突発的事象の相場に与える影響を考える

市川レポート(No.175)突発的事象の相場に与える影響を考える

  • パリ同時テロを受け16日のアジア株は軟調、欧米株は堅調、為替はユーロ安が進行。
  • 突発的事象の相場に与える影響を考えるにあたっては、3つのポイントの確認が有効。
  • 3つとも全て懸念なしであれば、突発的な事象が発生しても相場に過度な警戒は不要。

パリ同時テロを受け16日のアジア株は軟調、欧米株は堅調、為替はユーロ安が進行

 11月13日にパリで発生した同時テロを受け、週明け16日のアジア環太平洋株式市場では、リスク
オフ(回避)の動きが強まるなか利益確定の売りが優勢となりました。日経平均株価は前週末比
203円22銭安で取引を終え、アジア各国・地域の主要株価指数も下げが目立ちました。ただその後
の欧州株式市場は比較的落ち着いた展開となり、米国株式市場でもダウ工業株30種平均が前週末比
237ドル77セント高で取引を終えています(図表1)。

 一方、為替市場ではユーロが主要通貨に対し全面安となりました。13日と16日のニューヨーク外
国為替市場の終値を比較すると、ユーロ円は1ユーロ=132円09銭水準から131円63銭水準へ、
ユーロドルは1ユーロ=1.0773ドル水準から1.0686ドル水準へ、それぞれ低下しました。なおドル
円については、リスクオフのドル売り・円買いは16日の東京時間朝方に限定され、結局1ドル=
122円61銭水準から123円18銭水準まで上昇しました(図表2)。  

突発的事象の相場に与える影響を考えるにあたっては、3つのポイントの確認が有効

 欧米株の堅調推移を受けて17日のアジア環太平洋株式市場もほぼ全面高に転じていることから、パリ同時テロの影響はいったん消化されたとみられます。なおテロや自然災害など突発的な事象が発生した場合、これらが相場にどのような影響を与えるかについては、まず以下のポイントを確認することが有効と考えます。すなわち、①金融システムへの影響、②流動性の潤沢さ、③他国・地域への拡大の可能性、この3点です。 

 例えばある国で突発的な事象が発生した場合でも、その国の金融システムに深刻な打撃を与えるものでなければ、市場のリスクオフの度合いは比較的軽微となる可能性があります。また金融システムがダメージを受けても、その国の金融市場に潤沢な流動性が存在する、もしくは中央銀行が迅速に流動性を供給できるのであれば、相場への影響は限定される公算が高まります。さらに①の金融システムや②の流動性に懸念があっても、問題がその国に限られるのであれば、グローバルな影響は軽減されると思われます。 

3つとも全て懸念なしであれば、突発的な事象が発生しても相場に過度な警戒は不要

 参考までに①~③とも「懸念あり」となったのがリーマンショックです。欧米系金融機関が保有する証券化商品の価値が下落したことを機に信用不安が拡大し、金融システムは機能不全となりました。この時の相場の混乱度合いは過去に経験した通りです。逆に言えば突発的な事象が発生しても、①~③とも「懸念なし」であれば、過度な警戒は不要と考えられます。 

 さてフランスの金融環境に目を向けると、金融システムは正常に機能しており、欧州中央銀行(ECB)の量的緩和政策により市場の流動性は潤沢です。①と②に懸念がないため市場は強くリスクオフに傾く必要はなく、それは16日から17日にかけての株式や為替の動きが示す通りです。ただ③にはやや注意が必要です。テロが拡大した場合、投資家心理が悪化し、市場のリスクオフ度合い強まることも想定されます。それでも主要国の金融市場には依然潤沢な流動性が存在しているため、ただちに景気後退や金融危機につながる恐れは小さいとみています。

151117 図表1151117 図表2

 (2015年11月17日)

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