株式会社キャンバス(4575 Mothers)
資金調達で見えてきた4つのシナリオ
フォローアップレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯
真水で20億円の資金調達計画を発表
2021年9月2日、キャンバスは、真水(CB借り換え分を除く)で20億円ほどの資金調達計画を公表した。同社の主力開発品であるCBP501(免疫着火剤)について、Phase2のStage1がまもなく開始される。このStage1に必要な費用は既に2019年と2020年に実施された資金調達で調達済みである。ただし、その後の展開を考えると、何らかの資金調達の必要性が浮上する。Stage1でPhase1bと同等の有効性を示すことができた場合には、Stage2を経ずにPhase3に入ることとなる。他方、Stage1でPhase1bと同等の有効性が示せなかった場合は、Stage2(各群14例)を行ったうえで、Phase3へ繋げていくこととなる。(Phase3は、比較的小規模のPart1と大規模なPart2の2つの部分に分けて実施されるものと想定される。)会社は提携活動を継続しているが、メガファーマの導入活動が、流行のモダリティや成功が見えている後期開発品に集中しがちな現況下、なかなか実現には至っていない。キャンバスは、今般、CBP501開発の推進を確固たるものとするため、Phase3のPart1ないしはPhase2のStage2までをカバーする資金を確保するための新株予約権発行と2024年に返済期限が到来する転換社債の借り換えを発表した。
CBP5014つのシナリオ
CBP501の開発の経路として、当面のシナリオとして次の4つが想定される。
① Stage1でPhase1bと同等の有効性を示し、この時点で提携導出が実現し、Phase3の Part1から提携先が主導して開発が推進されるシナリオ
② Stage1でPhase1bと同等の有効性を示し、Phase3のPart1へステージアップする。 このPart1までキャンバスが開発を推進し、導出提携は、このPart1の完了時点となるシナリオPart2から提携先が主導)
③ Stage1ではPhase1bと同等の有効性を示すことができず、Stage2までキャンバスが推進するが、Stage2完了時に良好な結果が得られ、導出提携が成功するシナリオ (Phase3のPart1から提携先による開発)
④ Stage1ではPhase1bと同等の有効性を示すことができず、Stage2まで行い、さらに、 Phase3のPart1も2群ではなく3群以上で行わなければならないこととなり、導出提携はPart1完了時となるシナリオこの場合、再度Part1のための資金調達が必要
キャンバスが試算したPhase2の成功可能性と対照すると、Stage1で通過するケース(①+②)の可能性は、63~30%で、③の可能性は30∼40%、④の可能性は5~8%と考えられよう。
CBP501のパイプライン価値は189~268億円(税前)
キャンバスでは、米国でのすい臓がん3次治療を対象としたCBP501の市場規模を、ピーク時900億円と想定している。これを基に、各種前提を置いたうえでの試算だが、パイプライン価値(税前)は189億円~268億円と算出できる。もちろん、2次治療への適応拡大や他のがん種への適応拡大の可能性もあるため、パイプライン価値はさらに膨らむ可能性がある。現在の時価総額に、負債(転換社債7.5億円)と今回の調達(20億円)を加えても、パイプライン価値との乖離は大きい。メガファーマの注目点が流行のモダリティや後期開発品に集中する中、冷静に価値を見極める投資家にこそ、リターンがもたらされる。
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