「波及効果」が支えるAI相場の行方
12月相場入りした今週の株式市場ですが、米国株市場に目を向けると、これまでのところ復調傾向が続いています。ナスダック総合の日足チャートでも、株価が直近で下抜けていた25日移動平均線を回復する動きを見せていることが確認できます。
こうした株価復調の背景には、来週9日(火)から10日(水)にかけて開催される米FOMC(連邦公開市場委員会)での利下げ期待の高まりと、AI・半導体関連銘柄への物色の広がりが先週から見られ始め、今週も継続していることが挙げられます。
12月FOMCにおける追加利下げ観測の再燃ですが、今週3日(水)に公表されたADP雇用統計では、非農業部門の雇用者数が予想外に減少したことや、同じ日に公表された11月ISMサービス業景況感指数も52.6と、市場予想(52.5)を上回ったものの、項目別では雇用や価格が弱く、トータルで見ると、「米景気を支えるために利下げが必要」との見方が補強される結果となりました。
利下げ期待による、金利低下がハイテク株やグロース株のバリュエーションを再び押し上げる構図となっているほか、AI・半導体関連株に対する物色の広がりも相場を支える格好となっています。
その象徴的な動きとなったのが、2日(火)の取引で株価が急騰したクレド・テクノロジーとモンゴDBです。
データセンター内の通信ケーブル技術を手掛けるクレド・テクノロジーの決算では、売上高が前年比約3.7倍に爆発しており、巨大IT企業(ハイパースケーラー)がGPUの導入と同時に、それを繋ぐ「足回り」の整備に巨額の投資を行っている実態が浮き彫りになりました。また、データベースを提供するモンゴDBの好決算は、AIがハードウェアの枠を超え、ソフトウェア開発の現場に浸透し始めたことを示唆しています。生成AIに自社データを学習させるための基盤として需要が喚起されており、「AIによる実需」がソフトウェア企業の利益として計上され始めた重要なシグナルと言えます。
AI・半導体関連銘柄の物色が周辺へと波及していったこと自体は歓迎すべきですが、このままナスダック総合指数が最高値を更新して行けるほどの相場の推進力を持つかどうかは現時点では微妙かもしれません。
その最大のリスクは、これらの企業の好業績が、結局はマイクロソフトやアマゾンといったごく少数のハイパースケーラーによる「巨額の設備投資」に依存している点です。仮に、AIサービスの収益化に時間が掛かったり、米景気が後退するようなことになり、ハイパースケーラーがAIへの投資ペースを緩めれば、サプライヤーである周辺企業の業績も低下してしまうことになります。クレドのような驚異的な成長率は、裏を返せば「特需」への依存度が高いことの証左でもあります。
今週のAI・半導体株の復調は、直ちに「AI相場の第二幕」につながるというよりは、「業績面で結果を出せるか?」、「財務リスクは大丈夫か?」、「提供するAI技術やサービス、製品が競争優位性を持っているか?」といった具合に、銘柄が選別されて行くフェーズに入ったと言えます。
したがって、来週の米FOMCと、ハイパースケーラーの投資持続性が、年末から来年にかけた相場のムードを左右することになりそうです。
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