5月10日妥当レンジ 14,000円~16,200円
予想EPS水準は変化の途上、妥当レンジはもう一段上へ

2013/05/14

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<米景気回復観測から円安、株高に>
■米大手銀行首脳の発言やFRBが金融緩和の出口戦略を模索しているとの憶測等からドル円は100円/ドルの壁を突破して円安が進んだ。NYダウの15,000ドル超えなどから日本株の大幅上昇が続いている。
■日経平均の1週間の上昇幅が1,000円を越えていることから、海外市場や為替の動きによって調整する可能性は否めない。しかしながら、13年度(主に14/3期)の日経平均の会社予想EPS(800円以上)は4月上旬のアナリストコンセンサスEPS(760円前後)を上回っており、足元の企業業績が強いことを示している。
■企業予想の前提為替レートは95円/ドルが中心であり、100円/ドルを超える円安継続を前提にすれば更に利益の上乗せが期待できる。そうした面を考慮するならば、5月13日現在の日経平均(終値:14,782.21円)の水準に割高感は無い。

<妥当レンジはもう一段の上方シフトが見込める>
■5月10日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、対象決算期変更により前回同様にいずれの期間も大幅に予想EPSが増加した。これを踏まえて妥当レンジを14,000円~16,200円に修正する。決算発表も未だ残っていることやアナリストの見通し変更も続くことを考慮すれば、妥当レンジのもう一段の上方シフトは必至である。
■個別銘柄では為替のメリットを強く受ける主力大型の輸出企業が軸になることは言うまでも無いが、高成長・高ROE銘柄についてはバリュエーション面でやや割高感があっても買われ易い環境が続くと思われる。前回レポートでも指摘した通り、中小型銘柄については、東証1部とJASDAQの(インプライド)リスクプレミアムの差が極端に縮小しており、銘柄選別が進むと考える。
■リスク要因としては世界的な利下げ・金融緩和が進みつつあり、円安からの揺り戻し、日本株の予想ROEの改善ペースが自己資本の拡大で鈍化することが挙げられる。

◇日経平均妥当水準(レンジ)

14,000円~16,200円 (前回 13,650円~15,850円)

  *「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月10日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月10日)

今期予想EPS 736.93 (前週666.85円)
来期予想EPS 853.29 (前週827.18円)
再来期予想EPS 931.37 (前週910.40円)
今期予想PER 19.82 (前週 20.47倍)
来期予想PER 17.12 (前週 16.50倍)
再来期予想PER 15.68 (前週 14.99倍)
来期予想PBR 1.38 (前週1.35倍)
来期予想ROE 8.05% 前週8.21%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
 
6.69% (前週7.00%)

*5月10日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

妥当レンジはさらにもう一段の上昇の可能性も。

           

  
 予想ROE(来期ベース)は前回の8.21%から8.05%に低下。実績BPS(1株純資産)の拡大がROE向上を阻害している。  

  

 

JASDAQ(小型株)と日経平均の期待リターンの差はほとんど無い状態にまで急激に縮小。小型株の相対的な割安感は消失しており、注意が必要。

       

  

実績BPS(日経新聞市況欄から逆算で算出)は、一気に10,000円台に。予想ROEの上昇を阻害している。

 

        

         出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成 
     いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

    
 
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。