4月1日妥当レンジ 15,900円~17,200円
悪抜けは近い。内需関連銘柄の押し目買いは積極的に。

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<米国経済指標は好調だがドル安続く>
■29日のイエレンFRB議長の講演での利上げに慎重なスタンスの表明からドル安に為替は傾いている。3月の米雇用統計、ISM製造業景気指数ともに市場予想をやや上回り好調であったにもかかわらず、為替はドル高には反応薄。4月のFOMC(4/26・27)での利上げ見通しが無くなったことが影響している。ただし、4月、5月と好調が続けば、6月のFOMC(6/14・15)での利上げの可能性は十分残っており、ドル安円高が一本長子に進むとは考え難い。ただし、8日の国際収支統計(日本・2月)での黒字の大幅拡大が見込まれている点は要注意。
■2月の国内経済統計は、家計調査(世帯支出)、商業動態統計、鉱工業生産など芳しくない状況である。その中で有効求人倍率だけが1.28(前月比変わらず)と高水準を維持している。 1日発表となった日銀短観・大企業製造業の業況判断DIは+6と前回(+12)よりも大幅に悪化した。これが日本株の大幅安の弾き金となったが、一方で4月の日銀金融政策決定会合(4/27・28)での追加緩和の可能性を高めている。ただし、4月から住宅ローン金利の一部引上げなどマイナス金利による弊害も懸念されている。追加緩和=円安・株高という単純な構図にならないリスクには注意したい。
■3月末で16年度の業績見通しの悪化はかなり織り込まれたものと考えていたが、配当金の権利確保と、消費増税再延期の期待という目眩ましが存在したようである。いずれにしても決算発表(4月下旬から5月上旬)で一旦悪抜けになると考える。

 

<コンセンサス予想EPSは全期間再びマイナスに>
■4月1日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、再び全期間において前週比マイナスとなった。前週比で予想EPSがプラスになった銘柄の比率は、来期・再来期ともに40%台前半に後退した。ただし、バリュエーション面では期変わり(対象決算期の変更)を控えて割安感が強まっている。為替面から輸出関連となる製造業は買い難いが、ソフトウエア、ネット関連、小売・旅行など内需銘柄には割安感の強いものも多く、マーケットの下落局面では積極的に押し目を拾いたい。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

15,900円~17,200円 (前回16,500円~17,850円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(4月1日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(4月1日)

今期予想EPS 945.19 (前週 955.53円)
来期予想EPS 1093.66 (前週 1094.10円)
再来期予想EPS 1174.87 (前週 1177.02円)
今期予想PER 17.10 (前週 17.79倍)
来期予想PER 14.78 (前週 15.54倍)
再来期予想PER 13.76 (前週 14.45倍)
来期予想PBR 1.03 (前週 1.08倍)
来期予想ROE 6.94% 前週 6.97%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.96% (前週 6.90%)

*4月1 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1決算発表で悪抜け。タイミング的には底打ちは近い。

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 30.3%→40.2%→44.2%→45.1%→41.4%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、26.8%→38.6%→40.5%→48.8%→40.7%。

来期・再来期ともに後退。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

図3日経新聞からの逆算EPS(日経平均÷日経平均のPER)では3月下旬に目眩ましがあった。

 

図4来期・再来期のコンセンサス予想EPSの減少トレンドは鈍化している。

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。