アフター米中間選挙は相場の「アク抜け材料」か「濃霧注意報」か?

2018/11/09

アフター米中間選挙は相場の「アク抜け材料」か「濃霧注意報」か?

 

今週の国内株市場ですが、日経平均は22,000円台を中心とした展開が続いています。米国の中間選挙やFOMCといったイベントを控えて動きづらい面がある中、これまでのところ堅調な展開です。

 

116日に行われた米中間選挙については、7日(水)の日本株市場の取引時間中に大勢が判明し、上院では与党共和党が、下院では野党民主党が過半数の議席を獲得する見通しとなりましたが、この日の日経平均は、当初は前日比で300円近く上昇したかと思えば、その後は下落に転じ、引け間際には22,000円台を下回る場面を見せるなど、やや慌ただしい値動きとなりました。

 

FOMCの結果待ちや、週末の国内株価指数オプション取引・mini先物取引のSQを控えた需給の思惑、中国株市場(上海総合指数)の下落の影響もあり、ニュース等のヘッドラインやキーワードを拾って反応する機械的な取引(アルゴリズム取引・リスクパリティ戦略に伴うポジション調整)の影響もあってフラついた印象です。

 

その一方で、選挙の結果自体はほぼ事前の想定通りだったことで、「イベント通過によるアク抜け感で株式市場は上昇する」という見方は多く、実際に米国株市場では、大きく株価を上昇させていて、初期反応は良好となっています。

 

とはいえ、中間選挙の結果を受けたトランプ氏の政権運営に対する態度が変わるのか(米大手IT企業などに対する発言など)、そして、「ねじれ」となった議会構成の影響など、今後の動向については正直読めない部分があります。

 

「ねじれ」が生じたことで追加減税などの経済政策は通りにくくなるほか、政府債務上限の引き上げを巡って対立が深まったり、民主党の協力が得やすい外交面や通商政策面でより強硬な姿勢になることも考えられ、中国だけでなく、日本に対しても風当たりが強まる可能性があります。

 

外交・通商面では、11月末のG20開催に合わせて行われる予定の米中首脳会談への注目度が高まりそうなほか、政府債務の上限引き上げについても、予算が未成立の部分については、暫定予算の期限が127日までとなっているため、議会の対立が浮き彫りになる点には注意が必要かもしれません。

 

経済政策については功罪両面があります。現在の米国景気の好調さは、いわゆるトランプ減税などの財政出動策が功を奏している面が大きいわけですが、本来、こうした政策は景気が良くない時に行われるものです。景気拡大期に実施されれば当然ながら景気が過熱しやすくなり、金利上昇圧力も高まりやすくなります。「ねじれ」によって、さらなる財政出動に伴う経済政策が抑制されれば、金利上昇への警戒が和らぐほか、財政悪化の回避、景気がピークアウトした時の政策手段を温存することになります。

 

普通は「ねじれ」となれば、野党の協力を得るために協調路線へと舵を切るだろうと考えるのが自然ですが、トランプ大統領のキャラクターを考慮すると、対立構造を深めて野党にプレッシャーをかけることも想定されるため、今回の選挙の結果は先行きの「濃霧注意報」シナリオも秘めているのかもしれません。

 

 

 

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