日銀の新たな『金融緩和』から1年を振り返る
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日本銀行(日銀)は、2016年9月20、21日の金融政策決定会合で、従来の「量的・質的金融緩和」、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を強化する形で、新たな『金融緩和』の枠組みとして「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入しました。2%の「物価安定の目標」に向けてデフレは脱したものの、目標達成は依然として遠い状態です。日銀の『金融緩和』の行方はどうなるのでしょうか? |
【ポイント1】日銀が昨年導入した『金融緩和』の枠組みは2本柱からなる
「イールドカーブ・コントロール」と「オーバーシュート型コミットメント」
■日銀が1年前に導入した『金融緩和』の枠組みは、①長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」、②消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」を2本柱としています。新しい枠組みでは、これまで『金融緩和』のターゲットとされていた“量”は主眼から外れ、“金利”のコントロールが新たな目標となっています。
【ポイント2】量的緩和では国債買入れペースが減速
ETFやJ-REITは着実に増加、日銀が大株主の銘柄も
■日銀による具体的な『金融緩和』の手段としては、国債の買入れがあります。日銀は、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、国債の買入れを行っています。買入れ額は、保有残高が年間約80兆円のペースで増加することが“めど”とされています。
■変更前の『金融緩和』では、国債の買入れペースが目標として明記されていましたが、現在はあくまで“めど”となりました。実際には、国債の買入れ額は年間60兆円程度のペースに減少しています。
■一方、ETFやJ-REITなど国債以外の資産については、現行以前の『金融緩和』の内容を引き継いで着実に増加しています。株式市場では日銀を大株主とする銘柄も増加してきており、その影響は小さくありません。
【今後の展開】物価目標の達成時期は徐々に後ずれ、当面は現行維持か
■日銀は2%の「物価安定の目標」の達成のため、2013年4月以来、強力な『金融緩和』を継続しています。この結果、持続的なデフレは脱したものの、その目標達成時期は当初から徐々に後ずれしてきており、現在は2019年度頃と日銀は見ています。日銀の黒田総裁は、現在の『金融緩和』の枠組みについて「持続性が非常に高い」と評価しており、当面は現状の金融政策が続けられると見られます。ただし、来春には黒田総裁の任期満了が迫っており、次期総裁が誰になるかとともに、政策変更の有無についても注目です。
(2017年 9月 25日)
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