オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Mothers)
全世界でのオプション権行使に向けて
フォローアップ・レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯
腫瘍溶解ウイルスの開発は百花繚乱状態
新しいがん治療として、腫瘍溶解ウイルスを用いた療法が注目を集めている。ウイルスの種類もアデノウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、ワクシニアウイルス等さまざまなウイルスが用いられ、また免疫賦活分子を組み込んだものなど種々の工夫が組み込まれている。最近の潮流は、免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の開発である。また、ウイルスに免疫チェックポイント阻害剤を組み込む試みもある。
併用試験の初期的な結果は有望。適応がん種の拡大も
テロメライシンと免疫チェックポイント阻害剤(キイトルーダ)の併用試験(日本でのPh1a)の中間結果は、有望なものであった。症例数が少ないため断定できないが、併用療法の効果が、単剤の場合の効果を大きく上回った。米国でも、胃がん及び胃食道接合部がんを対象に併用療法の医師主導Ph2が5月に始まっているが、今般、頭頸部がんでも、併用療法の医師主導Ph2の準備が開始された。一方、正式にメラノーマ対象の開発終了が宣言され、「選択と集中」は有言実行されている。遅れていた放射線併用企業治験Ph1(日本:食道がん)の患者組入も完了した。年内に結果を取りまとめ、先駆け指定を利用した申請に向けて、開発が中外製薬にバトンタッチされる予定である。アジアでの肝細胞がん対象のPh1も終了が近付いている。
免疫チェックポイント阻害剤併用試験の結果がオプション行使の引金か
株式市場では、オンコリスバイオファーマ社と中外製薬が結んだ契約のうち、アジア以外の全世界への独占的オプション権行使の契機と時期が注目されている。オプション権が行使された場合には、総額500億円以上のライセンス金額が中外製薬からオンコリスバイオファーマ社に支払われるためである。このオプション行使の契機と考えられるのは、現在進行中のテロメライシンと免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の医師主導試験(日本・米国)の結果であろう。その結果次第で中外製薬の判断が浮上してくる可能性がある。また、その時期は、各医師主導試験の中間解析結果が出てくる2020年央以降と考えられる。ところで、会社側は、今期の業績予想を非開示としている。その背景には、現在進行中のいくつかのパイプラインでマイルストーン発生の引き金となる事象が発生する可能性があるためと推察され、短期的な業績イベントにも目を配りたい。
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