『焼き肉業態』への参入が相次ぐ、競争は激化

『焼き肉業態』への参入が相次ぐ、競争は激化

新型コロナの感染拡大を受けた外出自粛や在宅勤務の拡大などにより消費スタイルは一変しました。中でも重点対策として会食の削減が求められたため、外食産業は特に大きな打撃を受け、ビジネスモデルの見直しを迫られました。これを受け家族向け需要を取り込み売り上げが好調な上に、大手による寡占が進んでいない『焼き肉業態』への参入が相次いでいます。一方で競争激化リスクも懸念され動向が注目されます。

【ポイント1】コロナ禍でも『焼き肉業態』は好調

■新型コロナの感染拡大を抑制するため、政府から外出自粛や在宅勤務の拡大の要請を受けて、消費者は外食を削減し、テイクアウトや宅配へシフトしました。また、食べたいものをあらかじめ決めての目的来店が増加しました。このため外食産業は、全体としては大きな落ち込みとなりましたが、業態別では、焼き肉や回転ずしなどは好調な一方、団体顧客への依存が大きい居酒屋や総合型のファミリーレストランなどの業態は苦戦しました。こうした状況を受けて企業はビジネスモデルの見直しを進め、『焼き肉業態』への参入が相次ぎました。

■『焼き肉業態』への参入の背景には回転ずしに比べて、寡占が進んでいないこと、自宅で同じ味を出しにくいこと、ファミリー層に人気があること、換気機能が充実しており、飛沫対策を強調しやすいことなどがあります。

【ポイント2】焼き肉への参入や出店が加速

■居酒屋業態は団体での宴会が激減し厳しい状況にあります。居酒屋大手のワタミは『焼き肉業態』の店舗を住宅地や郊外に出店し、居酒屋から焼き肉に業態転換を進めます。居酒屋ブランド「和民」を全てなくし、焼き肉に経営資源を集中する方針です。居酒屋120店の焼き肉店への転換を早急に行い、将来的に600店舗の展開を目標としています。

■「焼肉きんぐ」を展開する物語コーポレーションは主力の焼き肉の客足が好調で、今期は53店の出店を見込み、これからも年60店ほどのペースで出店を続ける方針です。

【今後の展開】各社が進める業態転換の成否が、今後の成長や業績改善の鍵

■外食産業は参入障壁が比較的低く、過剰競争状況になりがちで、業態転換などが求められていました。今回の業績悪化は新型コロナの感染拡大という特殊要因によるものですが、コロナが収束しても、在宅勤務の定着などにより、コロナ前に完全に戻るのも難しいとみられます。コロナ禍を契機に業態転換が加速したことは、外食産業全体からみればプラスとみられますが、焼き肉などでも参入が相次ぎ競争激化が懸念されます。各社が進める業態転換の成否が、今後の成長や業績改善の鍵となるとみられます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

(2021年5月11日)

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