株式会社キャンバス(4575 Growth)
「創薬パイプライン型」へのステップ・アップ

2023/06/12

フォローアップレポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

CBP501Ph3のための資金調達を表明
2023年5月18日、キャンバスは、自社でCBP501の臨床第Ⅲ相試験(Ph3)を完遂するため、新株及び新株予約権の第三者割当の計画を公表した。この資金調達計画は、次の3点を意味するものとして捉えられる。第一に、事実上POC(Proof of Concept)は確立され、臨床第Ⅲ相試験(Ph3)確実であること、第二に、Ph3完遂までの資金を製薬企業等ではなく、機関投資家・株式市場から獲得することを決断し、「創薬パイプライン型」を志向した。この決断により、キャンバスは、Ph3開発のリスクを自ら背負う一方、開発主導権を他社に委ねることなく、自社で握ることとなる。薬剤そのものの有効性・安全性に問題がないにもかかわらず導出先の戦略的理由から開発が中断されてしまう懸念はない。また、自社で後期臨床開発まで行うことにより、リターンの最大化も図ることができる。第三に、試験デザインと費用の概略が判明した。合計300例のデザインで、費用は、既に調達している部分も含め55億円~65億円となる。

創薬パイプライン型事業モデルへの転換
従来、日本ではベンチャーキャピタルがIPOによるExitを中心と位置づけ、IPO後の資金調達を担う存在が手薄であったため、自力で創薬の後期開発まで推進する「創薬パイプライン型」は育ちにくかったと考えられる。しかし、米国の例を見れば明らかなように、「創薬パイプライン型」の方が、資金規模やリスクは高まるが、リターンも大きい。昨今、日本の独立系ベンチャーキャピタル幹部は、欧米のような規模を追求するためには、スタートアップばかりではなく、「創薬パイプライン型」バイオベンチャーにも投資を拡大することが必要であると考え始めている。このように開発のための資金調達環境は変化の兆しが見えつつある。一般の個人投資家サイドとしても、開発前期段階の提携・導出への期待で一喜一憂するのではなく、冷静にパイプラインの試験の結果を評価し、その価値を考察する時代に移行しつつあるのではなかろうか。

CBP501の価値:700億円以上を確認
資金調達計画が明らかになったことにより、試験デザインや費用が明確になってきたため、パイプライン価値の再試算を行った。前回同様、米国で3次治療のすい臓がん患者で薬物治療を選択する患者数は2万人程度と想定され、CBP501の市場規模を試算すると、ピーク時900億円程度の売り上げと設定する。一方、今後の開発費用は、Phase3が合計300例)と比較的小規模なものに留り、55-65億円程度と設定する(前回より下方修正)。さらに、自前の開発か共同開発か、共同開発の場合の利益配分などによってパイプライン価値は変動する。販売契約一時金や販売ロイヤリティ率など様々な前提を置いたうえでの試算ではあるが、「創薬パイプライン型」事業モデルの場合、CBP501の現在価値(税前)は、少なくとも700億円以上はあると推察される。導出による共同開発よりも、その価値が向上するのは言うまでもない。

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