日銀の金融政策、市場の関心は3月の政策点検に

2021/01/22 <>

▣ 大規模な金融緩和を維持

日銀は1月20、21日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和の維持を決めました。短期金利をマイナス0.1%、長期金利の指標である10年物国債の利回りをゼロ%程度に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)や上限を設けない長期国債の買入れのほか、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(Jリート)の買入れ方針も維持しました。

あわせて公表した「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」では、2020年度の実質国内総生産  (GDP)の成長率見通しについては従来のマイナス5.5%からマイナス5.6%に小幅に引き下げたものの、2021年度は政府の対策の効果などを背景に、プラス3.6%からプラス3.9%に引き上げました(図表1)。

消費者物価指数(CPI)については、2020年度はマイナス0.5%、2021年度はプラス0.5%、2022年度はプラス0.7%を見込むものの、2%の「物価安定の目標」には程遠い水準です。

▣ 3月の会合をめどに政策点検、黒田総裁は具体的な内容を示唆せず

大規模な金融緩和が長期化する中、日銀は3月の会合をめどに、2%の物価目標を実現する観点から、より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検を行い、その結果を公表する予定です。

3月の政策点検をめぐっては、「0%程度で推移する」とした長期金利操作の目標は堅持した上で、実務面ではプラスマイナス0.2%を上回る変動を認めることなどを検討するとの報道を受け、日銀が長期金利の上昇を容認するとの思わくから債券市場がやや不安定になるなど、日銀の政策変更、調整に注目が集まっています。

黒田日銀総裁は会合後の記者会見で、超長期金利の過度な低下は保険や年金などの運用利回りの低下などの影響を及ぼす可能性があるという認識に変わりはないが、債券市場の安定を維持しイールドカーブ(利回り曲線)全体を低位で安定させることが大事との、従来からの考えを改めて示しました。長期金利、超長期金利の上昇はある程度許容するものの、過度な上昇は認めないとみられます。

▣ ETF、Jリートは買入れペースにとらわれず、機動的な買入れ検討か

このほか、ETFやJリートの買入れ手法が見直されるとの思わくもくすぶります。現在、ETFは原則年間6兆円に相当するペース(上限は年間12兆円)で増加するよう、Jリートについては年間900億円に相当するペース(上限は年間1,800億円)で増加するよう買い入れるとしています。日銀は政策点検で、買入れのペースや上限にとらわれず、機動的(例えば下落局面のみ)に必要な買入れを実施する等の手法を検討するとの観測が出ています。

日銀は、現在の金融政策の枠組みを変えることはしないとみられます。また、市場を混乱させることは避けるとみられますが、3月の会合が近づくと、日銀の政策点検をめぐる思わくで、金融市場が振らされる場面も出てきそうです。

図表、スケジュール入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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