米国が鉄鋼・アルミ関税を発動

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◆短期、長期それぞれの目線で解釈

トランプ米大統領は3月12日、米国への鉄鋼とアルミニウムの輸入に対する25%の関税を発動しました。今回の関税に例外や適用除外はなく、全ての貿易相手国・地域が対象です。これにより、関税の影響はEU(欧州連合)や日本、韓国、オーストラリアなど主要貿易相手国・同盟国にも及ぶことになります。欧州委員会は、米国からの輸入品に対する対抗措置を開始し、日本政府は、林芳正官房長官が遺憾の意を表明しました。

株式市場は大きく反応しています。トランプ氏が大統領に就任した1月20日から3月13日までに、日経平均株価は▲5.4%、NYダウは▲6.1%下落しています。

トランプ氏は、大統領選の最中から中国やカナダ、メキシコへの(追加)関税の可能性を示唆しており、金融市場では相互関税による世界景気の悪化が懸念されていました。しかし、当初2月に発動するとしていたカナダ、メキシコへの関税が延期されたことに加え、トランプ氏は株価の下落や経済の悪化につながるようなことはしないといった、いわゆる「トランプ・プット」が意識されるなど市場では楽観視する見方もありました。

そのような中、3月9日に放送された米メディアにおいて、アメリカの景気後退への懸念について問われたトランプ氏は、「我々は非常に大きなことをやっているのだから、過渡期はある。我々はアメリカに富を取り戻そうとしている。それは大きな仕事だ」とし、自身の関税措置によってアメリカが景気後退に陥る可能性を否定しませんでした。これが投資家心理に大きくマイナスの影響を与えました。

金融市場が次に警戒しているのは4月の追加関税です。トランプ氏は、2月1日にメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を課す大統領令に署名し、1カ月後の3月4日に発動しました。この大統領令について、翌5日にUSMCA(アメリカ・メキシコ・カナダ協定)内の自動車は4月2日まで関税対象外とし、6日には他の品目も同様の措置と修正しました。今後は4月2日に追加関税に踏み切るかどうかが最大の焦点になります。

では、「トランプ・プット」は完全に崩れたのでしょうか。これは時間軸を分けて考える必要がありそうです。ギリギリの交渉を行うトランプ氏は、4月に向けて貿易相手国に一層のプレッシャーをかけてくることが想定されます。当面は報復関税のかけあいによる世界経済の悪化を懸念する場面も出てくるでしょう。しかし、実際に米経済が本格的な景気後退に陥る状況にまで至るのでしょうか。仮にそうなった場合、トランプ氏の岩盤と言われる支持層にもマイナスの影響は直撃し、支持率の大幅下落は避けられないとみられます。トランプ氏は、短期的な景気懸念は受け入れたとしても、2026年秋の中間選挙に向けては、むしろ良好な経済を演出する必要があります。

株価の下落もいとわず交渉しているトランプ氏。来年秋を睨んだタイミングでは、「貿易相手国からの譲歩を引き出した」と成果をアピールする段階に入る可能性もありそうです。

(チーフストラテジスト 上野 裕之)

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