10月11日妥当レンジ 20,300円~22,000円
株式市場と秋の空・・・・好材料の後は、悪材料が気になる

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<米中の部分合意に市場は好感したが、やや喜びすぎか?>
■米連邦準備制度理事会(FRB)は11日、短期金融市場において銀行間金利が上昇して不安定になっていることに対応して、資金不足解消のため短期国債を月600億ドルのペースで購入すると発表。FRBでは金融緩和と位置づけず、あくまでも短期市場の安定化と強調しているものの、実態的には金融緩和と同じ効果を生むものと思われる。
■中国との貿易問題において、閣僚級協議において部分合意したことが発表された(11日)。米国側の説明では、中国が米国からの農産品の輸入を400~500億ドル購入する、通貨政策で透明性を確保し、米国金融機関に市場開放をしてゆく方針であるとのこと。これに対して米国は、10月15日から2,500億ドルの中国からの輸入製品に対する関税引上げ(25%→30%)を見送り、「為替操作国」の解除に関して今後検討するという内容である。
■今週は、英国のEU離脱問題に注目が集まりそうだ。19日には離脱期限の延期要請の期限を迎えるが、英国の代替案に対して、17-18日の欧州首脳会議での協議で承認されれば、離脱が現実化する。経済指標の発表は、米国小売売上高(16日)、米国住宅着工件数(17日)、米国鉱工業生産指数(17日)、中国GDP(7-9月・18日)、中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(18日)、が予定されている。

< 「IFIS/TIWコンセンサス225」は来期・再来期が前週比プラス>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、来期・再来期ベースでプラスになったが、これはファーストリテイリング(9983)が本決算を発表し、対象決算期が移行した影響が大きい。
■市場は、米中の部分合意を好感して15日には大幅上昇となった。また、10月下旬の米FOMCや日銀の金融政策決定会合での利下げ・マイナス金利拡大への期待も大きい。しかし、中東での地政学的リスクの増大や、トランプ大統領への弾劾調査、企業業績の悪化などリスク要因も多く、深追いは禁物と考える。来期・再来期のコンセンサス予想は決算発表後に大きく下方修正されるリスクにも注意が必要。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,300円~22,000 (前回20,000円~21,600円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月11日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月11日)

今期予想EPS 1343.18 (前週1343.64円)
来期予想EPS 1407.31 (前週1399.81円)
再来期予想EPS 1516.72 (前週1505.72円)
今期予想PER 16.23 (前週15.93倍)
来期予想PER 15.49 (前週15.30倍)
再来期予想PER 14.37 (前週14.22倍)
来期予想PBR 1.04 (前週1.03倍)
来期予想ROE 6.74% 前週 6.70%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.83% (前週 6.87%)

10月11日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

  



15日の東京市場は、米中貿易交渉において部分合意がなされたことを好感して大幅高となったが、やや生き過ぎでは?
リスクフリーレートを-0.190%(10/11現在)とした場合の妥当レンジは、21,00022,700円。


来期予想ベースのプラス企業比率は、 36.541.653.3%→37.044.4
再来期予想ベースのプラス企業比率は、39.642.952.4%→36.641.9
来期・再来期のコンセンサスは2Q決算発表後に顕著に低下する(?)

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。