オンコリスバイオファーマ株式会社(4588 Mothers)
欧米メガファーマとの 新たな 提携 に活路を拓く

2022/03/07

フォローアップ・ レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

がんを溶かす腫瘍溶解薬テロメライシン
オンコリスバイオファーマの主力開発品は、テロメライシンという遺伝子を改変した腫瘍溶解ウイルスである。テロメライシン®(OBP-301)は、がん細胞にも正常細胞にも感染するが、がん細胞で活性が高いテロメラーゼ酵素によりウイルスの増殖スイッチが入りがん細胞を溶解し、がん細胞の細胞死を発生させる。感染したがん細胞は溶融した後、増殖した腫瘍溶解性ウイルスを放出して他のがん細胞に感染していくだけでなく、がんの抗原も放出することで抗腫瘍免疫活性も上昇させる。従って、免疫チェックポイント阻害剤との併用で抗がん効果がさらに増大する可能性が高い。現在、食道がん、胃がん、頭頸部がん、肝細胞がんの4つのがん種で6本の臨床試験が進展している。

免疫チェックポイント阻害剤を保有する欧米メガファーマとの提携活動開始
残念ながら、2019年4月に締結した中外製薬との提携は2022年10月15日で解消されてしてしまう。この提携解消を承けて、オンコリスバイオファーマは選択と集中を実行中である。その一つが、前述のテロメライシン®(OBP-301)の食道がんを対象とした放射線(RT)併用療法の開発である。既に、目標症例数の過半数の患者組入を完了しており、2022年内には、最後の患者組入に到達できる可能性がある。また、プロセスバリデーションもスリム化し、新たにベルギーのHenogen社も採用して実行中である。これらに要する資金も確保している。ただし、食道がん治療の本丸は、放射線(RT)併用療法ではなく、化学放射線(CRT)併用療法であり、また、ステージⅣまで進行した食道がんには、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)併用療法が期待されている。オンコリスバイオファーマでは、多額の資金を要するこれらの開発を見据え、食道がん等消化器系がんでの承認を獲得している免疫チェックポイント阻害剤(例:オプジーボ®やキイトルーダ®)を保有する欧米メガファーマ複数社を対象として提携活動に注力し始めている。また、その次の段階として、国内の販売権ライセンスや中国圏を対象とした提携獲得の構想も継続している。これらの提携獲得により、将来的には、食道がんだけで1000億円規模の売上と他のがん種への適応拡大も期待できる。

新型コロナ感染症経口治療薬での提携も
選択と集中の中、もう一つ注力しているのが、新型コロナ感染症経口治療薬OBP-2011の開発である。既に上市されている経口治療薬とは作用機序が異なるため併用が可能である。また、様々な変異種にも有効と考えられる。現在は、提携獲得に向けて、分子レベルでの作用機序の解明と動物での有効性の検証を実行中であり、2022年に予定している治験申請の前後で提携を目論んでいる。既に経口治療薬を保有しているメガファーマが、併用薬として関心を寄せているとのことである。中外製薬との提携は2022年10月15日で解消されてしまうが、欧米メガファーマとの新たな提携獲得がオンコリスバイオファーマの大きな潜在力を引き出す可能性とその提携実現の日が近づいていることに留意したい。

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