シンバイオ製薬株式会社(4582 JASDAQ)
パイプライン価値を約518億円へ上方修正

2019/04/16

ベーシックレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

製薬ベンチャーから製薬会社へステージアップ
シンバイオは、自社で創薬研究を行うのではなく、世界中の創薬企業とのネットワークと目利き力を活かして有望な新薬を導入し開発してきた。開発のターゲットは、医療ニーズが高いにも拘わらず、大手があまり参入して来ない希少疾患(がん、血液を中心とする希少疾患)に絞るニッチ戦略で、高シェア・高収益を狙っている。また、導入する新薬候補は原則として既に有効性・安全性が確立されたもののため、開発リスクは低く抑制されている。実際、シンバイオの第一号開発品(トレアキシン)は、導入から僅か5年という短期間で承認・発売に至った。
今般、主力品であるトレアキシン®が標準療法の地位を確立したところである。また、さらなる適応拡大や剤型変更による製品寿命の延長も視野に入ってきたところであり、シンバイオは自社販売体制の構築へ舵を切り、名実ともに製薬会社へステージアップを目指す。

主力品の適応拡大とライフサイクル・マネジメントで黒字化が視野に
トレアキシン®は2010年に悪性リンパ腫の一種である再発・難治性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を対象に承認されたあと、2016年には、慢性リンパ性白血病や未治療の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫を適応対象とする承認を獲得した。
現在は、さらなる適応拡大を目指し開発が進行中で、再発・難治性の中高悪性度非ホジキンリンパ腫(DLBCL)の第Ⅲ相臨床試験の患者登録が既に完了している。加えて、剤型変更によるライフサイクル・マネジメントも実行中である。トレアキシン®は2020年で承認から10年経過し、後発品に曝されるリスクがあるが、米国イーグル社から、使い勝手の良い液剤を導入し、現在の凍結乾燥剤を置換していくことで、そのリスクを回避していく方針である。
これらの方策により、トレアキシン®の市場規模は、ピーク時204億円程度まで拡大する可能性がある。最近、注目されている白血病対象のCAR-Tとの併用など、新規の併用療法も考慮すると、さらに拡大が見込まれよう。
トレアキシン®の適応拡大や液剤導入、第二の開発品であるリゴセルチブの開発、さらに経常的な新薬の探索活動など高水準の開発コストと自社販売体制の整備が重荷になるものの、トレアキシン®の売上拡大で2021年12月期には営業利益が黒字に転化する可能性は高い。

新薬探索コスト等考慮後のパイプライン価値は、518億円程度(税前)と試算
自社販売体制を前提としたトレアキシン®の現在価値(税前)は、①液剤への切り替えによる粗利益率の上昇、②切り替え時期の若干前倒し、③造血器腫瘍領域でバックボーンとしての地位を確立したことに鑑み、再発・難治性中高悪性度非ホジキンリンパ腫(r/rDLBCL)を対象とした試験の成功確率を100%としたこと、を反映して、約404億円に上方修正した。
リゴセルチブの現在価値も、経口剤の第Ⅱ相臨床試験が良好な結果に終わったことを反映し、成功確率を50%へ変更したことを主因として187億円へ上方修正する。
この2つのパイプライン価値合計から、経常的に発生する新薬探索コストや全社費用を除いたシンバイオの事業価値はおよそ518億円(税前)と推定される。今後2年間に発生する資金調達(計70億円程度)を考慮しても、現在の時価総額と事業価値の間の乖離は大きい。

 

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