月にマーケットを動かす力はあるのか ~月食と日本株の関係を探る~

2019/01/18

 株式マーケットを分析する手法には大きく分けて2つがある。1つが対象企業の財務状態などを基にその企業株を分析するファンダメンタル分析である。もう1つが株価の時系列推移(チャート)の形状の類似性(相似性)からインプリケーションを得るテクニカル分析である。他にも統計学に基づいた数理モデルを用いた分析など様々なものがある。

 他方で、数理的な分析をする場合やテクニカル分析を行う際には、別の指標やイベントとの関係性を検討する場合も在る。たとえば株価の将来推移を考えるのにドル円マーケットの動向を検討するというものだ。両者に相関があるという仮定の下、もしくは相関の有無を検討すべく、こうした分析を行う。

 相関関係とは一方の指標が上昇(増加)した場合のもう一方の指標の上昇(増加)しやすさを表す。因果関係よりも緩い関係性である。したがって、因果的には一見無関係に見える二者間に相関関係があることも少なくはない。ただし、逆に実際には別の因果がそれらの間に介在するために見かけ上の相関が生じている場合もあり得るため、注意が必要である。

 そのような相関ペアの中には、大学といったアカデミックでは表立って取り上げられることが少ないものの、トレーダーといった現場の中で経験則的に正しいと“流布”されている様々なペアがある。

 その典型例が太陽黒点の数と株式マーケットの周期関係である。古くは英国の著名な経済学者であるスタンレー・ジェヴォンズが研究した同関係は、ジェヴォンズの業績の偉大さが手伝って、現在でもアカデミックの分野でも度々取り上げられる稀有なテーマである(※1)

 太陽活動と株式マーケットに相関関係があるのだとすれば、その他の天体の活動と金融マーケットにも相関がある可能性を考えるのは自然である。また我々が住む地球は太陽系の一部であるが、万有引力の法則が教えるように二物体間には引力が働く。したがって地球上で生じる活動に地球外の星々が(その距離が変わることで)影響を与える可能性を示唆する。そこで本稿では、マーケット実務家の間で度々話題となる、天体の活動と金融マーケットの関係性を分析する。その中でも、今週末(20・21日)に皆既月食が発生することを受け、今回は「月食と日経平均に関係性があるのかどうか」を考えることとしたい。

 

 月食とは地球が太陽と月の間に入り地球の影が月にかかることによって月が欠けて見える現象を指す。月食にはその一部が欠ける部分月食と皆既月食の2種類がある。これは月の軌道と地球(およびその影(本影))の軌道が一致しないために、常に本影が月に完全に接触する訳ではないからである。

 2010年以降に生じた月食の一覧が下掲する図表1である。これを見れば明らかなように、月食は一見して分かる周期性を有しているわけではないことが分かる。

 

(図表1 2010年以降に生じた月食の一覧)

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(出典:国立天文台)

 

 では早速この10年弱の間に生じてきた月食と日経平均株価の推移を見ていく。まずは部分月食に着目してみよう。

(図表2 2010年6月26日(土)前後10日間における日経平均の日足チャート)

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(出典:筆者作成)

 最初に2010年6月26日(土)の部分月食前後におけるマーケット動向を図示したのが上掲の図表2である。月食の直前週からその翌週の間で下落トレンドに転換していることが分かる。

次に2012年6月4日(月)前後の動きを見てみよう。

 

(図表3 2012年6月4日(月)前後10日間における日経平均の日足チャート)
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(出典:筆者作成)

 このときは2010年のときよりも明確に、月食の前後でトレンドが上昇へと転換していることが分かる。とはいえ、図表2は週末で、図表3は週始まりである。マーケットには曜日効果が存在するというのがファイナンス研究者での常識である。

 そこで最後に2017年8月8日(火)を見てみる。このときもまた、下落トレンドの始まりが同日であることが見て取れる。以上をまとめると、部分月食が生じるタイミングが日経平均マーケットでトレンド転換をもたらすタイミングに概ね一致していると言えそうである。

(図表4 2017年8月8日(火)前後10日間における日経平均の日足チャート)

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(出典:筆者作成)

 では皆既日食の場合はどうか。

(図表4 2011年12月10日(土)前後10日間における日経平均の日足チャート)

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(出典:筆者作成)

(図表5 2015年9月28日(土)前後10日間における日経平均の日足チャート)

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(出典:筆者作成)

(図表5 2014年10月8日(水)前後10日間における日経平均の日足チャート)

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(出典:筆者作成)

 部分月食のときよりは分かりづらいものの、最初のものではトレンド変換点になっており、後2者ではそれまでの下落度合いが翌日に度合いが大きくなっている。

 以上をまとめると、部分月食・皆既月食ともにその前後では日経平均マーケットの転換が生じていることが分かる。今回見た日程では、部分月食の時点の方がより明確なトレンド転換点となっている。

 

 では、なぜそうなのか。
 1つ考えなければならないのが、実はクオンツなどの最新科学の粋を集め、アルゴリズム取引などデジタルの最前線にいる米欧の機関投資家がダメ押しとしてその投資の最後に頼るのが「占い」であるという非公開情報が在るということである。特に西洋占星術への信頼が大きいのだという。
 月食は満月のときに生じる。西洋占星術において満月は「手放し」や「成就」と結び付けられるのだという(※2)。したがって、月食と金融マーケットに関係があってもおかしくはなく、上掲した図表を見る限り、実際に西洋占星術に則って投資している向きが存在する可能性があるということだ。
国内・国際情勢で地政学リスクや経済動向のみならず、占いもマーケットを読み解くのに有用かもしれない。

 

*より詳しい事情についてご関心がある方はこちらからご覧ください(※3)

 

※1 http://mainichibooks.com/sundaymainichi/column/2017/03/05/post-1436.html

※2 https://paxluna.net/?p=1617

※3 https://www.mag2.com/m/0000228369.html

 

 

 

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所
トムソン・ロイターで配信され、国内外の機関投資家が続々と購読している「IISIAデイリー・レポート」の筆者・原田武夫がマーケットとそれを取り巻く国内外情勢と今とこれからを定量・定性分析に基づき鋭く提示します。
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