「炭素繊維」の需要は一段と拡大へ(日本)

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「炭素繊維」は、アクリル繊維を高温で焼成して作られます。比重は鉄の四分の一ですが、強度は10倍もある強い繊維です。通常はエポキシなど樹脂の補強材として成形され使用されます。航空機やゴルフクラブなどのスポーツ用品、産業用途に幅広く使用されており、需要は年々増加傾向にあります。「炭素繊維」の製造技術は日本で発明されたため、世界シェアの60%程度を日本企業が占めており、今後の成長が期待されます。

【ポイント1】航空機、スポーツ向け以外に産業用途でも需要拡大

2015年の需要規模は6万トン程度、コスト高がネックも用途が拡大中
■「炭素繊維」の主流であるPAN(ポリアクリロニトリル)系の世界の需要規模は年間で6万トン程度と推定されます。用途は航空宇宙産業向けや、ゴルフクラブのシャフトやテニスラケットなどのスポーツ向けが中心でしたが、近年は風力発電のプロペラや圧力容器などの産業用途向けの拡大が目立っています。

■炭素繊維の価格は1キロ当たり3,000円程度と鉄に比べおよそ100倍も高く、工業用途分野への普及のネックとなっています。ただし、経済的に軽量化メリットが優先される分野では、採用が増加傾向にあります。

【ポイント2】能力増強投資が活発化

世界的には新規参入も増加
■「炭素繊維」の世界的な大手メーカーである東レ、帝人、三菱ケミカルなどは、設備の大幅な増強投資を行ったり、M&Aによる海外メーカーの買収などの動きを活発化させています。

■世界的な注目度の高まりに伴い、中国、インド、トルコ、韓国などのメーカーの新規参入も活発化しています。また、ロシア、中東からの参入も予想されています。*個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

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【今後の展開】軽量化メリットで自動車向けの需要拡大に期待

5年後には需要は倍増との予想も
今後の注目分野は何と言っても自動車向けです。これまでは、コスト面での制約からレーシングカーや超高級車の一部にしか「炭素繊維」は採用されてきませんでした。しかし、ドイツのBMWが、近年量産車の電気自動車に「炭素繊維」の成形部材を採用したことから、今後は自動車分野での採用が相次ぐ見込みです。このため需要は5年後に倍増との予想もあります。

燃費規制の強化がポイント
背景には、燃費規制の強化があげられます。特に欧州では2020年までに二酸化炭素の排出を現在より約26%減らす必要があります。既存のエンジンの改良では対応できず、電気自動車や水素自動車、ハイブリッド車などへのシフトが見込まれます。これらの自動車は電池や水素タンクの重量が大きく、航続距離などの性能面も含め、軽量化が必須となるためです。

(2016年3月24日)

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