トランプ相場で日本株が向かう先(その2)

市川レポート(No.323)トランプ相場で日本株が向かう先(その2)

  • 過度な移民政策は将来的に労働力不足の問題を引き起こす恐れがあり、市場の不安を高めよう。
  • オバマケアの現実路線修正や金融規制緩和なら日本株には好材料、ただ民主党は徹底抗戦も。
  • 大統領と議会が協調し、現実的な政策を打ち出すことが出来るか否かが、市場安定のカギを握る。

過度な移民政策は将来的に労働力不足の問題を引き起こす恐れがあり、市場の不安を高めよう

前回のレポートでは、トランプ次期大統領の「就任100日行動計画」のうち、財政政策と通商政策に焦点を当てました。財政政策における支出規模や、通商政策における保護主義の度合い次第で、日本株は上下両方向に動く可能性があるため、今後の政策を見極める必要があります。今回も引き続き、「就任100日行動計画」における主要政策のポイントを整理し、日本株への影響度合いについて考えます。

③移民政策:行動計画には、不法移民の国外退去やメキシコ国境での壁建設などが明記されています。報道によれば、トランプ次期大統領は11月13日、約1,100万人の不法移民のうち犯罪者ら200万~300万人をまず国外退去させ、メキシコ国境の壁はフェンスを併用するとの考え方を明らかにしました。まずは現実路線が示されましたが、過度な移民政策は、将来的に労働力不足の問題を引き起こす恐れがあり、市場の不安を高める材料です。

オバマケアの現実路線修正や金融規制緩和なら日本株には好材料、ただ民主党は徹底抗戦も

④社会保障政策:医療保険制度改革法(オバマケア)の撤廃も行動計画に盛り込まれています。ただこのところトランプ次期大統領は、オバマケアの内容を一部引き継ぐ可能性も示唆しており、選挙戦で掲げてきた極端な看板政策を現実路線に修正する動きが窺えます。オバマケア自体が日本株に与える直接の影響は限定的と思われますが、現実路線への修正が他の政策にも広がった場合、市場の過度な警戒が和らぎ、日本株には好材料です。

⑤規制緩和:金融やエネルギー産業に対する規制緩和は、日本でも関連業種に追い風となります。現在、金融規制改革法(ドット・フランク法)の廃止が見込まれていますが、同法はオバマケアと並ぶオバマ大統領のレガシー(政治的遺産)の1つです。そのため民主党が上院でフィリバスター(議事妨害)を行使すれば、51議席の共和党は安定多数の60議席に達していないためこれを阻止できず、法改正が難航する恐れもあります。

大統領と議会が協調し、現実的な政策を打ち出すことが出来るか否かが、市場安定のカギを握る

日本政府の懸念は環太平洋経済連携協定(TPP)と在日米軍の駐留経費と思われます。そもそも日本株はこれまでTPPを材料に大きく上昇した局面がなく、日本が通商政策を見直すような事態となっても、日本株への影響は限定的となる可能性があります。また在日米軍関係費について、日本は2016年度に約7,600億円支出しており、少なくとも駐留撤退というような極端な話にはならないと考えます。

トランプ次期大統領は11月13日、大統領首席補佐官にラインス・プリーバス共和党全国委員長を起用し、共和党主流派との協調体制を整える姿勢を示しました(図表1)。年内には閣僚人事の大枠が固まり、各政策の具体的な方向性がみえてきます。大統領と議会が協調し、現実的な政策を打ち出すことが出来るか否かが市場安定のカギを握ります。なお本邦製造業の多くは下期の想定為替レートを1ドル=100円から105円辺りに設定しており、足元の円安傾向が続けば、業績懸念の後退で日本株が一段高となる展開も期待されます。

 

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 (2016年11月16日)

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