オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Growth)
虎の子は自前で製品化まで育てる

2023/03/13

フォローアップ・ レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

がんを溶かすテロメライシン®の開発は最終段階に
オンコリスバイオファーマの主力開発品は、テロメライシンという遺伝子を改変した腫瘍溶解ウイルスである。テロメライシン®(OBP-301)は、がん細胞にも正常細胞にも感染するが、がん細胞で活性が高いテロメラーゼ酵素によりウイルスの増殖スイッチが入りがん細胞を溶解し、がん細胞の細胞死を発生させる。感染したがん細胞は溶融した後、増殖した腫瘍溶解性ウイルスを放出して他のがん細胞に感染していくだけでなく、がんの抗原も放出することで抗腫瘍免疫活性も上昇させる。従って、免疫チェックポイント阻害剤との併用で抗がん効果がさらに増大する可能性が高い。幅広いがん種で効果が期待できるが、現在、オンコリスバイオファーマ独力での製品化に向けて、食道がんに絞って、順調に臨床開発を推進しており、2024年承認申請まであと一歩のところまで来ている。

虎の子は自前で製品化まで育てる
これまでのビジネスモデルは、一定段階まで開発を行い、大手製薬会社へライセンスアウトして収入を得る典型的な創薬ベンチャー型であった。しかし、テロメライシン®を巡る中外製薬との大型提携の解消を契機に、オンコリスバイオファーマは、自力で、臨床開発を完遂するのみならず承認申請まで行う製薬会社へのグレードアップを目指すこととなった。自社でMRを保有し直接医療機関へ販売する体制まではいかないが、自社製品をMRを保有する製薬会社へ販売し、医療機関へ届ける体制を構築中である。このため、主力品以外の開発の優先度を引き下げ、主力品開発に集中しているほか、製造・販売の体制確立のため薬事三役(総括製造販売責任者、品質保証責任者、安全管理者)の採用を進めるとともに、市販後調査機能を設置し、承認申請に必要な体制整備を実行中である。生みの苦しみはあるものの、単なるライセンスアウトに比べて、社内に蓄積される利益とノウハウは格段に向上する。食道がんを対象としたテロメライシン®の価値は、日本だけでも180億円以上(税前)と試算される。対象となるがん種や地域の広がりを想定すると、その価値は一桁違ってくる。

2023年のカタリスト
2023年は、オンコリスバイオファーマにとって、さまざまなイベントが予想される。まず、先駆け審査指定を受けている、国内の食道がん対象のRT療法Ph2(Pivotal)のトップラインデータが2023年秋以降公表される。2024年の承認申請のために必要な国内販売パートナーとの提携も年内に浮上することが確実視される。また、海外では、胃がん・胃食道接合部がんを対象にした免疫チェックポイント阻害剤との併用療法について、新しいプロトコルが固まりつつあるが、免疫チェックポイント阻害剤を保有する大手米国製薬会社が関心を抱いており、2023年前半にも共同開発に関する反応があると期待される。さらにOBP-601のPSPを対象としたPh2aのトップラインデータも年央以降には取得でき、今後ライセンスアウトへの期待が高まる可能性がある。これらのカタリストを契機にオンコリスバイオファーマが再評価されることを期待する。

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