オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Mothers)
パイプライン価値の上方修正

2019/05/15

フォローアップ・レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

先駆け審査指定獲得と大型ライセンスアウトを実現
オンコリスバイオファーマ社の主力開発品は、テロメライシンという遺伝子を改変した腫瘍溶解ウイルスである。2019年4月、手術不能・化学療法不適応の食道がんに対する放射線との併用療法に関して、まだ臨床試験第Ⅰ相の途上であるにもかかわらず、先駆け審査指定制度の対象品目に指定された。さらに、同じく4月、オンコリスバイオファーマ社は、テロメライシン(OBP-301)について、日本・台湾における独占的ライセンス契約と日本・台湾・中国・香港・マカオを除く全世界における独占的オプション権を中外製薬に付与するライセンス契約を締結した。ライセンス契約の一時金は5.5億円に過ぎないが、対象地域拡大というオプション行使で、マイルストーン総額は500億円程度、それに加えて、販売ロイヤリティ収入も見込むことができる。

中外製薬との契約で対象地域と対象疾患が大きく拡大
ロシュグループの一員である中外製薬とライセンス契約を締結したことには、2つの大きな意義があると考えられる。第一に、オプション契約とはなっているものの、対象地域が、中国(含む香港・マカオ)以外の全世界に拡大されることとなり、期待される市場規模が拡大したことである。第二の意義は、ロシュグループは、テセントリク®という免疫チェックポイント阻害剤を保有しており、さまざまながん種での併用療法に展開できる可能性が広がったことである。また、ライセンス契約にとどまらず、資本業務提携も締結した点も注目される。テロメライシンのような遺伝子改変ウイルスの取り扱いには、技術的な面に加え、カタルヘナ法への対応も含めさまざまなノウハウが必要であると考えられ、中外製薬がオンコリスバイオファーマ社に期待するものは大きいと推量される。

パイプライン価値(試算値)も407~607億円へ上方修正
今回のライセンス契約(オプション契約も含む)締結を受けて、対象地域を日本・北米・欧州とし、対象疾患も、食道がんに加え、転移性尿路上皮がん、胃がん(ステージⅢ・Ⅳ:セカンドライン以降)、トリプル・ネガティブ乳がんに対する免疫チェックポイント阻害剤併用療法とし、パイプライン価値を再試算した。さまざまな前提条件下での試算値ではあるが、4がん種合計で、407~620億円と見込まれる。さらに今後の開発の進展状況次第で、成功確率の上昇や対象がん種の拡大(頭頸部がん等)の可能性があると考える。

 

>>続きはこちら(1MB)

TIW/ANALYST NET
証券アナリストに限定せずに、コンサルタントや研究者など幅広い執筆者による企業分析・評価によってアナリストレポートへのアプローチと収入基盤の多様化を目指すプロジェクトです。
本レポートは、株式会社ティー・アイ・ダヴリュが「ANALYST NET」の名称で発行するレポートであり、外部の提携会社及びアナリストを主な執筆者として作成されたものです。
  • 「ANALYST NET」のブランド名で発行されるレポートにおいては、対象となる企業について従来とは違ったアプローチによる紹介や解説を目的としております。株式会社ティー・アイ・ダヴリュは原則、レポートに記載された内容に関してレビューならびに承認を行っておりません。
  • 株式会社ティー・アイ・ダヴリュは、本レポートを発行するための企画提案およびインフラストラクチャーの提供に関して、対象企業より直接的または間接的に対価を得ている場合があります。
  • 執筆者となる外部の提携会社及びアナリストは、本レポートを作成する以外にも、対象会社より直接的または間接的に対価を得ている場合があります。また、執筆者となる外部の提携会社及びアナリストは、対象会社の有価証券に対して何らかの取引を行っている可能性あるいは将来行う可能性があります。
  • 本レポートは、投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたものであり、有価証券取引及びその他の取引の勧誘を目的とするものではありません。有価証券およびその他の取引に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任で行ってください。
  • 本レポートの作成に当たり、執筆者は対象企業への取材等を通じて情報提供を受けておりますが、当レポートに記載された仮説や見解は当該企業によるものではなく、執筆者による分析・評価によるものです。
  • 本レポートは、執筆者が信頼できると判断した情報に基づき記載されたものですが、その正確性、完全性または適時性を保証するものではありません。本レポートに記載された見解や予測は、本レポート発行時における執筆者の判断であり、予告無しに変更されることがあります。
  • 本レポートに記載された情報もしくは分析に、投資家が依拠した結果として被る可能性のある直接的、間接的、付随的もしくは特別な損害に対して、株式会社ティー・アイ・ダヴリュならびに執筆者が何ら責任を負うものではありません。
  • 本レポートの著作権は、原則として株式会社ティー・アイ・ダヴリュに帰属します。本レポートにおいて提供される情報に関して、株式会社ティー・アイ・ダヴリュの承諾を得ずに、当該情報の複製、販売、表示、配布、公表、修正、頒布または営利目的での利用を行うことは法律で禁じられております。
  • 「ANALYST NET」は株式会社ティー・アイ・ダヴリュの登録商標です。