8月10日妥当レンジ 20,600円~22,250円
地政学的リスクに揺れる展開、米インフレ率にも注意

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<地政学的リスクと米CPIの下ブレから円高・株安に>

■8日のトランプ大統領の“炎と怒り”発言を端に、北朝鮮と米国が互いに威嚇することによって、地政学的リスクが急速に高まったこと、7月の米消費者物価(CPI)が市場予想を下回ったことから、長期債利回りの低下と円高によって、連休明けの東京株式市場は大幅な下落に見舞われた。
■7月の米CPI(11日発表)は前月比+0.1%(市場予想+0.2%)と予想外に弱い数値であった。11日のドル円は一時的に109円を割り込んで円高が進んだ。14日のダドリー米NY連銀総裁の「FRBが9月にバランスシート縮小を開始するとの見通しは不合理でなく、経済指標が持ちこたえれば年内あと1回の利上げがある」という発言から110円台に戻しているが、FRBの12月再利上げのシナリオに疑問も強まりつつある。足もとでは、31日発表のPCEコアデフレーターに注目が集まりそうである。
■北朝鮮に対して米国は外交的努力を図るとの見方もある一方で、北朝鮮の出方次第では交戦の口火となる可能性も否定できない。そのため、株式市場はリバウンド基調にあるものの、8日高値(日経平均株価:20,085円)が天井となる上値の重い展開が月末までは続きそうである。
■その後は、北朝鮮状勢と8月の米経済指標が鍵となるだろう。

 

<懸案事項は多いが、強気シナリオを堅持>

■1Q決算発表も一巡し、日経平均のコンセンサス予想EPSは、今期ベースで+28.5円、来期+20.4円、再来期+25.0円上乗せされた(6/30と8/10の比較)。為替動向が気にかかるものの、日本株の割安感は顕著であり、まだ強気シナリオを堅持する。北朝鮮問題と米インフレから上値の重い展開が続くが株価の下振れするタイミングは押し目買いの好機と考える。
■8月10日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間でコンセンサス予想EPSはプラス。コンセンサスDI(=予想EPSの前週比プラス比率)も全期間で50を上回って安定的に推移している。14日に発表された4-6月期GDP速報では年率換算で+4.0%の高成長。輸出主導ではなく、個人消費・設備投資が牽引しており、引き続き底堅い成長が見込まれる。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,760円~22,250 (前回20,750円~22,400円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月10日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月10日)

今期予想EPS 1168.81 (前週 1164.88円)
来期予想EPS 1279.95 (前週 1277.00円)
再来期予想EPS 1389.16 (前週 1380.20円)
今期予想PER 16.88 (前週 17.13倍)
来期予想PER 15.41 (前週 15.62倍)
再来期予想PER 14.20 (前週 14.46倍)
来期予想PBR 1.19 (前週 1.21倍)
来期予想ROE 7.71% 前週 7.73%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.29% (前週 7.27%)

8月10日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出



図1
妥当レンジとの乖離が一段と広がる。


 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 57.0%→55.4%→56.8%→57.8%→57.2%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、46.654.966.758.6%→61.7
高水準を安定的にキープ。

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。