセンス型事業モデルを採用し、会社全体として両者のハイブリッド型へビジネスモデルを高度化している。ライセンス型事業モデルでは、導出先の都合で、それまで手塩にかけて開発してきた新薬候補品の命運が左右されてしまう。導出先の都合で開発が中止されると、株価の急落が生じやすい。一方、製薬企業型事業モデルは、自社が開発の主導権を掌握しリターンの最大化を図れる。また、適応症や対象地域などの部分導出やアライアンスなどの多彩な戦略を並行して企図することも可能である。食道がんを対象とした放射線併用療法のテロメライシン®は、既にPivotal試験の患者組入と観察期間を終了し、専門家によるデータ解析に入っている。今年秋には、解析結果の公表が予定され、2024年の申請まであと一歩というところまで開発が進展している。今回の調達資金を基にして自社で主導権を取れる製薬企業へ成長することにより、大きな成果を期待できるのも遠い日ではない。

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