トランプ政権~ここまでの評価

2017/04/19

市川レポート(No.382)トランプ政権~ここまでの評価

  • 税制改革を含む予算の全体像はいまだみえず、スケジュール遅延や予算規模縮小のリスクが残る。
  • 一方、通商政策では対話重視の姿勢を示し、また為替政策もドル高阻止を前面には打ち出さず。
  • 内政は大統領と議会の関係にやや不安が残ったが、外交は懸念されたほど保護主義ではなかった。

税制改革を含む予算の全体像はいまだみえず、スケジュール遅延や予算規模縮小のリスクが残る

トランプ米大統領は4月29日に就任100日目を迎えます。そこで今回は、トランプ米大統領のここまでの行動を振り返り、市場に与える影響という観点から評価します。トランプ米大統領が選挙期間中に掲げた主な政策は、①大規模減税とインフラ投資、②保護主義的な通商政策、③ドル高阻止の為替政策であり、この他にもオバマケア廃止、テロ多発国からの入国制限などがありました(図表1)。

市場が最も期待したのは①でしたが、現時点でもまだ全体像はみえておらず、過度な期待は徐々に剥落しているように思われます。今後のスケジュールは、5月にトランプ米大統領が税制を含む本格的な予算教書を議会に提出し、それを受けて議会が18年度の予算審議を開始します。ただ審議の遅れや、議会での予算規模の縮小はリスク要因であり、6月頃にも市場で材料視される可能性があります。

一方、通商政策では対話重視の姿勢を示し、また為替政策もドル高阻止を前面には打ち出さず

②の通商政策について、市場の懸念は関税引き上げなど保護主義的な動きでしたが、実際のトランプ政権の姿勢は、貿易相手国との対話を重視するものでした。例えば日米首脳会談では「日米経済対話」の新設で合意し、米中首脳会談では対中貿易赤字是正の「100日計画」策定で合意しています。トランプ政権の真の狙いは、外国製品の輸入関税引き上げではなく、米国製品の輸出拡大にあると思われ、少なくとも保護主義ではありません。

③の為替政策については、日本の財務大臣と米国の財務長官との間で緊密な協議を続けていく方針が日米首脳会談で確認されています。また米国は先の半期為替報告書で、中国の為替操作国認定を見送りましたが、これについては北朝鮮政策を巡る米中協力に配慮したところが大きいと推測されます。ただいずれにせよ米国には、ドル高阻止の為替政策を前面に打ち出しつつ貿易不均衡の是正を迫る姿勢は、現時点でみられません。

内政は大統領と議会の関係にやや不安が残ったが、外交は懸念されたほど保護主義ではなかった

以上より、市場の観点からこれまでの政策を評価すると、「内政」についてはオバマケア代替案の採決取り止めなど失策もみられ、大統領と議会の関係にやや不安が残る結果となりました。今後は18年度予算審議の行方と、予算規模が市場の期待に沿うものか否かが焦点となります。一方、「外交」については市場への影響は当初警戒されたほど深刻なものではありませんでした。

ただ「外交」に関しては、トランプ政権の人事が遅れ、貿易問題などの本格的な協議はこれからとなるため、楽観は禁物です。なお見方を変えて、トランプ米大統領を支持する米国民の観点からは、米国第一主義を掲げ、減税など景気対策を推進し、米国製品の輸出拡大に注力する一方、テロや核の脅威からは米国民を断固として守る強い姿勢をみせるトランプ米大統領は、素直に評価されている可能性があります。

 

170419図表1

 

 

(2017年4月19日)

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