ジェノバ(5570) 既存市場での存在感も大きいが、新市場での成長可能性も大きい
衛星測位システムの誤差を補正する情報配信サービスを提供
既存市場での存在感も大きいが、新市場での成長可能性も大きい
業種: 情報・通信業
アナリスト:藤野敬太
◆ 衛星測位システムの誤差を補正する情報配信サービスを提供
ジェノバ(以下、同社)は、GPSをはじめとするGNSS注衛星から送られてくる測位情報の誤差を補正する情報を配信する位置情報サービスを提供している。
GNSS衛星から発信される電波を利用した測位情報を、そのまま補正することなく使用することを単独測位と言うが、電波が電離層や対流圏を通過する際に電波速度が変わってしまうため、単独測位ではメートル単位での誤差が生じる。この誤差を補正する作業が必要となるが、同社が配信する補正情報を用いることで、センチメートル単位での誤差におさめることができる。
同社はGNSS補正情報配信サービス等の単一セグメントだが、売上高は、データ配信サービスと通信機の2つに分類されている(図表1)。通信機は、顧客が測位する際に用いる機器の販売のことだが多くなく、売上高の大半がデータ配信サービスで占められている。
◆ 技術の概要
同社は、国土地理院が管理する全国約1,300カ所に設置された電子基準点のデータを日本測量協会から取得し、電子基準点データをもとに高精度位置補正情報データを生成して顧客に提供している。電子基準点のデータは規制緩和により02年に民間開放され、それ以降、位置補正情報を配信するサービスが確立した。
高精度位置補正情報データの生成には、仮想点方式(VRS方式)と電子基準点方式の2つの方式がある。同社は両方式に対応できるが、仮想点方式が用いられることが大半である。仮想点方式は、観測地点付近に仮想的な基準局を生成する方式で、難易度は高いものの、(1)観測に必要な人員や機材が少なくて済む分、顧客はコストを低く抑えて観測ができる、(2)地殻変動量を調整できるためより高精度である、(3)物理的な基準局でないため台風や地震等の外部環境の影響を受けない等のメリットがある。
◆ サービス体系
同社のデータ配信サービスでは、データの提供の仕方により2つのサービス体系が用意されている。
(1)リアルタイムデータ配信
(2)後処理データ配信
リアルタイムデータ配信では、顧客が単独測位して得た位置情報を同社に送信することで同社から位置補正情報データを取得し、顧客が持つ機器でリアルタイムに解析して高精度測位を行う。
後処理データ配信では、観測地点でのネットワーク通信が不要で、顧客が単独で衛星測位を実施した後、同社が配信する後処理データと合わせて高精度の位置情報を取得する。
どちらのサービスも、仮想点方式(VRS方式)と電子基準点方式のいずれの方式でも対応できる。
◆ 料金体系
リアルタイムデータ配信のサービスでは、「従量プラン(20分までは2,000円/月で20分を超えると1分ごとに100円加算)」、「定額プラン(24,000円/月)」、「年間契約プラン(240,000円/年)」の3種類のプランが、後処理データ配信のサービスでは、「後処理専用プラン(40円/分、月額定額費用なし)」の1種類のプランがそれぞれ用意されている(いずれも金額は税前)。リアルタイムデータ配信のサービスの「定額プラン」と「年間契約プラン」には、60分までの後処理データ配信無料(60分を超えると1分ごとに40円加算)が含まれている。
◆ 用途
同社は元々測量業界向けにサービスを始めたという経緯があり、今でも同社の売上高の半分程度が測量業界向けと推察される。測位のためには顧客側でも機器を用意する必要があるが、機器の価格が下がってきたことにより、測量業界以外での利用が増えてきている。具体的には、土地家屋調査のほか、建設現場の生産性向上の目的で国土交通省が土木業界で推進するICT施工(i-Construction)、IT農業、ドローン等での利用促進が期待されている。
同社はそうした需要拡大の動きに乗り、18/9期以降、年10.5%のペースで契約数を増やしてきている(図表2)。