シンバイオ製薬株式会社(4582 JASDAQ)
会社予想(13億円台半ば)の営業黒字は達成可能

2021/12/06

フォローアップ・レポート
フェアリサーチ株式会社
鈴木 壯

2021年13億円半ばの営業黒字は射程内
主力のトレアキシン®の販売は、自社販売体制への切り替えに伴う在庫調整やコロナウイルス感染症の影響で、第3四半期までの売上げは会社の通期予想に対し進捗率60.7%とやや勢いを欠く。ただし、2021年3月に承認されたr/rDLBCLへの適応拡大が順調に進捗し、自社販売体制も着実に立ち上がっている。一方、RTD製剤への切り替えは、会社側が計画していたペースでは進まず、切り替えによる原価低減効果の進捗は想定よりやや遅れたため、第3四半期の原価率は、第2四半期から0.3%ポイント低下の26.4%にとどまっている。それでも、第3四半期の営業利益率は25.7%に到達し、第1-3四半期累計で営業利益は4.24億円の黒字に転じた。シンバイオ製薬では、当初の想定よりも、3か月程度の遅れが生じつつもRTD製剤への切り替えが進展していくと予想しており、それに沿って考えると、第4四半期の原価率は22-24%、来年は20%程度まで低下する見通しである。仮に年間売上が会社予想の91.5億円に対し、83.5億円と未達となっても、第4四半期の原価率が24%まで低下し、販管費が第3四半期並みで推移すると、年間の営業利益は会社予想並みの13億円台半ばを確保することは十分可能である。原価率がさらに低下し、売上も会社予想91億円に近づけば、営業利益は会社予想を上振れする可能性が高い。

新規療法の出現でもトレアキシン ® の地位は 当面 揺るがず
主力製品のトレアキシン®が主戦場とする悪性リンパ腫、特にr/rDLBCLの分野では抗体療法や免疫療法の開発が盛んになっている。Polivy®のようなADC(抗体薬物複合体)も出現し、奏効率の高いCAR-T療法も複数誕生し、そしてBiTEs(二重特異性抗体)の開発が期待されている。これらの療法でもトレアキシン®が併用されたり(Pola-BR療法)、前治療で使用(CAR-T)されたりすることが多い。BiTEsでは、トレアキシン®との併用の試験はまだ存在しないが、可能性はゼロではない。いずれにせよ、r/rDLBCLの治療成績は未だ十分とは言えないことから、これまで概観してきた各種併用療法や逐次使用として様々な組み合わせの治療法が検討されていく可能性が高い。ただし、使い慣れたB-R療法の奏効率を大きく上回る療法が出現しない限り、トレアキシン®の地位は当面揺るがないものと考えられる。

リゴセルチブ 、ブリンシドフォビルの開発
 シンバイオ製薬では一旦パイプラインの戦略見直しに入っている。すなわち、リゴセルチブに関しては、当初はMDS(骨髄異形成症候群)を対象疾患として開発していたが、現在では、RAS阻害剤としての機能が注目され、リゴセルチブの導出元であるオンコノバ社を中心として、抗がん剤としての開発が推進されている。シンバイオ製薬でも、他の作用機序の解明をアカデミアと共同して研究中である。また、ブリンシドフォビル(BCV)は、血液がん患者の造血幹細胞移植後のウイルス感染症を視野に小児対象のアデノウイルス感染症のPhase2試験を実施中だが、2022年後半にはGlobalなPivotal試験へステップアップする計画が浮上してくるものと考えられる。さらに、BCVでは腎移植後のウイルス感染症や悪性脳腫瘍を適応症とした開発も視野にあり、今後の開発計画に期待したい。

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