資産形成のこつ~カツカツからコツコツへ
・「カツカツの若者もコツコツやれば資産形成ができる。」これはNISAの日(2月13日)の講演で、FP(フィナンシャルプランナー)の山中伸枝氏が話したフレーズである。
・金融庁の森田宗男総括審議官によると、なぜ投資をしないのかについて、20歳~79歳までの1万人にアンケートをとってみたら、答えの7割は、まとまったお金がないから、というのが理由であった。
・投資は恐い、投資は博打であるという人も多い。そもそも投資教育を受けていないという人が全体の7割を占め、そのうち3分の2は投資教育を受けるつもりもなく、不用という。
・まとまったお金を貯めてから投資をするというのでは、まずお金を貯めるのに時間がかかる。そもそも貯まらないかもしれない。貯めたお金を一度に投資するつもりなら、それこそ危ない。
・野村アセットマネジメントの住田友男主任研究員によると、独自の調査をしてみたら、20代~30代の若い人々にとって、彼らのいう長期とは3年であるという結果であった。長期が3年といのは、いかにも短い。しかし、若い人々にとって、3年先はもう分からない遠いことなのかもしれない。
・貯金はしても、投資はしないというのであれば、その間の溝は広くて深い。「貯蓄から投資へ」と長らくいわれてきたが、最近は「貯蓄から資産形成」へと言い直している。投資という言葉の響きがよくないのだろうか。若い人に対して、お金を貯めなくても、資産形成を始められるという意味を込めている。
・過去20年をみると、米国の個人金融資産は3倍になり、日本は1.5倍に留まっている。日本は現預金の比率が高く、ここに金利はほとんどついていない。一方で、株や投資信託は儲かるかもしれないが、損をする可能性もある。日本はデフレだったので、現預金で持っていても資産の保全はできていたという見方もできる。
・1円でも損をするのは嫌だというのなら、ノーリスクなので、ノーリターンになってしまう。一般には、ローリスクローリターン、ハイリスクハイリターンで、ローリスクハイリターンというのはかなり怪しい。
・では、投資のリスクをどう避けるか。価格変動リスクを下げるには、分散するのが基本である。投資対象を分散する資産分散と、投資タイミングを分散する時間分散の双方を活かす必要がある。
・資産分散では、株式(日本、海外)、債券(日本、海外)、リート(日本、海外)の6資産を活用する。リートは不動産なので、株式や債券とは違った動きをする。
・時間分散では、何時上がるのか、何時下がるのかを予想して当てることは難しいので、一定の期間毎に同じ金額を投資して、結果としては時間をばらつかせていく。
・4年前に始まったNISA(少額投資非課税制度)は、株や投信の配当や値上がり益が5年間非課税で途中売却自由、毎年120万円を上限に5年間で600万円まで使える。しかし、5年間の時間分散だと、やはりタイミングに左右される。
・もう少し長いものがほしいということで、「積み立てNISA」の導入が検討されている。年間40万円を上限に、20年間非課税で投資できる。20年であればかなり時間分散がきく。毎月同じ金額を投資していくので、もし下がった時には金融資産を多めに買えるので、うまくバランスをとっていける。順調に行けば2018年1月からスタートすることになろう。
・自分の老後は自分で守れ。少しでも資産の上乗せを考えておく必要がある。若い時は今日の生活にいっぱい、いっぱいで余裕がない。でも、入ったお金の一部を最初に分けて資産形成にまわすというきまりを作っておくことは大事である。そうでないと、つい使ってしまう。
・経済的にカツカツの生活の中から、少額をコツコツと貯めていく。その貯めるのを預金ではなく、金融商品へ投資して資産形成を続けていく。本当に普及するだろうか。5年もののNISAは1000万口座が作られ、9兆円が買い付けられたが、口座はできたもののまだ投資額がゼロというものが過半であるという。口座は作っても活用されていないのである。
・でも、これからである。今の若者は賢い。慣れてくれば、次第に広まってこよう。投資は恐くない。そのためには、顔の見える投資をすることである。顔がみえるとは、信用できる人がイメージできることである。儲け話に騙されるのではない。企業経営者の顔、運用するファンドマネージャーの顔が見えて、その人を信用することができる。
・人は面倒なことはやりたくない。人間の脳はもともと面倒なこと、よくわからないことは、避けようとする。特に、DNAからみて、日本人は自分でものごとを決めることに喜びを感じることが少ないという分析もある。誰かに任せて、同調することを好むらしい。しかし、同調して、よく分からずに任せて、後で後悔しても不満が残るだけである。
・顔がわかるように努力すべきである。少し動いてみると分かってくることが多い。小さな成功体験があると、やる気が出てくる。脳にドーパミンが残って楽しくなってくる。ここからが本当のスタートである。金融機関のいうことを鵜呑みにしないで、よく聞いてみる。新しい仕組み(積み立てNISAなど)も使ってみるという前提で話を聞く。でも、納得するまでは実行する必要はない。多少時間はかかるが、難しくはない。
・まずは話を聞きに出かけてみよう。世の中に運の良い人というのはいる。その人は開放的で、聞く耳を広くしている。そうすると、情報が向こうから飛び込んでくるという。そんな積極さが違いを生むのだろう。NISAの日のセミナーを聴きながら、別の機会に学んだ認知心理の在り様に、妙に納得した。さて、金融ナレッジが十分でない自分の子供たちにはどう働きかけようか。