日本企業の価値はどこに
・トランプ大統領のやっていることを、米国の立場からみれば、自国の体力が落ちて、世界の面倒をみる力がなくなってきたので、米国は米国のことを優先する。これまで大目にみてきたアンフェアなことはもう認めない、という論理であろう。
・何事も五分五分で、米国が一方的に不利になることは避けて、常に応分の負担を求める。それが合理的であって、今までのルールは全て見直すというスタンスである。何事もディール(取引)なので、結果としての見返りが納得できる水準になければ、それはフェアなディールではないという。
・相手国からみれば、それは恣意的な自己都合ではないか、と言われても気にしない。自分たちの解釈を優先して、交渉に臨んでくる。よって、相手の土俵に乗って、相手のメリットを見せながら、こちらも国益をとっていく必要がある。
・建前の正論を言っても始まらない。立場が違えば、正論も変わってくる。自国としての正論は固めておく必要があるが、それが相手に通じるとは限らない。自由貿易の良さといっても、それは良さがプラスの国にはメリットであるが、良さが負担になるのであれば、自由貿易論は通用しない。
・どうやって異質な国々との合意形成を図っていくのか。経済力、軍事力、文化力に優れた大国が君臨している間は、世界秩序は保ちやすい。その覇権大国に依存すれば秩序は守れる。国際機関を作って、話し合いの場を持てば、対話ができる。
・超大国に余裕があれば、秩序を保つための負担を分担することができる。多くの国はそれを大国の支援として受け入れる。制約があるとしても、メリットの方が大きい。しかし、米国の覇権大国としての地位はゆっくりと崩れつつある。
・今のところ、米国にとって代われる大国はない。中国はそれを目指しており、力をつけているが、まだ彼我の差は大きい。そうすると、そこそこの国々が群雄割拠するので、摩擦は至る所で発生する。貿易紛争、国境紛争、武力紛争が頻発してくる。これをうまく捌く国がないので、力と力の戦いになり、国の安全保障が危うくなる。今はそういう局面にあろう。
・日本はどうしたらよいのか。経済力、軍事力、文化力を高め、これを保って世界の中で、一目置かれる存在として、自立していく必要がある。いいとこ取りはできない。米国に安全保障を頼るのであれば、これまで以上に応分の負担を求められる。当然、受け入れ方には戦略がある。いいなりではなく、双方のメリット、負担をしっかり追求すべきである。
・経済力を高めないと、発言力は確保できない。日本の企業にはもっと強くなってもらう必要がある。プライム市場に上場する日本の大企業は、製造業のウエイトが高く、海外依存度も高い。こうした企業には、米国、中国以外の世界マーケットを開拓して、大いに躍進してほしい。
・何よりも重要なことは、日本国内の企業を強くすることである。幸いにもインバウンドが牽引力となって、地方にも日本の文化の陽が当たり始めている。どんな地域でも、コアとなるコンテンツはありうる。しかし、そこは競争である。いいものをコアとして、新しいコンテンツを創っていく文化資産形成力が価値の根源となろう。
・かつてのように、ゴルフ場を作ればよい、リゾート施設を作ればよいというものではない。外国人が先ではなく、日本人が楽しめるようにしてこそ、外国人にとっての日本文化となる。自然と人工の仕組みの融合で、新しい歴史、物語を創っていく。
・アニメ、キャラクター、美術、工芸、演劇、音楽、ソブリンAIなど、アートとテクノロジーのマリアージュが面白さを生む。大阪万博にどれだけのヒントがあるだろうか。パビリオンの楽しみ方に注目したい。
・農林水産業を知識集約的産業にしていく。中小製造業を先端精密産業にしていく。サービス産業をハイテクエンタメ産業にしていく。文化遺産のコアには先人の知恵を使い、ベテランのノウハウを活用する。
・新しい仕組み、プラットフォーム創りに、若者を活用する。日本人だけでなく、世界の若者に入ってもらう。トリプルESG(EEESG)による価値創造はきっと受け入れてもらえよう。
・価値創造は新しいビジネスモデル創りである。EntertainmentとEducation を加えたトリプルESGを追求して、新しい価値を創り、それが中長期のビジネス(金儲け)になるとなったら、笑顔が集まってこよう。
・ヘルスケア オープン イノベーション、ソーシャル リスポンシビリティ インパクトという新しい言葉もあれば、ジャポニズム、常若(とこわか)といった古い言葉も登場しうる。植物工場、アート、神仏も新しい価値を生み出そう。
・大手上場企業の資本効率の改善はまだ道半ばであるが、道筋は見えた。政策も変革を加速させている。これによって、ついていけない企業は淘汰されて、新陳代謝が進もう。
・多くの中堅中小企業も、後継者不足の中で、経営革新が進まなければ再編、廃業に追い込まれよう。農林水産業などの伝統的産業も、担い手がいなくなる中で、新しい産業化を余儀なくされよう。
・これらは大変なことではなく、新しいビジネスのスタートとして望ましい。スタートアップとして、やる気のある若者にチャンス到来である。
・伝統的金融機関では、人材が活かされていない。フィンテック、アグリテック、サービステックなど、新分野にどんどん資金を供給してほしい。
・その目利き力を養うには、実業に入ってみることである。昔ながらの金融人の道はもうない。新しいフィンテック・パーソンにリスキングして、変身してほしい。
・おもしろい時代が始まろう。トランプ関税に悲観する必要はない。次代を担う若者をシニア世代は大いにサポートして、日本の価値、日本企業の価値を高めてほしいと願う。
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