変化する「トランプ相場」のストーリー
11月最終週となる今週の国内株市場ですが、これまでのところ、日経平均は節目の38,000円台を下回る場面が散見されるなど、低調な展開が続いています。
それに対して、米国株市場に目を向けると、NYダウとS&P500が史上最高値を更新する場面があったほか、ナスダックも高値圏での推移となっています。さすがに感謝祭で休場前となる27日(水)の取引では利益確定売りが出て下落したものの、好調さを維持しています。
こうした米国株市場の強さの背景には、やはりトランプ次期政権が絡んでいます。具体的には、米財務長官に、スコット・ベッセント氏が指名されたことが好感された格好です。同氏は著名投資家のジョージ・ソロス氏のファンドで腕を磨いてきた経歴の持ち主で、「金融市場を熟知している」人物の選出が市場に安心感をもたらした格好です。
米国の財務長官については、これまでにも米金融業界出身者が就任した実績があり、必ずしも珍しくはないのですが、過去の長官はいずれも「セルサイド(金融商品を売る側)」の人物でしたので、ベッセント氏がこのまま就任すれば、初めての「バイサイド(投資家側)」の長官となります。
また、金融市場がベッセント氏を歓迎した理由のひとつに、トランプ氏に提言した「3・3・3」政策が挙げられます。かつての安倍政権の「3本の矢」になぞらえたもので、「2028年までに財政赤字をGDP比で3%に削減」、「規制緩和を軸にGDP成長率を3%台に伸ばす」、「原油生産を日量300万バレル相当まで増やす」といった具合に、数字の3にちなんだ政策内容となっています。
その中でも、金融市場が好感したのが財政赤字の削減です。最近までの金融市場は、トランプ次期政権誕生への思惑によって、株式市場は減税や規制緩和による景気刺激のポジティブな面を反映して株価が上昇する一方、債券市場の方は、減税や関税強化による財政赤字拡大や、インフレ再燃警戒などのネガティブな面を反映して、金利が上昇する動きとなっており、株式市場と債券市場で「見ている景色」が異なる展開となっていました。
セオリー的には株高と金利高が併存する状況は長続きしにくいため、今後は、公表される経済指標や企業業績、政権運営の動向などを確認しつつ、ポジティブとネガティブのあいだで揺れ動く展開が想定されるわけですが、ここにきて、ベッセント氏の登場によって、財政赤字の拡大不安が後退したことで、米10年債利回りなどの米金利が低下し、これが米国株市場の追い風になっていると思われます。
このように、現在の米国市場はポジティブ寄りに傾いていると言えそうですが、財務長官の選考過程においては、ハワード・ラトニック氏との争いがありました。結果的に、ベッセント氏が勝利し、敗れたラトニック氏は商務長官に指名されたのですが、両氏の折り合いが良いとは言えないほか、ラトニックを支持してきたのが、あのイーロン・マスク氏であったりと、今回の財務長官をめぐる人事で生じた禍根が政権内での対立を生むなど、尾を引いてしまう可能性もあり、政権発足後の動向は気掛かりです。
いずれにしても、トランプ相場は今後も続くことになりますが、今週見せた動きのように、その「ストーリー」が変化して行くことを念頭に置いて、取引に臨んでいく必要がありそうです。
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