AIをいかに使いこなすか

2024/11/20

・規模では勝てそうにない。AIのプラットフォーム作りで、米国の大手は圧倒的である。AIの学習のしかた、データの量、モデル化のパラメータはいずれも大規模化している。あるレベルを超えると、とんでもない能力を発揮するようになる。計算、推論、創発へ飛躍的に能力を高めていく。

・そのことは素晴らしい。人の能力を超えいくので、それをうまく使いこなせば、これまでできなかったことが、どんどんできるようになる。大いに活用して、新しいビジネスを作り、新しい生活を楽しみたいと思う。

・しかし、巨大な新産業の勃興期には、危ういことも多々発生する。不正を働くことが跋扈し、競争を制限して寡占化を図ろうとする企みが横行し、社会的価値のよしあしの前に、経済的価値のみが優先してしまうことが起こりうる。

・一方で、イノベーションの勃興期に、それを制約するだけでは発展はない。さてどうするか。なにより若い人々を中心に、AIを学ぶ機会を増やすことであろう。早く学べば、AIに対する知見が身に付いて、それを使いこなすことや、あるべき価値について判断できるようになろう。

・コンテンツについて、何がオリジナルか。どこがオリジナルか。何を盗作したか。データかアイデアか。オリジネーター・プロファイルが問われる。ここを確保しないと、価値創造が担保されない。

・計算機は電気を食う。大規模化と省電力化は並行する形で進んできたが、AIの活用によって、データセンター(DC)はますます必要になり、そのための電力需要は膨大となる。

・カーボンニュートラルと本当に両立できるのか。便利になるということは、エネルギーの消費量の拡大を伴う。電力供給の制約がAIの利用を抑えるかもしれない。ここでも、生活の質(Life of Quality)の再考が求められよう。

・SNSで、暴言、暴論、誹謗中傷など、ありえない言動が目立つ。悪気や悪意があるのか。知っている人に対してもこんな酷い言葉を使うのか、と驚くことが頻繁にある。昭和の匂いをさせて、言動の波及に気が回らない人も多い。

・発言には責任を持って、自らの出所がいざとなったら、つきとめられる覚悟を持って発信せよと言いたい。言論の自由を越えている。こういう言論の洪水をAIが学んでいく。AIに倫理観を持ってもらえればよいが、望ましい倫理観も人によって異なるので、ここも危うい。

・ハルシネーション(幻覚:尤もらしい噓)やバイアス(偏見)はいたるところに発生する。何らかの意図をもてば、AIはいくらでも嘘をつける。騙すために、アテンションエコノミー(AE)を追求するのは、常套手段となる。過激な内容で注意を引き付けて、洗脳しようという行為である。

・金儲けのためには、何でもありとなりうる。暴走を防ぐ規制、ルール、ガバナンスのあり方が問われるが、常に後追いとなりかねない。我々は、AIの暴走に加担して一儲けを企むのか。信頼されるコンテンツクリエーターを目指すのか。覚悟すべきであろう。

・8月に「グローバルデジタルサミット」(日経フォーラム)で、「Sakana AI」の伊藤COOの講演を聴いた。興味深い論点をいくつか取り上げてみたい。伊藤氏は外務省に15年、その後メルカリ、英国のAIファンドを経て、3名でサカナAIを立ち上げた。

・2022年が生成AIの元年、2023年にはオープンAIでなくても、生成AIが使えるという動きが出てきた。そこで、サカナAIは、2023年に生成AIのスタンダードに挑戦することにした。LLM(大規模言語モデル)をベースに、ビックデータ(BD)の規模が働く方式に対して、それは本当かと問いかけた。

・BDをつぎ込んだもの勝ちか。Bigger than betterではなく、やたらデータの量に頼らなくても、生成AIのパフォーマンスを上げられるのではないか、と考えた。

・そこで、2024年に生成AIの進化系モデルに開発した。大規模でなくても、生成AIを作れるということを証明し、これが今年のトレンドとなった。

・生成AIのモデルを一から作る必要はない。オープンソースとして、さまざまなモデルを構成する。このモデル化に、ヒトの判断は入れないのがポイントである。

・とりあえず混ぜて、その中のいいものを残す、これを第1世代とする。これを掛け合わせて、第2世代を作る。これを1000回やる。1000世代を作るのに、24時間、3000円くらいのコストでできる。このやり方が進化系である。

・では、2025年はどうなるか。今のAIの課題は何か。さらによいアプリができないか、というよりも、①LLMの制約や、②BDの活用の制約がある。OS(オペレーティングシステム)はいろいろあってよい。単なるBDではなく、自分たちが有している固有データを活かすことである。つまり、自社データが活きる新しいOSを作っていくことである。

・例えば、言語以外の画像データも利用できるようにする。個別企業のデータを、意味のある情報として利用していく。これによって、小型で省電力の変幻自在な生成Aiで、世界をリードすると語った。

・米国にAIの巨人はいるが、主要国にはそれぞれのナショナルチャンピオンがいる。日本にも、日本トップのAI企業がいてよい。ソブリンAI企業として、ユニークな存在を示したいと挑戦している。

・R&Dのトレンドは、1)AIが自ら判断する(エージェント)、2)同時にトレーニングも進める(スウォーム)、3)時系列的に分析する(タイムシリーズ)、4)自ら改善する(セルフインプルービング)をモデルに組み込んでいくことにあるという。

・その中で、サカナAIは、1)プライバシーを守り、安全である(セキュア)、2)独自のAIモデルを構築する(スペシャル)、3)大規模化に伴うコストアップをさけて、サステナブルである(サステナブル)、ことを追求する。サカナAIの活躍に注目したい。

株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所   株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所は「リスクマネジメントのできる投資家と企業家の創発」を目指して活動しています。足で稼いだ情報を一工夫して、皆様にお届けします。
本情報は投資家の参考情報の提供を目的として、株式会社日本ベル投資研究所が独自の視点から書いており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではありません。また、情報の正確性を保証するものでもありません。株式会社日本ベル投資研究所は、利用者が本情報を用いて行う投資判断の一切について責任を負うものではありません。

このページのトップへ