オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Mothers)
選択と集中により承認申請まで独力で完遂

2021/11/11

フォローアップ・ レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

中外製薬との提携解消
2021年10月19日、オンコリスバイオファーマ社は、2019年4月に中外製薬との間で締結したがんのウイルス療法テロメライシン®(OBP-301)に関するライセンス契約を解消することに合意したと発表した。テロメライシン®そのものの安全性や有効性に問題があったわけではない。既に、契約解消に至る少し前の2021年9月末に、中外製薬は、「化学放射線療法併用による食道がんPhase1」の患者募集と「テセントリク®(抗PD-L1抗体)及び化学放射線療法併用による頭頸部がんPhase1」の計画の中止を決断していた。中止に至った理由として、①コロナ感染症拡大により病院ベッドが中等症から重症患者の治療に優先され、治験のためにベッドが確保できなくなったこと、②頭頸部がんにおいては、米国LONZA社に委託していた治験薬の供給が大幅に遅れたことが挙げられている。テロメライシン®の治験薬の製造過程で度々トラブルに見舞われたことと、世界中のバイオ医薬製造施設においてコロナワクチン製造が最優先され、細胞培養液や製造部材などがひっ迫し、その影響でテロメライシン®の治験薬製造が遅れたことが今般の契約解消の背景にあると考えられる。契約解消の正式な時期と、それまで継続される臨床試験の費用負担については、中外製薬とオンコリスバイオファーマ社で年内に決定される見込みである。

選択と集中により承認申請まで独力で完遂可能
オンコリスバイオファーマ社は、契約解消後、当面、国内で食道がんを対象とした放射線併用療法に絞って、単独で開発推進する方針である。食道がん対象の放射線との併用療法のPhase2試験は、先駆け審査指定対象下で進行しており、既に目標(37例)の約半分の組入れ患者数に到達している。現在の契約の有効期間中(最長で2022年10月まで)に、臨床試験は中外製薬の下で継続されるが、オンコリスバイオファーマ社では、この間に目標症例数近くまでの組入が進行することを期待している。契約解消後は、中外製薬が行っていた臨床試験を引継ぎ、自社開発にスイッチし、単独で開発を推進する予定である。現在、自社で臨床試験を引き継ぐための体制整備に着手している。現在保有する現預金と今後見込まれる収入で、2024年前半での承認申請まで完遂しようと開発費用の節約を企図している。

新型コロナ治療薬の新規メカニズムを生体レベルで確認
オンコリスバイオファーマ社が開発中の新型コロナ感染症治療薬OBP-2011は、経口投与可能で、デルタ株など各変異種にも有効、しかも他の治療薬と作用メカニズムが異なるため併用が可能な化合物である。2021年10月26日、フランスで実施していた薬理試験の速報が公表され、新規メカニズムであるヌクレオカプシド阻害剤の有効性を初めて生体レベルで確認、すなわち新型コロナウイルスに対して感受性を有するハムスターに野生型コロナウイルスを感染させた後、OBP-2011を4日間連続経口投与した結果、肺組織中の感染性ウイルス量を有意に減少させる(半減した)ことを確認したと発表した。この化合物はウイルスのRNAの複製を阻害するRNAポリメラーゼ阻害剤のように感染時に服用しないと効果がないものとは異なり、感染後12時間経過後でも奏効するとされている。現時点では、2022年に治験申請を行い、2023年までにPOCの取得を目指すというスケジュールは不変である。

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