中国リスクをめぐる不安と楽観

2022/12/02

「月またぎ」で12月相場を迎える今週の国内株市場ですが、日経平均は月末の11月30日にかけて続落し、節目の28,000円台を割り込んだものの、翌12月1日には大きく反発して取引がスタートするなど、これまでのところ少し荒っぽい展開が目立っています。

足元の相場環境を見渡すと、来週末の国内メジャーSQや、再来週の米FOMC(連邦公開市場委員会)、米11月CPI(消費者物価指数)などの注目イベントを控え、クリスマス商戦の動向をにらみつつ、様子を探る地合いとなっていますが、新型コロナウイルスへの対策をめぐって中国で大規模な抗議活動が各地で頻発していることも市場の注目を集めています。

とりわけ、米アップル社が製品の製造を委託している台湾企業の中国工場(河南省鄭州)での混乱は、海外でも大きく報じられ、実際にiPhoneの出荷に影響が出始め、アップル株が大きく下落する場面がありました。同社の株価はこれまで大きく売り込まれてきた米大手IT・ハイテク関連銘柄と比べても値持ちが良かったこと、また、その時価総額の大きさから多くの投資家が保有しているため、同社株がさらに下落した場合の相場全体へ与える影響には注意が必要です。さらに、中国の混乱自体も同国の経済活動のブレーキとなるほか、中には政治的な内容の抗議活動も行われているようですので、情勢が落ち着くまでの道のりはまだ不透明な段階と言えます。

とはいえ、市場の一部ではこうした中国情勢に対して楽観的な見方もあります。あれだけの抗議活動が行われれば、中国当局もいわゆる「ゼロコロナ政策」の見直しを迫られることになり、政策の緩和によって経済活動が本格的に再開されるのではというシナリオが背景にあるようです。

29日(火)には、中国の国家衛生健康委員会が新型コロナウイルスに関する記者会見を開くと報じられ、政策の見直し期待で同日の中国株市場や海外の関連市場が大きく上昇していきました。ただし、夕方に開かれた会見では、政策そのものの見直しについての言及はなく、肩透かしとなった格好です。

確かに、世論の声に押されて政策の見直しや修正が行われることは珍しくありませんし、中国においても、今後ゼロコロナ政策の見直しを行う可能性は十分にありますが、これまでの中国は国内の抗議活動に対して力で押さえつけることが多かったことを踏まえると、現時点では楽観シナリオに対して懐疑的に見ておいた方が良いかもしれません。

また、このような流れで政策の見直しが行われてしまうと、「大きく騒げば、自分たちの要求が通る」という実績を作ることになり、今後もこうした国民からの抗議活動が活発になって、歯止めが効かなくなる恐れもあります。そのため、中国当局はある程度の妥協の姿勢を見せつつ、今回も力で押さえつける可能性は高いと考えられます。

中国はゼロコロナ政策以外にも、中国恒大集団をはじめとする不動産セクターの債務問題を発端として、地方政府の財政悪化や金融機関への影響、鉄道などの不採算公共事業などへと懸念が拡大してしまう火種も抱えています。中国のカントリーリスクは高まっている状況ですので、警戒感が緩和されるにはもうしばらく見極めていく必要がありそうです。

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