かい離する二つの「消費者物価指数」(米国)

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米国には、消費者が購入する財やサービスの価格を測る指標として、「消費者物価指数(CPI)」と「個人消費デフレーター(PCED)」があります。CPIとPCEDは、①PCEDの方がCPIよりも指数に採用している費目の範囲が広い、②同じ費目でも構成比率が異なる、③PCEDが消費者の購買動向の変化に合わせて毎月、構成項目の割合を更新するのに対し、CPIは基準時点の比率で固定している、などの違いがあります。

【ポイント1】大きな「かい離」を見せるCPIとPCED

2014年頃から「かい離」が再び顕著になってきた

■CPIとPCEDは、ともに消費者が購入する財やサービスの価格動向を見る指標ですが、直近10月の上昇率を変動の激しいエネルギーと食料品を除いたコア指数で比較すると、CPIコアが前年同月比+2.1%、PCEDコアが同+1.7%でした。1~10月平均ではCPIコアが前年同期比+2.2%、PCEDコアが同+1.6%と、両者の間に大きな開きがあります(11月はCPIコア上昇率が前年比+1.7%、PCEDは未発表)。

 

【ポイント2】かい離の主因は住居費

CPIコアに占める住居費の比重が高い

■もともと、CPI上昇率はPCEDに比べて高い傾向がありますが、最近かい離が再び拡大してきた背景には、12年頃から住居費が回復傾向を強めてきたことがあります。住居費がCPIに占める比率は30%強、コアに占める比率が40%近くに達するのに対し、PCEDコアに占める住居費の割合は約20%にすぎません。つまり、住居費上昇の影響がCPIにより強く反映されているのです。

■一方、CPIよりもPCEDに占める比重の方がはるかに大きい医療費の上昇率は、鈍化傾向にあります(CPIコアに占める医療費の比重は8%強、PCEDコアに占める比重は20%強)。

 

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【今後の展開】ドル高などから物価上昇は緩やかなものとなる見通し

■CPIは、指数を構成する項目の割合を固定しています。このため、価格が上昇した商品の購入を控え、替わりに安い価格の商品の購入を増やすという消費者行動の変化を反映させることができません。この点でPCEDの方が優れており、米連邦準備制度理事会(FRB)もPCEDをより重視しています。

■PCEDコアの上昇率は依然として、FRBの目標値である+2%を下回っています。米国の景気は堅調に推移していますが、ドル高が進んでいる点を踏まえると、今後も物価は落ち着いた動きとなる見通しです。従って、FRBによる利上げは極めて緩やかなペースになると予想されます。

(2016年12月20日)

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