改善が進む豪州経済 堅調な展開が見込まれる豪ドル
改善が進む豪州経済 堅調な展開が見込まれる豪ドル
【ポイント1】堅調に推移する豪ドル相場
経常収支改善や日豪金利差等による
■豪ドルの対円相場は16年6月下旬を底に戻り歩調を辿っています。
■足元の豪ドルはやや軟化していますが、①資源価格の安定が予想される、②豪州経済の順調な成長が見込まれる、③豪州の経常収支の改善が予想される、④豪州準備銀行(RBA)の中立姿勢維持に対して、日銀は緩和姿勢を継続という、金融政策の方向性に違いがある等から判断すると、今後も豪ドルの対円相場は底堅く推移すると予想されます。以下では、豪ドル高を支える上記の要因①〜④について検証していきます。
【ポイント2】上昇に向かう資源価格
中国の需要が底入れの見通し
■鉄鋼の主原料となる鉄鉱石の価格は、17年6月に1トン当たり55ドルを割り込みましたが、これを当面のボトムに持ち直してきました。足元では同80ドル近傍の水準で推移しています。
■石炭の価格は、鉄鋼用原材料としてのコークス製造などに使われる原料炭で見て、今年5月~6月頃を底に上昇基調に転換しています。
■中国では社会資本整備のための公共投資が拡大し、鋼材需要が増大しています。こうした需要の拡大に加え、供給の抑制により需給が引き締まり、鋼材価格が上昇しています。これは鉄鉱石のみならず、原料炭価格等にも追い風となります。
■鉄鉱石の主要産地のひとつである中国の鉱山の損益分岐点は、1トン当たり70ドル前後と推計されます。足元の価格は、これを上回ってきたことから、中国における今後の鉄鉱石の生産動向には注意を払っておく必要があります。
【今後の展開】経済成長率は加速へ
(1)改善が続く国際収支と、順調に拡大する雇用・消費
■資源価格の持ち直しを受け、豪州の国際収支も改善を続けています。貿易収支をとると、16年上半期の▲154億豪ドルから同年下半期に+25億豪ドルへと黒字転換を果たし、17年の上半期には+103億豪ドルに黒字幅は拡大しました。
■内需も、民間消費を中心に堅調に推移しています。小売売上高を見ると、今年3月の前年同月比2.3%増から6月の同3.8%増まで加速しました。
■消費堅調の背景にあるのは、労働市場の改善です。7月の雇用者数は前月比2.8万人増、豪州準備銀行(RBA)が重視するトレンド値は同2.6万人増と、堅調に推移しています。失業率は5.6%と、前月に比べ0.1ポイント低下しました。
■豪州の1-3月期の実質GDP成長率はハリケーンの影響等から前年同期比+1.7%にとどまりましたが、今後は天候要因の一巡に加え、資源価格の持ち直しによる資源セクターの回復(鉱業投資の復調等)が見込まれること等から、今後、成長率は+3%程度まで加速する見通しです。
(2)物価は緩やかな上昇、金融政策は現状維持
■17年4-6月期の消費者物価上昇率は、RBAが重視するトリム平均値で見て、前年同期比+1.8%となりました。原油価格の持ち直し等、一時的な要因の影響もありましたが、ようやくRBAの目標レンジ+2%~3%の下限に向け持ち直しつつあります。
■景気の緩やかな拡大、高まりつつあるとはいえ依然として目標レンジを下回る物価上昇率に加え、過熱感があった住宅市場に鎮静化の徴候が見えてきたこと等から判断すると、金融政策は当面、据え置かれる可能性が高いと考えられます。
(2017年 8月29日)
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