6月12日妥当レンジ 19,050円~20,500円
ギリシャ、FOMC、日銀決定会合と波乱要素の多い週

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<ギリシャのデフォルトの可能性が強まってきた>
■ギリシャ債務問題は、ギリシャと国際債権団のブリュッセル協議(14日)が決裂に終わった。同国は協議再開のために提案を再提出する見込みはないと表明しており、ギリシャ破綻の可能性が強まってきた。18日のユーロ圏財務相会合が大きな山場として注目されよう。
■米FOMCが16日~17日の日程で開催される。米国経済指標は、雇用統計、小売売上高、住宅建設業者指数など好調な半面で、鉱工業生産、NY州製造業景況感指数など悪化を示す指標も少なくない。米利上げ機運が高まっているようにも見えるが、ドル高に拍車をかける可能性があるだけに、FRBの舵取りに注目が集まる。
■日銀金融政策決定会合も18日~19日の日程で開催される。10日の衆議院財政金融委員会における黒田総裁の発言の真意について注目が集まりそうである。黒田発言については、「円だけが突出して安くなることはないとの見方を示しただけ」と見方もある一方で、「130円シナリオの封じ込み」、「G7でドル高懸念を共有した可能性」という憶測も少なくない。日銀のスタンスの再確認が求められよう。

 

<コンセンサス予想EPSは全期間でプラス>
■12日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間(今期・来期・再来期)でプラスになった。注目すべきは、全期間で前週比プラス変化した企業数がマイナス企業数を大きく上回った点にある。
■今回も、国内長期金利の上昇(6/5終値0.48%→6/12終値0.50%)から妥当レンジを若干引き下げる。今後の日銀のスタンスによって金利・為替動向に影響が考えられる。目先的にはギリシャ問題と、米国の利上げ開始の織り込みから株価が調整する可能性も指摘される。ただし、世界的に経済が回復基調にある中での金利の上昇は、中期的には企業業績の向上によってオフセットされると考えられる。いずれにしても神経質な一週間になりそうである。
 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,050円~20,500円 (前回 19,100円~20,550円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月12日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月12日)

今期予想EPS 1049.86 (前週 1043.41円)
来期予想EPS 1164.25 (前週 1157.65円)
再来期予想EPS 1263.68 (前週 1255.06円)
今期予想PER 19.44 (前週 19.61倍)
来期予想PER 17.53 (前週 17.67倍)
再来期予想PER 16.15 (前週 16.30倍)
来期予想PBR 1.33 (前週 1.34倍)
来期予想ROE 7.59% 前週 7.58%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.52% (前週 6.52%)

*6月12日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 図1 
金利上昇から依然として上値を押さえつけられた状態が続く

 

 

図2 
配当利回りから長期金利を差し引いた水準は過去1年余のトレンド内。

 

  
図3 
インプライド・リスク・プレミアムは一段と低下するものの、期待収益率は7.0%割れをせずに若干上昇。

 

図4 
来期予想ベースのプラス企業比率は、74.1%→55.1%→53.3%→56.1%→65.1%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、64.0%→52.4%→57.6%→53.5%→62.6%。
コンセンサスEPSのプラス傾向が強まっており、マーケットの大崩はないと考える。
 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。