『米長期金利』が上昇しないワケ
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『米長期金利』は、10年国債利回りでみると、2017年に入り、2.1%~2.6%台のレンジ内で推移しています。米国では3月に続き6月にも米連邦準備制度理事会(FRB)による0.25%の利上げが行われ、短期金利が上昇しました。今後も金融正常化に向けてFRBは利上げを続ける意思を示していますが、『米長期金利』は足元ではむしろ低下基調で推移しています。 『米長期金利』は、なぜ上昇しないのでしょうか? |
【ポイント1】米国のインフレが高まらない
年内の追加利上げに不透明感
■『米長期金利』 が上昇しない理由として最初に挙げられるのが、米国のインフレ率が上がってこないことです。7月の失業率が4.3%まで低下し、雇用がひっ迫するなかでも、インフレ圧力は高まっていません。7月の消費者物価指数コアは3カ月連続で前年同月比+1.7%となり、年初の+2%台からは鈍化傾向が鮮明です。
■FRBは、完全雇用の下でインフレが落ち着いているのは「一時的」という立場です。ただし、インフレが高まらない理由についてはメンバーの間で意見が割れているようです。利上げは今年3回(年内にもう1回)というFRBの標準シナリオの実現については不透明感が高まっています。
【ポイント2】海外マネー流入による好需給
トランプ政権の不安定な運営も要因
■金融緩和が続く日欧の超低金利も『米長期金利』の上昇を妨げてきたと考えられます。世界的なカネ余りを背景に、海外マネーが相対的に利回りの高い米国債に流入しているためです。
■また、トランプ大統領の政権運営への懸念も要因と見られます。不安定な政権運営は経済政策を遅らせると共に米景気の拡大期待を後退させ、FRBの金融引き締め策にも影響を及ぼしかねないからです。
【今後の展開】 『米長期金利』は緩やかな上昇にとどまる見込み
■市場の注目を集めた「ジャクソンホール会議」において、イエレンFRB議長は金融政策への直接的な言及を避けました。 『米長期金利』は、年内の追加利上げへの手掛かりが得られなかったため更に低下しました。
■FRBは、インフレ停滞が「一時的」という立場で、早期に資産圧縮開始を決める見通しです。ただし、インフレの上昇を確認する余裕があるため、次の利上げについては、来年に先送りされる可能性が高いと思われます。 FRBの金融引き締めの方向性は変わらないものの、高まりにくいインフレ圧力や債券の好需給に加え、トランプ政権の不安定さもあり、『米長期金利』は緩やかな上昇にとどまる見込みです。
(2017年 8月 30日)
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