アクシスコンサルティング(9344) 増収増益を予想 中期経営計画を推進中
![]() 伊藤 文隆 社長 COO |
アクシスコンサルティング株式会社(9344) |
![]() |
企業情報
市場 |
東証グロース市場 |
業種 |
サービス業 |
代表取締役社長COO |
伊藤 文隆 |
所在地 |
東京都千代田区麹町4-8 麹町クリスタルシティ6F |
決算月 |
6月 |
HP |
https://axc-g.co.jp/ |
株式情報
株価 |
発行済株式数(期末) |
時価総額 |
ROE(実) |
売買単位 |
|
866円 |
5,049,150株 |
4,372百万円 |
10.2% |
100株 |
|
DPS(予) |
配当利回り(予) |
EPS(予) |
PER(予) |
BPS(実) |
PBR(実) |
35.00円 |
4.0% |
43.57円 |
19.9倍 |
657.57円 |
1.3倍 |
*株価は9/22終値。2025年6月期決算短信より。
業績推移
決算期 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
当期純利益 |
EPS |
DPS |
22年6月(実) |
3,513 |
501 |
493 |
324 |
80.84 |
0.00 |
23年6月(実) |
4,342 |
673 |
644 |
418 |
99.15 |
0.00 |
24年6月(実) |
4,665 |
833 |
831 |
502 |
101.26 |
0.00 |
25年6月(実) |
5,271 |
210 |
219 |
321 |
64.12 |
35.00 |
26年6月(予) |
6,920 |
350 |
340 |
220 |
43.57 |
35.00 |
*単位:百万円。予想は会社側予想。24年6月期まで連結、25年6月期以降は非連結。
アクシスコンサルティング株式会社の会社概要、業績動向、伊藤社長へのインタビューなどをお伝えします。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.中期経営計画
3.2025年6月期決算概要
4.2026年6月期業績予想
5.伊藤社長に聞く
6.今後の注目点
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- MISSIONに「人が活きる、人を活かす。 ~人的資本の最大化・最適化・再配置~」を掲げ、複雑な経営課題の解決が必要な企業に対し、豊富なデータベースから選定した経営課題の解決に資する最適な戦略実現人材を、人材紹介とスキルシェアの両面から提供し企業の成長を支援している。「業界トップクラスのスキルデータベース」「経営アジェンダに応じた柔軟な人材配置」「戦略実現人材との中長期的な連携」を競争優位性とする。
- 28年6月期を最終年度とする3か年の中期経営計画を推進中。成長実現のため、現在の主力領域であるコンサルファーム向け人材紹介に加え、成長ポテンシャルの高い事業会社向け人材紹介およびスキルシェアを新たな収益の柱として育成し、中長期的な企業価値の飛躍に向けた構造的転換を本格化させる。そのために、広告投資15億円、DX・IT投資5億円、人的投資(採用)10億円の合計約30億円の先行投資で競争優位性を高める。数値目標としては、2028年6月期「売上高100億円、時価総額100億円」、2031年6月期「売上高200億円、営業利益37億円、当期純利益24億円、ROE28.7%」を掲げている。
- 2026年6月期は増収増益を予想。売上高は前期比31.3%増の69億20百万円、営業利益は同66.1%増の3億50百万円を見込む。人材紹介、スキルシェアとも事業会社向け売上高を大きく伸長させる。中期経営計画最終年度となる28年6月期の過去最高益更新実現に向けて広告宣伝や人材増強の先行投資を行う。配当は前期と同じく35.00円/株を予定。予想配当性向は80.3%。
- 伊藤 文隆 社長 COOに、同社の競争優位性、成長戦略と課題、株主・投資家へのメッセージを伺った。「人口減少の日本において、複雑な環境下でビジネスを作り出し、それを運営していくことのできるビジネスリーダーの絶対数が減少していくことは避けられず、何もしなければ日本の産業界の衰退にも繋がりかねません。この課題を解決するには、ハイエンド人材を産業界でシェアリングする仕組みを構築することが不可欠であると当社では考えており、そこに挑戦しています。」「当社の時価総額は現時点で約40億円ですが、中期経営計画の施策を着実に実行することで、2028年6月期には、売上高及び時価総額とも100億円以上を必達目標としています。事業計画の着実な進捗とともに、IR活動の拡充にも注力し、時価総額基準の達成を実現します。是非中長期の視点で日本産業の将来を支える当社を応援していただきたいと思います。」とのことだ。
- ユーザーである登録者に対して継続的な情報提供やコミュニケーションを行い、中長期の視点での信頼関係を構築するナーチャリングに注力している点も、同社がコンサルファーム向け人材紹介におけるトップシェアを有している理由の一つである。伊藤社長によれば、ナーチャリングの肝は、どれだけ登録者の方のための情報、それも求人情報ではなくマーケット情報を提供できるかということだそうだ。複数の紹介案件があった場合、単に企業規模や提示された年収で判断するのではなく、提示された年収が低くても、マーケットのトレンド予想を基に、生涯賃金が最も高くなる案件であればそちらを提案するといったことだ。「DX」は今では全ての企業にとっての重要課題だが、大手コンサルファームがテーマとして言い始めたのは十数年前。このように、大手コンサルファームが手掛けるプロジェクトは超大手企業に対する最先端の課題解決であるが、時間の経過とともに全企業の課題となる。コンサルファームの手掛けているプロジェクトを正しく理解すると、今後のトレンドが見えてくるとのことで、マーケットのトレンド予測とそれに基づいたキャリア予測やアドバイスが可能な点は、多くのコンサルファームと関係の深い同社ならではの強力な優位性であるといえよう。こうした強みを活かしての中期経営計画の進捗と株価動向に注目していきたい。
1.会社概要
MISSIONに「人が活きる、人を活かす。 ~人的資本の最大化・最適化・再配置~」を掲げ、複雑な経営課題の解決が必要な企業に対し、豊富なデータベースから選定した経営課題の解決に資する最適な戦略実現人材(※)を、人材紹介とスキルシェアの両面から提供し企業の成長を支援している。「業界トップクラスのスキルデータベース」「経営アジェンダに応じた柔軟な人材配置」「戦略実現人材との中長期的な連携」を競争優位性とする。
※戦略実現人材
戦略の構想にとどまらず、現場を動かし、成果に導く力を持つ、戦略的思考と実行力を兼ね備えたプロフェッショナル人材。同社に情報登録されているハイエンド人材について、コンサルファームや事業会社に紹介・情報提供する際、経営課題解決のための「戦略実現人材」と同社では定義している。
※ハイエンド人材
同社ではコンサルファームや事業会社から求められるスキルのうち「コンサル」「DX・IT」「CxO」について、それぞれに「豊富な経験」の定義を定め、いずれかひとつ以上に当てはまる人材を「ハイエンド人材」としている。
分野 |
「豊富な経験」の定義 |
コンサル | 大手ファームにおいて、マネージャー以上の役職経験者(現役含む) |
DX・IT | 大手ファームや事業会社におけるDX関連プロジェクトの経験者(PMまたは推進経験者) |
CxO | 一定規模以上の事業会社におけるCxO経験者 |
【1-1上場までの沿革】
2002年4月、山尾幸弘氏(現 アクシスコンサルティング株式会社 代表取締役会長CEO)がハイエンド人材領域における人材紹介の展開を目的に、アクモス株式会社のグループ会社としてアクシスコンサルティング株式会社を設立。ハイエンド人材領域の正社員採用サービスを開始した。2009年9月、MBOにより親会社であるアクモス株式会社より独立。2016年6月にスキルシェアを推進するフリーコンサルサービス「フリーコンサルBiz(現AXIS Solutions)」の提供を開始した。ハイエンド人材に特化した人材紹介と、フリーコンサルタントを活用することで機動的なプロジェクト推進が可能なスキルシェアが企業のニーズを取り込み収益が拡大。2023年3月、東証グロース市場に上場した。
【1-2 理念・ビジョン】
以下のMISSION、VISION、VALUE、CORPORATE STATEMENTを掲げている。
MISSION | 人が活きる、人を活かす。 ~人的資本の最大化・最適化・再配置~ |
VISION | 事業を通じて、新しい価値を創造し、すべての人が活き活きと働く社会創りをめざします。 |
VALUE | Professional
プロフェッショナルとして顧客の期待を超えよう 常に自分自身をアップデートしよう
Respect お互いの違いを尊重し、認め合おう 多様な個性を融合し、柔軟に連携しよう
Try 失敗を恐れず、挑戦しよう 過去の慣習にとらわれず、積極的に行動しよう
Enjoy 何事も前向きに捉えよう 人生を豊かにするために、もっと仕事を楽しもう |
CORPORATE STATEMENT | あらゆる課題は、人で解決する。 |
【1-3 事業環境と同社の役割】
(1)同社を取り巻く事業環境
近年、グローバル競争の激化、テクノロジーの進展、人口減少といった環境変化のなかで、企業には社会の課題解決と新しい価値やイノベーションの創出が求められている。しかし、多くの企業において高度化・複雑化する経営アジェンダ(※)を解決するためのDX/IT人材や経営人材(CxO)が不足しているのが現状である。独立行政法人情報処理推進機構の「DX白書2023」によれば約9割の企業においてDX/IT人材が不足しており、独立行政法人労働政策研究・研究機構「人への投資と企業戦略に関するパネル調査」(2023年10月)によれば、約4割の企業において経営人材(CxO)が不足している。
また、近年の経営アジェンダは、従来のIT化やコスト削減といった業務効率中心で個々に解決すべきものから、複数領域にまたがる高度で複雑なものへと変化している。企業にはこうした経営アジェンダに対し、組織を横断して対応する仕組みが求められている。
これらの課題を解決するには、人材を資源(Human Resources)ではなく、資本(Human Capital)と捉え、不足、偏在するコンサルタントなど高いレベルの専門性と能力を持った人材の価値を最大限に引き出すとともに、経営課題ごとに人的資本を最適配置し、活用する仕組みが必要である。
※経営アジェンダ
「経営課題」の総体を示す上位概念としての用語。現代では経営課題が高度で複雑に絡み合っており、経営アジェンダの解決にはプロフェッショナルな人材の活用が必要である。
(2)同社の役割
以上のような事業環境下、豊富なデータベースから選定した最適な戦略実現人材、ハイエンド人材を、人材紹介とスキルシェアの両面から効果的に配置するソリューションを提供することで、企業や組織の課題解決と価値創造のパートナーとして寄り添い、高度化する経営アジェンダを解決に導き、企業の成長を支援することが同社の役割である。

(同社資料より)
【1-4事業内容】
(1)サービスラインアップ
ヒューマンキャピタル事業の単一セグメント。サービスは、「人材紹介」と「スキルシェア」の2つで構成されている。


(同社資料より)
①人材紹介
ハイエンド人材領域における転職に伴う正社員採用サービス「AXIS Agent」を提供している。
転職希望者の獲得は、自社運営の登録サイトや外部の転職サイト運営企業の求職者情報を利用したスカウトのほか、自社の人材データベース登録人材とのコミュニケーションを通じて行っている。
顧客を「コンサルファーム」と「事業会社」に区分している。2025年6月期の人材紹介売上2,768百万円(売上構成52.5%)のうち、コンサルファーム向けが40.1%、事業会社向けが12.4%。
コンサルファーム向けにおいては、マネージャー以上の転職紹介に強みを有している。支援した転職者からフリーコンサルの発注も多数受注しており、人材紹介とスキルシェアのシナジーも創出している。
事業会社向けでは、事業会社に経営層、デジタル・DX領域等のハイエンド人材などを紹介している。コンサルの登録人材の約半数は事業会社へ転職している。
いずれの顧客の場合も、同社のキャリアアドバイザーが転職希望者とコンサルファーム及び事業会社との橋渡しを担っている。蓄積されたナレッジやノウハウをベースに、コンサルファームや事業会社への転職において、その後のコンサルタントのキャリアパスについて適切な提案行っている。
特に事業会社では、経営アジェンダの高度化・複雑化によりハイエンド人材の需要が増加している。ハイエンド人材も事業会社で自身の経験を活かしたい意向が強い。今後の案件増加に向けては、事業会社における認知度向上が必要と考えている。
②スキルシェア
フリーコンサルサービス「AXIS Solutions」とスポットコンサル「AXIS Advisors」を提供している。
2025年6月期のスキルシェア売上2,502百万円(売上構成47.5%)のうち、コンサルファーム向けが33.8%、事業会社向けが13.7%。
◎フリーコンサルサービス「AXIS Solutions」
コンサルファームの案件や事業会社の戦略・DX課題に、実績のあるコンサルファーム出身で独立してフリーランスとなったコンサルタント(フリーコンサルタント)を紹介する。コンサルファーム、事業会社とも最適なハイエンド人材を活用することができる。
顧客はフリーコンサルタントを活用することで機動的なプロジェクト推進が可能になり、フリーコンサルタントは同社ネットワークによる継続的な案件受注及び独自性や自由度の高い案件への参画が可能となっている。
役務提供を受ける顧客企業(コンサルファーム、事業会社)と同社間で業務委託に関する基本契約及び案件ごとの個別契約を締結し、同社とフリーコンサルタントとの間で個別案件に係る業務委託契約を締結して、フリーコンサルタントが顧客企業の案件に参画する。
一部プロジェクトでは、コンサル経験のある同社社員がプロジェクト・マネジメントを行い、複数のフリーランス人材の活用や他社連携をすることで、柔軟にプロジェクトチームを運用し、大規模かつ複雑な案件も受注が可能な体制を構築している。
◎スポットコンサル「AXIS Advisors」
事業会社の経営課題や事業課題等について、短期間かつ手軽にコンサルタントに相談できるサービス。
コンサルファームに在籍している現役コンサルタントもしくはコンサルタント経験者とのマッチングを提供する。 企業側は、市場調査等のスポット案件に活用可能なほか、経営課題や事業課題を解決したいが外部コンサルティングを利用したことがないスタートアップなどが、試しに活用したいと考えた際に、1回30分からの依頼が可能であるため手軽に利用できる。副業を志向するコンサルタントは、スキマ時間に自身の知見やスキルを副業に活用することができる。
企業の経営者や担当者は、同社が提供するデジタルプラットフォームに相談内容を登録した後、コンサルタントをデジタルプラットフォーム上で募集又は指名し、マッチングしたコンサルタントと事業内容や課題等を事前にすり合わせたうえでミーティングを実施する。コンサルタントが同サービスを利用する場合は、デジタルプラットフォームに登録のうえ、依頼者の相談内容を確認して個別の相談案件にエントリーし、依頼者からのオファーを受諾してミーティングを実施する。
(2)ビジネスモデル・収益構造
人材紹介は、コンサルファームや事業会社からの紹介手数料が売上となり、外部求人サイトの利用料のみが売上原価に計上される。売上総利益率は約9割。紹介した人材が求人企業に入社後一定期間内に自己都合により退職した場合は、紹介手数料の一部を返金する契約となっている。紹介手数料は基本的に入社が決定した人材の年収の35%だが、案件によってはそれ以上の契約となる場合もある。主要KPIは平均売上単価と入社決定人数(※)。
スキルシェアは同社が受注したプロジェクトに、フリーランス人材をアサインした際のコンサルファームや事業会社からの業務委託料が売上となり、フリーランス人材へ支払う業務委託料が売上原価に計上される。売上総利益率は約1~3割。主要KPIは平均受注単価と稼働人数。

(同社資料より)
※入社決定人数
人材紹介におけるKPIのひとつ。量と質でいう量の指標。入社が確定した人数のことを指し、これにより売上が立つ。
※稼働人数
同社が受託している案件すべてに対して、何人がアサインしているかを示している。
【1-5 特長・強み・競争優位性】
「1.業界トップクラスのスキルデータベース」「2.経営アジェンダに応じた柔軟な人材配置」「3.戦略実現人材との中長期的な連携」が同社の競争優位性である。
(1)業界トップクラスの「スキルデータベース」
ハイエンド人材に特化した人材紹介プラットフォームとして、業界トップクラスとなる10万人分のスキルデータベースを蓄積している。「属性」「成長性」「質の高さ」が大きな強みである。
属性としては、DX・IT人材が約3割、戦略・CxO人材が約2割など、高度なスキルを有する人材が多数登録。
同社の主要顧客23社における登録者数の増加率は業界平均10%を上回る20%と高成長を続けており、2031年6月期には4万人を目標としている。2025年9月現在、デロイトトーマツコンサルティング、EYストラテジー・アンド・コンサルティング、KPMGコンサルティング及びPwCコンサルティングのBIG4コンサルファームに在籍するコンサルタントの30%、約4,500人が同社に登録しており、これは業界トップシェア。2031年6月には2人に1人を目指している。
(2)経営アジェンダに応じた柔軟な人材配置
人材紹介とスキルシェアを組み合わせた複合的なサービスを提供しているため、クライアント企業は雇用形態にとらわれず、経営課題に最適な人的資本を柔軟に配置し、高度化する経営アジェンダに一元的に対応可能である。

(同社資料より)
(3)戦略実現人材との中長期的な連携
戦略実現人材のキャリアのあらゆる段階で伴走し、一度の転職や案件紹介で終わらない中長期的な関係を構築している。キャリアを重ね、採用権限を持つに至った戦略実現人材が、発注者として人材にかかる課題解決を同社へ依頼するケースが増加しており、安定的かつ収益性の高い収益基盤の構築が進んでいる。

(同社資料より)
【1-6 株主還元】
株主に対する利益還元を経営の重要課題の1つとして認識しており、各事業年度の業績とともに、企業体質の強化と将来の事業展開に備えるための内部留保の充実等を総合的に勘案しつつ、安定的な配当を行うことを基本方針としている。具体的には、純資産配当率(DOE)5%を下限とし、安定的かつ継続的な配当を目指す。
【1-7 ROE分析】
23/6期 |
24/6期 |
25/6期 |
|
ROE (%) |
23.8 |
17.3 |
10.2 |
売上高当期純利益率(%) |
9.64 |
10.77 |
6.09 |
総資産回転率(回) |
1.550 |
1.226 |
1.222 |
レバレッジ(倍) |
1.593 |
1.307 |
1.330 |
*23/6期~24/6期は連結数値を、25/6期は非連結数値を使用しているため、25/6期の3要素の積は9.90%となる。
日本企業の一般的な目標と言われている8%は超過しているものの、売上高当期純利益率の低下を主要因にROEも低下傾向にある。26年6月期は先行投資のため売上高当期純利益率は3.2%の予想。中期経営計画最終年度である28年6月期に向けて収益性改善に取り組む。株主資本コストを大きく上回ることによる株価水準の訂正も期待したい。

2.中期経営計画
28年6月期を最終年度とする3か年の中期経営計画を推進中。次の3ヵ年、最終31年6月期への飛躍に備えた構造改革期間と位置付けるとともに、更にその先の長期成長イメージも示している。
(1)成長戦略
現在の主力領域であるコンサルファーム向け人材紹介に加え、成長ポテンシャルの高い事業会社向け人材紹介およびスキル
シェアを新たな収益の柱として育成し、中長期的な企業価値の飛躍に向けた構造的転換を本格化させる。
そのために、広告投資15億円、DX・IT投資5億円、人的投資(採用)10億円の合計約30億円の先行投資で競争優位性を高める。

(同社資料より)
事業会社向け人材紹介およびスキルシェアの売上高及び売上総利益構成比は大きく上昇し、売上規模拡大・収益性向上に繋げる考えである。
*事業会社向け人材紹介およびスキルシェアの構成比
25/6期 |
28/6期(計画) |
31/6期(計画) |
|
売上高構成比 |
60% |
約65% |
約77% |
売上総利益構成比 |
33% |
約44% |
約63% |
戦略①人材紹介
◎事業会社向け人材紹介
事業会社への転職を希望するハイエンド人材が多く集まる同社には、DX化等を背景に多くの事業会社からの相談件数が増加している。現在の主要顧客である国内主要コンサルファームの対象市場規模は約4万人。これに対し、事業会社の年収1,000万円以上の給与所得者数は推定334 万人と、潜在的な市場規模は極めて大きい。各種施策により市場開拓を推進する。
比較的手軽に利用しやすいスキルシェアを事業会社との接点とし、その後、人材紹介を含む幅広いサービスを提供できるのも同社の強みである。
◎コンサルファーム向け人材紹介
年率10%程度の高い成長が見込まれ、31年6月期には対象市場規模は8万人と予想している。引き続きデータベースの「属性」「成長性」「質の高さ」という強みを磨き上げ、Big4コンサルの登録者数を24年6月期の3,900人(4人にひとり)から、2030年には14,000人(2人にひとり)まで3.5倍増加させ、更なるシェア向上を図る。

(同社資料より)
戦略②スキルシェア
フリーコンサルサービス「AXIS Solutions」は、機動的なプロジェクト推進が可能なことから評価が高く、着実にニーズを取り込んでいる。加えて、これまでは、プロジェクトごとに個々のフリーコンサルタントに依頼し、同社営業社員が品質管理も担う体制であったが、プロジェクト・マネジメントに強みを持つ自社コンサルを採用し、フリーコンサルと組み合わせたハイブリッド体制を導入する。案件の専門性に適した人材を複数アサインすることで大規模プロジェクトへの対応が可能になるほか、 大手ファーム等においてプロジェクト・マネジメント経験豊富なコンサル人材による品質管理の向上を図る。システム導入・データサイエンス・AIなど、より専門性を有するSESやAIエンジニアリング会社とのアライアンスを積極的に推進する。
(2)取り組み・施策
①投資
成長戦略の要となる事業会社に対するサービス展開加速、急増するスキルシェア需要への対応に向けて、広告投資15億円、DX・IT投資5億円、人的投資(採用)10億円の合計約30億円の先行投資を実施する。
事業会社に対する認知度向上、フロント部門の強化、スキルシェアにおける経験豊富な自社コンサル採用等を推進する。
◎広告投資15億円
有名タレントを起用したマス広告をはじめ、認知向上施策を強化し競合他社に劣らない水準に引き上げる。
◎DX/IT投資5億円
人材紹介において、AI技術を活用し初期面談を効率化することで、採用決定までのリードタイム短縮や紹介件数増加を図る。
登録人材のカスタマーサクセス加速のため、人材紹介で蓄積したデータベースを軸に、サービス・ポータルの利便性を拡張する「登録人材向けサービス・ポータル」を開発した。統合データベースの活用と併せて、求職者サポートのより一層の充実に努めるとともに、人材紹介とスキルシェアのクロスセルを促進する。
◎人的投資(採用)10億円
フロント部門の人員を増員し、AI技術への投資との相乗効果を見込み、一人当たり生産性の向上とシェア拡大を狙う。
②マーケティング
事業会社に対する認知度向上のため、25年7月よりTVCMの放映を開始したほか、駅広告やデジタル広告も展開している。
③人員の拡充・育成・定着
事業会社向け人材紹介売上の拡大、コンサルファーム向け人材紹介の更なるシェア拡大を目指し、フロント部門の増員に向けリファラルの強化や認知度の向上に取り組んでいる。
採用と並行して、キャリアアドバイザー育成支援システムを導入し、育成支援にも注力している。人材紹介においては、登録人材数の拡大とともに、いかに多くの紹介案件を成立させることができるかがカギとなる。登録人材の経験、資質を把握したうえで、今後のキャリアの方向性をアドバイスしたり、適切な案件を提供したりするには、キャリアアドバイザーのカウンセリング能力が極めて重要であり、優秀なキャリアアドバイザーの育成は同社成長のためには不可欠である。同システムは、育成対象者に対して部門責任者が指導するのに加え、経験豊富なテクニカルコーチが伴走するというもの。
部門責任者はラインマネジメントとしてパーパスの浸透、労務管理、目標設定・KPI管理など組織としての拡張性と再現性を向上させる。テクニカルコーチは求人セレクトや提案に関する業務アドバイスを実施することでナレッジを共有し、属人性を解消する。
このほか、オンボーディング研修や職種別研修をはじめとする教育研修制度の充実、学習を促進する各種補助制度の整備、知識や意欲をともに高める土壌となる学習コミュニティの開設なども実施している。
定着に向けては、柔軟なキャリアパスや働き方(副業・兼業等)を支援するキャリアオーナーシップ制度を導入しているほか、フルフレックス制度など働きやすい環境づくり、1on1ミーティングによるコミュニケーションの拡充にも注力している。

(同社資料より)
④登録者数増加
コンサルファーム向け人材紹介における圧倒的なシェアのさらなる拡大のためには、引き続き登録者数の獲得が必要であり、各種施策を推進している。
オウンドメディアでは、ハイエンドを含む全層に向けて、日々の情報収集に役立つ最新ビジネストレンドやキャリアノウハウなどの厳選したコンテンツを発信しているほか、若手から中堅の現役コンサル向けて、スキル深化やキャリア構築ノウハウのTIPSを提供するウェビナーを開催している。YouTubeでは、若手から中堅の現役コンサルに向け、CxO・独立・副業・フリーランスといったキャリア体験談を中心に情報を発信している。
⑤成功事例:事業会社向けアップセル・クロスセル促進
人材紹介(正社員)とスキルシェア(業務委託・副業)を組み合わせたクロスセル戦略を推進している。
中国銀行(岡山県岡山市)の、東瀬戸内経済圏(岡山・広島・兵庫・香川・愛媛)の企業・自治体の他、地域内外のスタートアップ企業とも連携し、地域の底上げを行いたいとのニーズに対し、同社では以下の支援を行った。
課題 |
サービス |
概要 |
中国銀行の業務改革支援 | スキルシェア | DX・BPR・業務改革推進支援、人材戦略の推進支援を行っている。
|
コンサルティングファーム設立支援 | 人材紹介 | 責任者からメンバーレベルまでの正社員採用を継続的に支援している。 |
プロジェクト実行支援 | スキルシェア | 新設したコンサルティングファーム「Cキューブ・コンサルティング」が顧客企業に対して実際のプロジェクトを実施するに際し、スキルシェアにより、DX、BPR、マーケティング等に関して同社のハイエンドなフリーランス人材も関与している。 |

(同社資料より)
このように、地方の中小企業や自治体が直面しやすい、DXやSXといった高度な経営課題に対応できるハイエンド人材のデータベースを保有している同社は、正社員だけでなく、フリーランスの紹介にも対応しており、幅広い選択肢の中から、顧客にとって最適な提案が可能。最適人材の提供基盤を有する点は同社の大きな強みである。
(3)数目標
2028年6月期、「売上高100億円、時価総額100億円」を目指す。PERは10倍以上を目安としている。
2031年6月期は「売上高200億円、営業利益37億円、当期純利益24億円、ROE28.7%」を掲げている。
24/6期 |
25/6期 |
26/6期(予) |
27/6期(計画) |
28/6期(計画) |
31/6期(計画) |
CAGR |
|
売上高 |
4,665 |
5,271 |
6,920 |
9,060 |
11,290 |
20,000 |
+23.1% |
人材紹介 |
3,161 |
2,768 |
3,790 |
4,760 |
5,770 |
– |
– |
スキルシェア |
1,504 |
2,502 |
3,130 |
4,300 |
5,520 |
– |
– |
営業利益 |
833 |
210 |
350 |
750 |
1,400 |
3,700 |
+24.0% |
営業利益率 |
17.9% |
4.0% |
5.1% |
8.3% |
12.4% |
18.5% |
– |
ROE |
17.3% |
10.2% |
– |
– |
– |
28.7% |
– |
*単位:百万円、24/6期は連結、25/6期以降は非連結。CAGRは24/6期から31/6期への成長率、同社資料を基にインベストメントブリッジが計算。
(4)成長イメージ
31年6月期までを成長の第1フェーズ、それ以降を第2フェーズとしている。
31年6月期に向けては、人材紹介とスキルシェアを成長の軸に売上高200億円の達成を目指しつつ、その後の成長を見据えた基盤づくりにも注力する。新規事業としてコンサルティング事業を準備中である。社内コンサルをプロダクトマネージャーに据え、スキルデータベースから最適な人材をアサインすることで、あらゆる経営アジェンダに対応可能なチームを組成する。
第2フェーズは、既存事業の成長に加え、M&Aや既存事業のナレッジ・強みを活かした新規事業の創出を継続し、長期目標として売上高1,000億円を目指す。

(同社資料より)
3.2025年6月期決算概要
【3-1業績概要(非連結)】
24/6期 |
構成比 |
25/6期 |
構成比 |
前期比 |
修正予想比 |
|
売上高 |
4,665 |
100.0% |
5,271 |
100.0% |
+13.0% |
+1.2% |
売上総利益 |
3,098 |
66.4% |
2,857 |
54.2% |
-7.8% |
|
販管費 |
2,265 |
48.6% |
2,646 |
50.2% |
+16.8% |
|
営業利益 |
833 |
17.9% |
210 |
4.0% |
-74.7% |
+23.9% |
経常利益 |
831 |
17.8% |
219 |
4.2% |
-73.6% |
+28.9% |
当期純利益 |
502 |
10.8% |
321 |
6.1% |
-36.1% |
+19.0% |
*単位:百万円。24/6期は連結、25/6期は非連結。連結子会社であった株式会社ケンブリッジ・リサーチ研究所を2024年7月1日付で吸収合併したことにより、25年6月期から非連結決算に移行。
増収減益、修正予想を上回る
売上高は前期比13.0%増の52億71百万円。人材紹介が減収も、スキルシェアは注力中の事業会社向けが好調だった。
営業利益は同74.7%減の2億10百万円。収益性の高い人材紹介の減収で売上総利益が同7.8%減少し、売上総利益率も12.2ポイント低下した一方で、事業会社向けのフロント部門を中心に中途採用を積極化していることから人件費・採用費増など販管費が同16.8%増加した。売上・利益ともに業績予想(25年5月公表)を上回った。初めて配当を実施。配当額は35.00円/株で、配当性向は54.6%、DOEは5.6%。
【3-2 サービス別動向】
◎売上高
24/6期 |
構成比 |
25/6期 |
構成比 |
前期比 |
|
人材紹介 |
3,161 |
67.8% |
2,768 |
52.5% |
-12.4% |
スキルシェア |
1,504 |
32.2% |
2,502 |
47.5% |
+66.3% |
合計 |
4,665 |
100.0% |
5,271 |
100.0% |
+13.0% |
*単位:百万円。24/6期は連結、25/6期は非連結。
◎KPI
24/6期 |
25/6期 |
前期比 |
||
人材紹介入社決定人数 |
コンサルファーム向け |
552 |
419 |
-24.1% |
事業会社向け |
166 |
161 |
-3.0% |
|
合計 |
718 |
580 |
-19.2% |
|
フリーコンサルタント稼働人数 |
– |
867 |
1,568 |
+80.8% |
*求職者が求人企業に入社後一定期間内に自己都合により退職した場合、紹介手数料の一部を返金する契約を締結しているが、当該返金対象となった場合も入社決定人数に含めている。なお、人材紹介(正社員採用サービス)の一部取引について外部提携する場合があるが、当該提携先で決定した場合は、入社決定人数に含めていない。フリーコンサルタントの稼働人数は月次稼働人数の合計。
(1)人材紹介
主要顧客である大手コンサルファームの若手中途採用が縮小するなか、引き続き強みとするマネージャー以上の採用支援で案件を手堅く確保していることで、市場シェアは相対的に高まり、コンサルティング業界におけるプレゼンスは一層向上している。入社決定人数は大手コンサルファームの若手中途採用が減少したことで前期に比べて減少したが、マネージャー以上の案件を一定数確保したことで、平均年収と平均手数料率は高水準を維持。平均売上単価は477万円と前期を上回った。事業会社向けについてもフロント人員(営業)増と顧客数の拡大に注力している。
(2)スキルシェア
「AXIS Solutions(アクシスソリューションズ)(旧:フリーコンサルBiz)」が24年6月期後半から成長軌道に乗り売上が伸長している。体制強化と顧客のフォロー体制整備が奏功し、第4四半期(4‐6月)においても稼働人数を順調に伸ばし、6四半期連続で過去最高の四半期売上高を更新した。「AXIS Advisors(アクシスアドバイザーズ)(旧:コンパスシェア)」においては、サービスプランの充実、協賛活動や業務提携により利用機会を創出し、現役コンサルタントの登録シェア拡大に取り組んでいる。
平均受注単価は160万円と前期を下回った。

(同社資料より)
四半期ベースで見ると、大手コンサルファームの若手中途採用抑制は緩和傾向にあり、通期では減収だった人材紹介売上は第2四半期(10-12月)をボトムに増加トレンドに転換。営業利益も同様である。
【3-3 財務状態と
キャッシュ・フロー】
◎主要BS
24年6月末 |
25年6月末 |
増減 |
24年6月末 |
25年6月末 |
増減 |
||
流動資産 |
3,261 |
3,982 |
+721 |
流動負債 |
751 |
878 |
+127 |
現預金 |
2,678 |
2,999 |
+321 |
仕入債務 |
146 |
253 |
+107 |
売上債権 |
517 |
733 |
+216 |
固定負債 |
77 |
311 |
+234 |
固定資産 |
563 |
532 |
-31 |
負債合計 |
829 |
1,189 |
+360 |
有形固定資産 |
246 |
219 |
-27 |
純資産 |
2,995 |
3,325 |
+330 |
無形固定資産 |
45 |
144 |
+99 |
利益剰余金合計 |
1,479 |
1,800 |
+321 |
投資その他の資産 |
272 |
168 |
-104 |
負債純資産合計 |
3,824 |
4,515 |
+691 |
資産合計 |
3,824 |
4,515 |
+691 |
借入金 |
74 |
366 |
+292 |
*単位:百万円。
現預金、売上債権の増加等で資産合計は前期末比6億円増加の45億円。仕入債務、借入金の増加等で負債合計は同3億円増加の11億円。利益剰余金の増加等で純資産は同3億円増加の33億円。
自己資本比率は前期末から4.8ポイント低下し73.5%。
◎キャッシュ・フロー
24/6期 |
25/6期 |
増減 |
|
営業CF |
446 |
-183 |
-629 |
投資CF |
-245 |
-139 |
+106 |
フリーCF |
201 |
-322 |
-523 |
財務CF |
-77 |
298 |
+375 |
現金同等物残高 |
3,023 |
2,999 |
-24 |
*単位:百万円。24/6期は連結、25/6期は非連結。
【3-4 トピックス】
(1)IRコミュニケーションを整備
投資家との対話の更なる充実を図るべく、量と質の両面から開示を強化している。特に、ビジネスの理解促進及び財務モデル構築に資する情報として主要KPIの開示を拡充した。直接対話の機会を増やすために個人投資家向けセミナーも継続的に開催していく。
*主な取り組み
開示のロジックの整備 | 開示データの増加に伴い構造化・体系化も合わせて実施し、理解促進を図る。 |
ファクトシートの開示 | 中長期的にウォッチする投資家向けにモデル作成容易化のために開示を行う。 |
機関投資家向けコミュニケーション | 伊藤社長が、投資家との対話を通じて経営方針を説明する。 |
IR専任者の設置 | IRに高い知見を有する人員を採用しIR専任者として配置する。 |
(2)スタートアップ特化の経営プラットフォームを提供する株式会社StartPassへ出資
25年7月、スタートアップのエコシステムプラットフォームを提供する株式会社StartPassに対する出資を実行した。創業期スタートアップのCxOポジションをハイエンド人材への紹介先として拡充させる。
(株式会社StartPass概要)
2021年設立。「日本をスタートアップしやすい国へ」をビジョンに掲げ、スタートアップ特化の経営加速クラウド「StartPass」により、投資家リレーション・厳選されたサービス・情報をワンストップで提供するスタートアップ企業。契約スタートアップは1,000社を超える。
(出資の目的・背景、今後の取組み)
アクシスコンサルティングはこれまで、StartPass社と共同事業「CxO-Pass」を推進し、事業成長や新たな価値創出に取り組んできた。今回の出資により、両社の経営資源を最大限に活用し、共同事業における戦略的意思決定のスピードと精度を高める。また、戦略的な連携体制を強化し、他にはない独自性と優位性を確保することで、安定的かつ持続的な事業成長を実現する。加えて、両社の強みであるハイエンド領域のCxO人材の相互育成を推進し、アクシスコンサルティングの人材データベースを質・量ともに強化する。創業期スタートアップのCxOポジションをハイエンド人材への紹介先として拡充させる。
4.2026年6月期業績予想
【4-1 業績予想】
25/6期 |
構成比 |
26/6期(予) |
構成比 |
前期比 |
|
売上高 |
5,271 |
100.0% |
6,920 |
100.0% |
+31.3% |
売上総利益 |
2,857 |
54.2% |
4,005 |
57.9% |
+40.2% |
販管費 |
2,646 |
50.2% |
3,655 |
52.8% |
+38.1% |
営業利益 |
210 |
4.0% |
350 |
5.1% |
+66.1% |
経常利益 |
219 |
4.2% |
340 |
4.9% |
+55.1% |
当期純利益 |
321 |
6.1% |
220 |
3.2% |
-31.5% |
*単位:百万円。予想は会社側予想。売上総利益、販管費は同社資料よりインベストメントブリッジが計算。
増収増益を予想
売上高は前期比31.3%増の69億20百万円、営業利益は同66.1%増の3億50百万円の予想。
人材紹介、スキルシェアとも事業会社向け売上高を大きく伸長させる。中期経営計画最終年度となる28年6月期の過去最高益更新実現に向けて広告宣伝や人材増強の先行投資を行う。
広告宣伝については前期比4億円の増加を計画。事業会社に対するサービス認知拡大を目的として、著名タレントを起用したTVCM等のマス広告を展開する。人件費及び採用費は3億円増加の計画。成長性の高い事業会社向けフロント部門の人員体制強化に加え、従業員のエンゲージメント向上にも注力する。広告宣伝費追加投資の年間予算枠5億円の大半を第1四半期で消化する計画であるため、四半期ごとの営業利益は大きく変動する見通し。
配当は前期と同じく35.00円/株を予定。予想配当性向は80.3%。
【4-2 サービス別動向】
◎売上高
25/6期 |
構成比 |
26/6期(予) |
構成比 |
前期比 |
|
人材紹介 |
2,768 |
52.5% |
3,790 |
54.8% |
+36.9% |
スキルシェア |
2,502 |
47.5% |
3,130 |
45.2% |
+25.1% |
合計 |
5,271 |
100.0% |
6,920 |
100.0% |
+31.3% |
*単位:百万円
◎KPI
25/6期 |
26/6期(予) |
前期比 |
||
人材紹介入社決定人数 |
コンサルファーム |
419 |
618 |
+47.5% |
事業会社 |
161 |
253 |
+57.1% |
|
合計 |
580 |
871 |
+50.2% |
|
フリーコンサルタント稼働人数 |
– |
1,568 |
1,956 |
+24.8% |
*求職者が求人企業に入社後一定期間内に自己都合により退職した場合、紹介手数料の一部を返金する契約を締結しているが、当該返金対象となった場合も入社決定人数に含めている。なお、人材紹介(正社員採用サービス)の一部取引について外部提携する場合があるが、当該提携先で決定した場合は、入社決定人数に含めていない。フリーコンサルタントの稼働人数は月次稼働人数の合計。
(1)人材紹介
事業会社向けは、広告宣伝投資と営業体制強化を新規顧客開拓に繋げ、入社決定人数を大きく伸ばす計画。平均売上単価は前期比0.3百万円低下の3.8百万円を見込む。
コンサルファーム向けは、コンサルティング業界の良好な事業環境を受け、入社決定人数は成長路線への回帰を見込んでいる。平均売上単価は前期比0.5百万円低下の4.6百万円の予想。
平均売上単価は25年6月期が好調だったこともあり、保守的な前提としている。
(2)スキルシェア
25年6月期に積極採用したフロント部門の通期寄与で稼働人数は大きく伸長する見込み。平均受注単価は前期と同じく1.60百万円を見込む。
5.伊藤社長に聞く
伊藤 文隆 社長 COOに、同社の競争優位性、成長戦略と課題、株主・投資家へのメッセージを伺った。
前職でコンサル業界に特化した人材紹介エージェントを経験した伊藤社長は、更にスキルを向上させるため、2008年1月、同社入社。経営戦略本部長、営業本部長、法人営業本部長、スキルシェア本部長などを歴任後、2024年9月、代表取締役社長COOに就任した。
Q:まず初めに、事業としてのコンサル業界向け人材紹介の優位性はどのような点なのかについてお聞かせください。
人材紹介を収益性の高い事業として拡大させるには、「単価」「人材の流動性」「安定性」の3つが重要と考えています。
「高単価」「高流動性」なのは産業領域としては金融、不動産、コンサルなのですが、その中でも、「安定性」という観点からはコンサルが最適な領域です。コンサルは多様な業種・業界を顧客としていますので、金融、不動産とは異なって、業界の好不況の波を大きくは受けにくい、顧客のポートフォリオが構築されている。加えて今で言えば、IT、DXといったように、成長性のある業界も対象としていますから、ビジネスの拡張性も高い、これらが、人材紹介における「コンサル業界向け」の優位性と考えています。
Q:Big4コンサルの登録者数は約4,600人で3割が御社に登録しており、これは圧倒的なトップシェアとなっています。これを含め、御社の競争優位性、他社との大きな違いについてお話しください。
いくつかあるのですが、一つは、コンサルの中でもハイエンド領域に絞り込んでいる点です。
現在日本には主要なコンサル企業は23社あるのですが、上位の10数社で採用人数の7割程度を占めています。当社はほぼすべてのコンサルファームがお客様ですから、各社が今年は何人採用の計画があり、そのうちマネージャー以上は何人なのかといった情報を可視化しています。それによって今コンサルファームはどういう人材が欲しいのが手に取るようにわかります。クライアントの状況をしっかりと把握している点は、同業他社との大きな違いとなっており、そうした情報を基に、適切な登録者を選定して紹介案件を進行させますから、案件成立の確率も高いものとなります。
転職のみでなく独立支援も行っているのも当社ならではです。
コンサルの方の中で実力、自身のある方はフリーランスになるという選択をされる方も多いので、ハイエンド領域を抑えようと考えれば、転職のみでなく独立の支援もできるというのは重要なポイントなのですが、その機能を有しているのは現時点では当社のほかには見当たりません。
登録者に対して継続的な情報提供やコミュニケーションを行い、中長期の視点での信頼関係を構築するナーチャリングの体制が整っている点も、当社がコンサルにおけるトップシェアを有している理由の一つです。
例えば、年収700万円のコンサルの方にナーチャリングをしっかりと5年程度行っていくと年収1,200万円のマネージャーになる可能性が極めて高い。大手人材会社では、登録から3~4か月内でマッチングを成約させることで登録者の満足度を高めていますが、ハイエンド人材の場合は、平均的に3~5年程度時間をかけることで登録者の方もハイエンドの機会をつかめることができますし、当社としても高単価の案件を成立させることができるわけです。こうしたナーチャリングをしっかり行っているのも当社の大きな特徴です。
Q:そのナーチャリングについて、もう少し具体的に教えていただけますか。
どれだけ登録者の方のための情報、それも求人情報ではなくマーケット情報を提供できるか、ということです。
登録者の方の中には優秀だけれどなかなか年収が上がらない方もいれば、能力は普通でも年収が上がっている方もいる。この違いは何からくるかというと、その方の市場価値です。そして市場価値が何で決まるかというと、マーケットのトレンドなのです。
実際に優秀な戦略立案能力の高いコンサルの方より、AIの利用に長けているデジタルのコンサルの方のほうが、年収が高いケースも多く見られます。登録者の方が当社のキャリアアドバイザーと情報交換する最大のメリットは、的確なマーケットトレンド情報を入手することができるという点です。
例えば、A社は大手で年収1,000万円、B社は年収800万円、C社は年収600万円という3つの紹介案件があったとします。
普通に考えればA社で行きましょうということになるのですが、本当のエージェントの仕事は、「C社は現在600万円ですが、事業の将来性を考えると生涯賃金は3社の中で最も高くなる可能性が高いですよ」ということ、つまり、市場がこれからどう変化していくのかを的確に予測してお伝えすることであると当社では考えています。
大手コンサルファームが手掛けるプロジェクトは超大手企業に対する最先端の課題解決なのですが、3年経つとミドルマーケットで、5年経つと日本全国で行われるようになります。「DX」は今では全ての企業にとっての重要課題ですが、大手コンサルファームのアクセンチュアがテーマとして言い始めたのは十数年前です。このように、コンサルファームの手掛けているプロジェクトを正しく理解すると、5年先、10年先のトレンドが見えてきます。
マーケットのトレンド予測とそれに基づいたキャリア予測・アドバイスは、多くのコンサルファームと取引のある当社だからこそ可能なものであり、強力な優位性であると考えています。
Q:続いて中期経営計画について伺います。2028年6月期「売上高100億円、時価総額100億円」、2031年6月期「売上高200億円、営業利益37億円、ROE28.7%」実現に向けて、伊藤社長が最も重要と考えている点をお聞かせください。
中期経営計画では、人材紹介においては祖業であるコンサルファーム向けを着実に伸長させるとともに、市場規模が極めて大きい事業会社向けを拡大させます。またニーズの大きなスキルシェアを新たな収益の柱として確立させます。
そのために最も必要なのが、事業会社向けの認知度向上と営業力強化です。そのため、今後3年間で広告投資15億円、人的投資(採用)10億円の先行投資を実行します。
認知度向上に向けては、当社の新しいブランドコミュニケーションの顔として、俳優の米倉涼子さんを新CMのキャラクターに起用し、この7月よりTVCMを開始しました。既存のWEB広告に加え、各種マス広告も積極的に展開していきます。
営業力強化については、事業会社向け人材紹介及びスキルシェアともその効果が表れ始めていますので、今後も採用を強化+-+していきます。
Q:成長実現に向けた課題はありますか。
これまでは企業規模が小さかったこともあり、我々の進むべき方向性について一体感を持って事業を進めることができましたが、これから社員が増加していきますので、改めて我々の存在意義の共有や組織カルチャーの熟成といった点が必要になると考えています。
そのために、人事主導で様々な取り組みを行っていますが、私個人では、四半期決算が終わるたびに、10‐15人の社員を1チームとして全社員とのセッションの場を設けています。私が決算について説明するほか、社員からは自由な視点で質問をしてもらい、インタラクティブなコミュニケーションを図り、当社の存在意義、ミッション、ビジョンについての共有を図っています。
Q:ありがとうございます。それでは最後に株主・投資家へのメッセージをお願いいたします。
当社の提供するサービス、すなわち戦略実現人材、ハイエンド人材のシェアリングをマーケットに根付かせることは、日本の産業界の将来にとって極めて重要であると当社では考えています。
現在第2次ベビーブーム世代(1971年~1974年生まれ)は各年で約200万人、総計で約800万人いるのですが、次の世代である10歳下は約7割、20歳下では約6割となってしまいます。
こうした状況下では、これだけ変化が早く複雑な環境下でビジネスを作り出し、上手に運営していくことのできるビジネスリーダーの絶対数が減少していくことは避けられず、何もしなければ日本産業界の衰退にも繋がりかねません。
この課題を解決するには、ハイエンド人材を産業界でシェアリングする仕組みを構築することが不可欠であると当社は考えており、「人が活きる、人を活かす。 ~人的資本の最大化・最適化・再配置~」をMISSIONに掲げて、そこに挑戦しています。
当社の株価についてもご説明いたします。東証はグロース市場上場企業の上場維持基準について、現行の「上場10年経過後から、時価総額40億円以上」を、2030年以降、「上場5年経過後から、時価総額100億円以上」に変更することを検討しています。当社の時価総額は現時点で約40億円ですが、中期経営計画の施策を着実に実行することで、2028年6月期には、売上高及び時価総額とも100億円以上を必達目標としています。その時点でのPERは10倍以上を目安としており、現在のPERが20倍程度ですので、比較的保守的な前提としています。事業計画の着実な進捗とともに、IR活動の拡充にも注力し、時価総額基準の達成を目指します。
日本産業界を支えるとともに、株価においても皆様のご期待の沿えるよう取り組んでまいりますので、是非中長期の視点で当社を応援していただきたいと思います。

(同社資料より)
6.今後の注目点
顧客であるコンサルファームや事業会社との関係を構築・深耕する一方で、ユーザーである登録者に対して継続的な情報提供やコミュニケーションを行い、中長期の視点での信頼関係を構築するナーチャリングに注力している点も、同社がコンサルにおけるトップシェアを有している理由の一つである。
伊藤社長によれば、ナーチャリングの肝は、どれだけ登録者の方のための情報、それも求人情報ではなくマーケット情報を提供できるかということだそうだ。例えば、複数の紹介案件があった場合、単に企業規模や提示された年収で判断するのではなく、提示された年収が低くても、マーケットのトレンド予想を基に、生涯賃金が最も高くなる案件であればそちらを提案するといったことだ。「DX」は今では全ての企業にとっての重要課題だが、大手コンサルファームがテーマとして言い始めたのは十数年前。このように、大手コンサルファームが手掛けるプロジェクトは超大手企業に対する最先端の課題解決であるが、時間の経過とともに全企業の課題となる。コンサルファームの手掛けているプロジェクトを正しく理解すると、今後のトレンドが見えてくるとのことで、マーケットのトレンド予測とそれに基づいたキャリア予測やアドバイスが可能な点は、多くのコンサルファームと関係の深い同社ならではの強力な優位性であるといえよう。
こうした強みを活かしての中期経営計画の進捗と株価動向に注目していきたい。
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査等委員会設置会社 |
取締役 | 8名、うち社外取締役3名(うち独立役員3名) |
監査等委員 | 3名、うち社外取締役2名(うち独立役員2名) |
◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日: 2025年9月26日
<基本的な考え方>
当社は創業以来、理念経営を推進しており、「人が活きる、人を活かす。」を企業理念として掲げ、事業を通じて、新しい価値を創造し、すべての人が活き活きと働く社会創りをめざしております。
企業を取り巻く環境は大きく変化し、社会の課題解決と新しい価値やイノベーションの創出が求められております。当社は、そのような変化に向けて、当社のパーパス(存在意義)をコーポレートステートメント「あらゆる課題は、人で解決する。」に込め、全社一丸となって持続可能な未来に新しい企業価値を提供するべく事業を展開しております。当社は、社会へ貢献できるサービスを提供することで、継続的に収益を拡充し、企業価値を向上させ、株主をはじめとしたステークホルダーの利益を最大化するために、コーポレート・ガバナンスの確立が不可欠であると認識しております。
<コーポレート・ガバナンス・コードの各原則に基づく開示>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。

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