キッズウェル・バイオ株式会社(4584 Growth)
SHED: 再生医療の真打ち登場
フォローアップ・レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯
サマリー1:SHEDは増殖能力・組織修復能力に優れた幹細胞
キッズウェル・バイオは、バイオシミラー事業による収益基盤をもとに、再生医療等製品であるSHED(乳歯歯髄幹細胞)の開発を加速させている。再生医療の分野では、骨髄由来の間葉系幹細胞が、最も難しいと言われる脳梗塞や脊髄損傷後の神経再生に挑戦し、注目を浴びてきたが、正式承認には至ったものはまだない。
再生医療等製品の承認には、商用生産の製造工程確立が不可欠だが、原料となる骨髄等の生体成分の入手に手間がかかることに加え、増殖能が低く、老化しやすい幹細胞では、多くの患者に提供可能なレベルでの商業生産プロセスを確立するにはハードルが高い。これらの問題点に対して、SHEDは、他の間葉系幹細胞よりも入手が容易であることに加え、増殖能が高いため、このハードルを容易に乗り越えることが可能であると期待される。
また、他の間葉系幹細胞よりも、神経栄養因子の分泌能に優れ、神経再生に適していると考えられ、発症初期の急性期における炎症収束と神経保護のみならず、炎症収束後の慢性期において神経修復に寄与することも検証されている。将来は、脳にSHED自身、あるいはSHEDが誘導する免疫系の細胞を集積させ、症状の改善を後押しすることも期待できる。
サマリー2:第一世代再生医療
キッズウェル・バイオでは、遺伝子改変等を加えないSHEDそのものを細胞治療薬として利用する「第一世代SHED」の開発プロジェクトを多数実行している。
その対象疾患は、SHEDの特色を生かした神経分野と骨形成に関連するものであり、またその多くが、小児分野または希少疾患に属し、有効な治療法が確立されていない、アンメット・メディカル・ニーズが高いものである。それらの多くがアカデミアとの提携による開発であるが、今後1年以内に臨床研究を開始し、2024年度には、複数の対象疾患を対象に企業治験へ移行することを計画しており、最終的な製品化の目標時期は2030年度と想定している。
また、開発に当たって、ガラパゴス化を避けるため、海外での開発展開も視野に入れ、人財やプラットフォームの構築に力を入れてきている。重要な製造プロセスの確立に関しては、既に2022年8月、SHEDのマスターセルバンクを世界で初めて確立し、最初の関門を乗り越えている。さらに治験薬のGMP製造を強化するためにミナリス社など複数社と製造開発活動を展開している。
サマリー3:第二世代デザイナー細胞への応用
遺伝子導入で改変したSHED(第二世代SHED)の開発も進展している。2022年11月、浜松医科大学との共同で、自殺遺伝子を組み込んだSHEDが脳腫瘍細胞に対し殺細胞効果があり、しかもSHEDが誘導されたがん細胞のみならず、次々と隣接するがん細胞を殺傷していくBystandar効果も持つことが公表された。SHEDが腫瘍細胞から分泌されるサイトカインに誘引される性質を利用し、自殺遺伝子によって生成される毒物を腫瘍細胞に受け渡すDDSとして活用することで、Bystandar効果を発揮している。
さらに、自殺遺伝子だけでなく、さまざまな技術と組み合わせが期待できる。現在、さまざまな疾患を対象として、技術導入に向けて提携や買収も視野にアクションを強化している。
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