2025年6月日銀政策会合プレビュー~今回の注目点を整理する

2025/06/11

2025年6月日銀政策会合プレビュー~今回の注目点を整理する

        • 政策金利は据え置きへ、注目は国債買い入れ減額の中間評価と新たな方針、植田総裁の発言。
        • 植田総裁は6月3日の講演で、見通しの実現に応じ緩和度合いを調整するとの基本方針を維持。
        • 今会合の市場への影響は限定的か、関税交渉進展の確認は必要も年内政策据え置きを予想。

政策金利は据え置きへ、注目は国債買い入れ減額の中間評価と新たな方針、植田総裁の発言

日銀は6月16日、17日に金融政策決定会合を開催します。弊社は無担保コール翌日物金利の誘導目標(現行0.50%程度)について、大方の見方と同じく、3会合連続の据え置きを予想しています。なお、日銀は今回、2024年7月に決めた2026年1-3月期までの国債買い入れ減額計画の中間評価を行い、2026年4月以降の買い入れ方針を公表するため、植田和男日銀総裁の記者会見における発言とともに、市場の注目が集まっています。

国債買い入れの減額計画については、6月4日付レポートでも解説していますが、日銀は中間評価として、減額に一定の効果を認め、2026年4月以降も減額を継続する可能性が高いと思われます。減額ペースは現在、原則四半期ごとに4,000億円程度ですが、日銀は市場の安定に配慮し、2026年4月以降は減額ペースを2,000億円程度に緩めるとの複数の報道も、最近ではみられます。

植田総裁は6月3日の講演で、見通しの実現に応じ緩和度合いを調整するとの基本方針を維持

植田総裁の発言に関しては、金融政策の運営に関する見解が注目されますが、6月3日に都内で開かれた内外情勢調査会での講演が参考になると思われます(図表1)。植田総裁は、賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムについて、米関税政策による下押し圧力を受けつつも「持ちこたえ」、「途切れることはない」と述べ、基調的な物価上昇率が2%に向けて徐々に高まっていくとの見方は不変との見解を示しました。

一方で、「通商政策の今後の展開を巡る不確実性はきわめて高く」、政策運営は「これらの動向を丁寧に確認したうえで適切に判断」するとの発言もみられました。ただ、植田総裁は、国内の緩和的な金融環境が経済活動を支えており、日銀の見通しに沿って「基調的な物価上昇率が2%に向けて高まっていくという姿が実現」していけば、経済・物価情勢の改善に応じ、「金融緩和の度合いを調整していく」という従来の基本方針を維持しました。

今会合の市場への影響は限定的か、関税交渉進展の確認は必要も年内政策据え置きを予想

以上より、①政策金利は据え置き、②国債買い入れの減額計画は一定の効果ありとの評価で、2026年4月以降の減額ペースが緩む可能性、③植田総裁の政策運営に関する基本方針は不変、という結果が今回予想され、市場への影響は限定的とみられます。なお、最近の超長期国債利回りの不安定な動きに、一部では日銀の関与を期待する声も聞かれますが、これも6月4日付レポートで触れた通り、日銀は消極的と思われます。

日銀による25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げについて、市場が織り込む年内実施の確率は7割程度ですが(図表2)、弊社は2026年の春季労使交渉(春闘)における賃上げ動向を確認した後、2026年4月の実施を見込んでいます。仮に、米国と主要貿易相手国との関税交渉が進展し、不確実性が大幅に低下すれば、年内利上げの公算は大きくなりますが、植田総裁の発言通り、動向の丁寧な確認が必要と考えます。

 

 

(2025年6月11日)

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
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