日本株を取り巻く環境の整理
市川レポート(No.149)日本株を取り巻く環境の整理
- 米利上げと中国景気の不確実性が依然相場の重しで、株価反発には幾分時間を要しよう。
- 政府の補正予算や日銀の追加緩和は、日本株浮上の大きなきっかけになる可能性も。
- 不確実性の消化が進めば、年末にかけて日本株が戻りを試す余地は徐々に広がろう。
米利上げと中国景気の不確実性が依然相場の重しで、株価反発には幾分時間を要しよう
このところの日本株は振れ幅が大きく、下値リスクの大きい状況が続いています。米国の利上げと中国の景気動向という2つの不確実性が依然として存在し、国内景気もやや足踏み状態となっていることから、企業業績への影響が強く意識され、これが株価の重しになっているとみられます。そこで足元の日本株を取り巻く環境を整理し、ここからの相場展開について考えてみます。
米国の利上げは12月を予想しており、いったん開始されれば不確実性は大きく低下しますが、それまで市場は金融当局の判断を慎重に見守ることになると思われます。また中国景気はこの先、金融緩和と公共投資の効果が徐々に表れ、大幅な鈍化は回避できるとみていますが、毎月上旬から中旬にかけて発表される前月分の経済指標を確認していく必要があります。そのためこれら米中の材料に日本株は当面経質な反応を続けると思われます。
政府の補正予算や日銀の追加緩和は、日本株浮上の大きなきっかけになる可能性も
ただ米利上げや中国の景気減速で直ちに世界同時不況や金融危機が発生する可能性は極めて低いと考えます。世界経済の牽引役である米国は消費を中心に景気拡大が続いており、また日本も中国の景気減速で簡単に不況に陥ってしまうほど単純かつ脆弱な経済構造にはありません。しかしながら経済成長見通しや企業業績見通しについては、ある程度の下振れは避けられず、日本株の反発には幾分時間を要することになると思われます。
このところ市場では、政府の補正予算による景気対策や、日銀の追加緩和への期待が高まっています。緩和的な財政政策と金融政策の組み合わせは株式など資産価格にとって好材料であり、実際に打ち出された場合は日本株浮上の大きなきっかけになる可能性があります。政府・日銀は海外情勢の国内経済や物価に与える影響をにらみつつ、慎重に政策判断を行うとみられます。
不確実性の消化が進めば、年末にかけて日本株が戻りを試す余地は徐々に広がろう
そのため今後は国内の経済指標や企業業績の動向を改めて注視していく必要があります。とりわけ重要な指標として、10月1日に日銀短観、11月16日に7-9月期実質GDP1次速報の公表が予定されています。また3月期決算企業の中間決算発表が10月下旬から11月中旬にかけて本格化します。今年度の主要企業(弊社コアリサーチユニバース216社)の経常利益は前年度比で2ケタの伸びを見込んでいますが、通期決算の動向も注目されます。
今回の米利上げで極端に流動性が縮小することはなく、また中国の景気減速はそもそも政策方針です。そのためこれら不確実性から派生する懸念に、市場がやや過剰反応している面があるように思われます。時間の経過とともに不確実性の消化が進めば、金融市場は落ち着きを取り戻し、年末にかけて日本株が戻りを試す余地は徐々に広がると予想します。日経平均株価の2015年末における適正水準は19,000円台後半とみており、明確に20,000円台へ回復する時期は来年1-3月期になると考えます。
(2015年9月29日)
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