ECBの『テーパリング』とユーロ高の関係
<今日のキーワード>ECBの『テーパリング』とユーロ高の関係
ユーロドル相場は、2015年の春以降、概ね1ユーロ=1.05~1.15ドルの間を上下する展開が続いていましたが、今年に入って上昇し、足元では1.16台をつけて、これまでの取引レンジを上に抜ける展開となっています。その背景にあるのが欧州中央銀行(ECB)の金融緩和政策が正常化に向かうとの市場の期待です。特にECBの『テーパリング(量的緩和の縮小)』を巡る思惑が市場を動かしている模様です。 |
【ポイント1】6月下旬のドラギ総裁発言以降ユーロ高加速
ECB理事会では金融政策変更と『テーパリング』の地ならしなし
■ECBのドラギ総裁は6月下旬のECB年次総会で、「デフレ圧力はインフレの力に置き換わった」と発言しました。この発言以降、市場ではECBが『テーパリング』に動くとの見方が強まり、通貨ユーロの上昇が加速しています。
■ECBは7月20日の理事会で、金融政策の現状維持を決定しました。量的金融緩和については、毎月600億ユーロの買い入れを今年末まで続けることが確認され、『テーパリング』に向けた地ならしは行われませんでした。
【ポイント2】ドラギ総裁発言でユーロ高
1年11か月ぶりのユーロ高水準
■ECB理事会では『テーパリング』に関する言及はありませんでしたが、為替市場は、記者会見でドラギ総裁が「政策変更の議論は秋に行う」とした発言に着目しました。為替市場では、ドラギ総裁がユーロ高に懸念を示さなかったことで、『テーパリング』の議論が順調に進むと受け止めたようです。
■ユーロは対ドルで、1ユーロ=1.16ドル台と約1年11カ月ぶりのドル安・ユーロ高水準まで上昇しました。ユーロは対円では一時130円台をつけました。
【今後の展開】ユーロ高基調は続く見込み
■量的緩和策の「出口」に向け市場の注目が集まるなか、ドラギ総裁は難しいかじ取りが求められます。9月のECB理事会では『テーパリング』をアナウンスすると見られますが、ユーロ高と金利上昇が進行し、ECBの物価見通しが下振れすれば、アナウンスのタイミングや『テーパリング』の実施時期が後ずれする可能性もあります。
■しかし、ユーロ圏の景気拡大が続くなか、ECBが『テーパリング』に踏み出す方向性は固まっているため、ユーロ高基調は続く公算が大きいと見られます。特に、2%の物価目標達成時期を1年先送りし、超金融緩和の継続姿勢を示した日銀との違いは鮮明であり、対円でのユーロ高が継続する可能性があります。
(2017年 7月 26日)
印刷用PDFはこちら
関連マーケットレポート
■当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
■当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
■当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
■当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
■当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
■当資料に掲載されている写真がある場合、写真はイメージであり、本文とは関係ない場合があります。
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会