来週の金融市場見通し(2022年3月7日~2022年3月11日)
■来週の見通し
ウクライナ情勢の混乱を受け、金融市場は不安定になっています。特に原油価格が高騰しており、これによる世界的なインフレ(物価上昇)加速が懸念されます。ただ、世界経済の先行き不透明感から米連邦準備理事会(FRB)は利上げに慎重になる、との観測などを受け、内外の長期金利が低下傾向となっています。また、ウクライナをめぐる停戦協議への期待も残っています。それらが株価などを支える見込みですが、ウクライナ情勢を注視する必要があるほか、米消費者物価指数などの経済指標も注目されます。
◆株価 :上値の重い展開に
日本株は、上値の重い展開が予想されます。ロシアとウクライナの停戦協議への期待は残っているものの、緊張が直ちに大きく緩和する可能性は低いとみられ、市場のリスク回避ムードは当面継続しそうです。また、15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控える中、米金融政策に関する不確実性も、積極的な投資を抑制する見通しです。ただ、内外の長期金利低下が株式市場の好材料となり得るため、株価下落は限定的と見込まれます。
◆長期金利 :低水準で推移
長期金利は、低水準で推移しそうです。ウクライナ情勢の緊張を受け、安全資産とされる日米などの国債需要が足元増加しています。また、米FRBは利上げに慎重になるとの観測もあり、米長期金利は現在、2月中旬の水準から大幅に低下しています。これらに伴い日本の長期金利は2日に一時0.13%と、1月21日以来の水準まで低下しました。その後は一時上昇に転じたものの、先行き不安などによる金利低下圧力は、まだ残りそうです。
◆為替 : 上値重い中、一進一退
ドル円は、レンジ内で一進一退の動きが見込まれます。ウクライナ情勢がますます緊迫化しており、米長期金利への低下圧力が強まっていることから、ドル円の上値は重そうです。また、インフレ懸念が高まる一方、米景気の先行き不透明感も広がっており、米国の早期大幅利上げの可能性が低下していることもドル円の上値を抑えそうです。当面、ウクライナ情勢の展開をにらみながら、方向感の見定めにくい神経質な展開が続きそうです。
◆Jリート :底堅さも示す
Jリートは、やや不安定ながら、底堅い動きも示しそうです。足元、市場のリスク回避ムードに圧迫される一方、内外の長期金利低下が好感され、東証REIT指数は、日経平均株価などに比べ底堅さも見せています。引き続き長期金利の低下が不動産市場の追い風になるとみられることが、Jリートを支えそうです。また、ウクライナ情勢の緊迫化による不動産市場への直接的な影響は大きくないとの見方も、Jリートを支える可能性があります。
■来週の注目点
景気ウォッチャー調査(2月) 3月8日(火)午後3時発表
景気ウォッチャー調査の現状判断指数(DI)は、1月に前月差19.6ポイント低下の37.9となりました。家計動向関連、企業動向関連とも低下しましたが、新型コロナウイルスの感染急拡大を背景に、特に家計動向関連のうち飲食関連やサービス関連が大きく低下しました。
2月の現状判断指数は、小幅な低下が見込まれます。感染拡大が続く中、引き続き家計動向関連の景況感が悪化したとみられます。企業動向関連については、資源高によるコスト上昇などが景況感を圧迫した模様です。ただ、現在、感染者がやや減少する兆しも示されているため、3月以降は現状判断指数の緩やかな持ち直しが予想されます。
米消費者物価指数(2月) 3月10日(木)午後10時30分発表
1月の米消費者物価指数(CPI)は、総合で前年比7.5%の上昇となり、市場予想を上回るとともに、1982年以降で最大の伸びとなりました。また、変動の大きい食品、エネルギーを除くコアCPIは同6.0%上昇となり、やはり1982年以降で最大の伸びとなりました。物価上昇は広範囲に及び、特に1月は前月に比べ、医療サービスなどの分野で大きな伸びがみられました。
米国におけるコロナ感染拡大やサプライチェーンの混乱が続く中、ウクライナ情勢の緊迫化を受け、エネルギーなどの分野を中心に価格上昇は続きそうです。2月は総合で前年比7.9%程度の上昇、コアは同6.4%程度の上昇を想定しています。
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