日経平均は極めて理論価格に近い動きをみせるようになった

日本株にとって何が朗報かと言えば、理論価格で相場を語れるようになったことである。ほぼすべての金融資産は、その資産が生み出す将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて理論価格を求める。日本は長く金利がマイナスか、あるいはまったく意味をもたない低水準にあったため、こうした割引現在価値という尺度が使えなかったが、「金利のある世界」に戻ったことでようやく理論価格が求められるようなった。

4月初めのトランプ関税を巡る混乱から立ち直った今、日経平均は極めて理論価格に近い動きをしている。

【グラフ1】 日経平均の理論値と実際値の推移

出所:QUICKデータよりマネックス証券作成

日経平均は3万8000円台に乗せると途端に上値が重くなり、伸び悩む展開が続いていたが、今週は違った。一昨日の18日は3日続伸で終値は前日比348円高の3万8885円と2月19日(3万9164円)以来、4ヶ月ぶりの高値をつけた。

4ヶ月ぶりの高値は企業業績の見通しと金利にポジティブな変化が理由

その背景として、支払われた配当金が投資家の手元に届く時期であるためとか、株主総会シーズンであるからなどの需給要因を指摘する声がある。そうした面もあるのかもしれないが、もっとシンプルに、株価の基本的な決定要因である企業業績の見通しと金利にポジティブな変化があったことが一番の理由だと思う。

まず予想EPS(一株当たり純利益)が約2500円に上方修正されてきた。これはトランプ関税の影響が当初よりは楽観視されてきたことに平仄を合わせたものだろう。

次に金利低下である。僕はこれがいちばん大きな材料だと思う。日銀は今週開催した金融政策決定会合で政策金利を0.5%に据え置くと同時に、2026年4月以降の国債買い入れ減額ペースを、四半期ごとに2,000億円程度に縮小する方針を示した。植田総裁の会合後の記者会見も慎重姿勢が目立ち、市場では「ハト派」的との受け止めが広がった。さらに、財務省は超長期債の発行計画を圧縮する。20、30、40年物の国債について7月から1回あたりの起債額をそれぞれ1000億円ずつ減らすと報じられている。まとめると、日銀が利上げを急がず、国債の需給も改善する - 当然、債券市場は堅調となる。

下記のグラフ2からもわかるように、業績(EPS)見通しが持ち直し、金利が低下基調となれば、株価が上向きとなるのは当然だろう。今週の日経平均の上昇はファンダメンタルズの改善を素直に反映したものだ。

【グラフ2】10年債利回りと予想EPSの推移

出所:QUICKデータよりマネックス証券作成

不透明感の後退と日銀が利上げを急がないハト派姿勢を維持のシナリオに期待

昨日の日経平均の予想EPS(日経ベース)は2450円、10年債利回りは1.41%だった。これに5%の株式リスクプレミアムをのせてEPSを割ると、およそ3万8200円となる。ここからは3万8000円台を固める動きとなるだろう。

そこからさらに上値を試すには予想EPSが2500円台に定着することが必要だ。しかし、それには日本も含め各国の米国との通商交渉が一巡し、世界経済の見通しについてより確度が高まるのを待たなければならないだろう。さらに中東の地政学リスクが緩和し、原油価格が落ち着くことも要件となる。そのように不透明感が後退しても日銀が利上げを急がないハト派姿勢を維持していれば、長期金利は1.3%台に低下するだろう。このシナリオが実現すれば、日経平均の理論価格は

2,500÷0.063 = 39,680 円となり、4万円の大台回復が視野に入る。