株高材料のウラにある「織り込み」の修正
今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ軟調な場面が目立ち、株価水準的には、1月5日の高値(29,388円)を射程圏内に捉えていたところから、28,000円台の前半あたりまで切り下げる展開となっています。
先週まで急ピッチで上昇していたことによる過熱感や、週末に控えるジャクソンホール会議(米カンザス連銀主催の経済シンポジウム)でのパウエル米FRB(連邦準備理事会)議長の講演を控えた様子見などが背景にあると思われますが、とりわけ後者については、パウエル議長がインフレ抑制のために利上げを続ける姿勢を示すとの警戒感が強く、米長期金利(10年債利回り)が23日(火)の取引で一時3%台に乗せるなど、株価の重石となっています。
先週までの株式市場は、「インフレの早期落ち着き」、「金融政策の引き締め鈍化とその先の緩和期待」、「景気や企業業績減速のソフトランディング」を前提に株価が上昇してきていましたが、ここにきて、こうした見方に対しての自信が揺らいているような印象です。
インフレのピークアウト感の支援材料となっていた原油価格の下落については、指標とされるWTIの価格が1バレル=90ドルあたりで下げ渋り、再び上昇しそうな動きを見せています。最近になって、欧州の天然ガス価格が高騰しており、代替エネルギーとしての需要増が見込まれるとの思惑が働いている面もあります。
また、足元の冴えない米経済指標についても、景気減速による需要減でインフレ鈍化をもたらし、その結果として米金融政策の引き締めが緩和されるのではとの見方で、最近まではむしろ株高の材料となる動きもあったのですが、今週は素直に悪材料として機能しつつあるようも見えます。
もちろん、週末のパウエルFRB議長の講演を無難に通過し、イベント通過による出尽くし感で株価が再び上昇基調に戻す可能性も十分にありますが、基本的には、最近までの株価上昇局面で織り込み切れていなかった面の修正が行われる可能性も考える必要がありそうです。
具体的には、米金融政策への期待を織り込み直す動きです。先週公表された7月開催分のFOMC(連邦公開市場委員会)では、「どこかの時点で利上げペースを落とすのが適切になる」という文言が示され、これが金融引き締めの鈍化という見方につながって株価を押し上げましたが、そもそも、前例のない急ピッチな利上げを開始してから半年が経過するタイミングで「いったん経済への影響を見極めたい」というのがFRBのホンネだとすれば、利上げペースを落とすのは必ずしも金融政策の方針転換というわけではなく、やや期待の先走り感があるかもしれません。
仮に、こうした織り込みの修正が進む展開となった場合、景気・企業業績悪化への影響についても見直されることが考えられます。一般的な相場のサイクルは、「業績相場」から「逆金融相場」へ、そして「逆業績相場」を経て「金融相場」へと推移していきます。先週までの株式市場は、インフレ抑制のための「逆金融相場」から「金融相場」へと一足飛びに推移していくような印象もあったため、今後しばらくは経済指標やインフレ動向などをにらみながら、「逆金融相場」と「逆業績相場」とのあいだで揺れ動き、値動きは荒いが方向感に欠ける展開が続くかもしれません。
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