堅調に推移する米国の雇用統計(2017年5月)賃金上昇率は緩やかで、利上げのペースも緩慢となろう
堅調に推移する米国の雇用統計(2017年5月)
【ポイント1】雇用者数は13.8万人増
労働供給余力が低下しつつある
■2017年5月の非農業部門雇用者数は前月比13.8万人増となり、市場予想(ブルームバーグ集計)の同18.2万人増を下回りました。
■労働市場が完全雇用の水準に到達したと見られることから、労働需要の減退(企業の採用意欲の後退)というよりも、労働力の供給余力が低下しつつあることによる影響が大きいと考えられます。
【ポイント2】失業率は低下
約16年ぶりの低い水準
■失業率は4.3%と、2001年5月以来の水準に低下しました。労働力人口が減少(労働供給の減少)したことによるものです。いずれにせよ、米国の労働市場は完全雇用の水準に到達したと考えられます。
■一方、賃金上昇率は前月比0.2%増、前年同月比2.5%増となりました。賃金の伸び率は最近やや鈍っていますが、失業率の低下が示す通り、労働需給が引き締まってきていることを踏まえると、このまま失速する可能性は低いと考えられます。
【今後の展開】緩やかな雇用増、緩やかなペースでの利上げが見込まれる
■雇用統計が公表された6月2日の米国市場では、株価、債券価格が上昇(債券利回りは低下)する一方、米ドルは主要通貨に対して下落しました。5月の雇用者数は前月に比べ増加したものの、市場予想には届かなかったことから、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げの速度は緩やかなものにとどまるとの見方が、より強まったためです。
■米景気・雇用が拡大を続けているため、FRBは継続的に利上げを実施する見通しです。もっとも、物価上昇率が依然として低い水準にあるため、そのペースは緩やかなものになると予想されます。年内の利上げは、あと2回程度にとどまると考えられます。今後、株価は景気、業績の拡大ペースに沿った動きになる見込みです。
(2017年 6月 5日)
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