改善が進む豪州の景気と国際収支、豪ドルも堅調見通し
改善が進む豪州の景気と国際収支、豪ドルも堅調見通し
【ポイント1】成長率は緩やかに加速しよう
物価は安定、金融政策は中立維持へ
(1)資源セクターの回復で景気拡大に弾み
■ 2016年10-12月期の豪州の実質GDP成長率は、前期比+1.1%になりました。前期の同▲0.5%から改善したのみならず、Bloomberg集計による市場予想の同+0.8%も上回りました。民間消費が堅調を維持したうえ、設備投資、純輸出が回復に転じたためです。民間設備投資は同+1.6%と、10四半期振りにプラス成長となりました。
■民間消費を支えているのは、これまでの金利低下の効果と、雇用の堅調な拡大です。直近2月の雇用者数は前月比▲0.6万人でしたが、豪州準備銀行(RBA)が重視するトレンド値(雇用者数は月ごとの変動が激しいため、豪州統計局は変動を均した値をトレンド値として公表)は同+1.2万人でした。トレンド値は16年8月の同+0.3万人を底に緩やかな改善傾向にあります。
■セクター別に見ると、資源価格の低迷から資源セクター(鉱業投資+財輸出)は不調でしたが、金利低下効果等により非資源セクターが堅調に推移しています。当面は資源セクターの低迷を、非資源セクターの拡大で補う展開が予想されますが、資源価格が持ち直してきたことから、今後は資源セクターの回復が見込まれます。17年後半から豪州の景気、雇用は、拡大のペースをやや加速させる見通しです。
(2)物価は緩やかに上昇、金融政策は現状維持
■豪州の消費者物価上昇率は、RBAの目標値である+2%~+3%の下限を下回った状態が続いています。しかし、原油価格の上昇や賃金の底入れ等により、今後は目標レンジに向かって緩やかに高まると見られます。このため、RBAは少なくとも年内いっぱい政策金利を現行の1.50%で据え置く見通しです。
【ポイント2】改善著しい経常収支
中国向け資源輸出が急拡大
■17年1月の豪州の貿易収支は13.0億豪ドルの黒字となりました。16年11月以降3カ月連続の黒字です。中国で鉄鋼生産回復と鉱山減産が起ったことで、豪州の主力輸出品である鉄鉱石や石炭などへの需要、価格が底入れしたためです。
■実際、財別の輸出動向を見ると、1月は石炭・コークスが前年同月比+94.3%、鉱物が同+60.0%、国別では中国向けが同+47.1%、日本向けが同+29.7%等となっています。
■貿易収支の改善により、豪州の経常赤字は、過去最大だった15年10-12月期の▲231億豪ドルから直近16年10-12月期の▲39億豪ドルへと、急減しました。なお同期の貿易収支は+47億ドルの黒字でした。
■資源価格が大きく下振れしない限り、18年までに豪州の経常収支は73年以来の黒字に転換する見通しです。
【今後の展開】堅調な展開が見込まれる豪ドルの対円相場
■豪ドルの対円相場は、中国での需給改善による鉄鉱石や石炭等の資源価格の持ち直しを受け、昨年6月下旬を当面の底に戻り歩調を辿っています。
■①豪州経済の緩やかな拡大、国際収支の黒字転換見通し、②RBAと日銀の金融政策の方向性の違い(RBAは中立姿勢維持の見通し、日銀は緩和姿勢継続)、③資源価格の持ち直し等を踏まえると、今後も豪ドルの対円相場は底堅く推移すると予想されます。
■先進国の中で豪州の利回り水準は高く、豪ドルや豪州債等は投資対象として魅力が大きいと考えられます。
(2017年 3月 30日)
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