アジア・オセアニアのリート市場はまちまちの動き 出遅れ解消や今後の景気見通しを織り込む
アジア・オセアニアのリート市場はまちまちの動き
【ポイント1】アジア・オセアニアリートはまちまちの動き
■2021年1月のアジア・オセアニアのリート市場は、シンガポールを除き下落しました。その後オーストラリアはやや反発しましたが、2月5日現在、アジア・パシフィック・リート指数(除く日本、現地通貨ベース)は12月末比▲1.1%、香港は同▲3.6%、シンガポールは同+1.9%、オーストラリアは同▲2.1%となっています。
■シンガポールは、経済活動再開の定着により、内需主導での景気回復が好感されて上昇しました。香港は、感染再拡大に伴う行動規制の継続で、景気回復の見通しが後退したことから下落しました。オーストラリアは、消費者センチメント等の経済指標が景気の回復を示唆する中で、想定より早く金融緩和政策が終了するとの見方から利益確定売りが出て下落しました。
【ポイント2】重要性高まるESG、オーストラリアはトップ評価
■2020年は、新型コロナ感染拡大を背景に新たな生活様式が求められる中、環境(E)、社会(S)、企業統治(G)の課題に取り組む企業へのESG投資が改めて注目されました。ESGの評価機関であるGRESB(グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク)社の2020年評価結果では、オーストラリアがグローバルでトップになっています。マネジメントの項目でトップを獲得している背景には、オーストラリア証券投資委員会が法的権限を使い企業統治是正に取り組んでいることが特徴的に挙げられます。株式市場でESGの重要性が更に高まっていることを踏まえ、リート市場でも同様の観点が注目されます。
【今後の展開】景気回復を見据え、感染対策や事業環境に応じた展開に
■各国の大規模な金融・財政政策やワクチン開発の進展等から景気は回復に向かっており、リートの事業環境は緩やかに改善しています。シンガポール市場は、徹底した感染対策で優位性を保つ中、事業環境に応じた展開を予想します。国内外に豊富な物件取得候補を持つデータセンター特化リートは、市場を上回る成長が期待できます。香港市場は、感染動向に注視しながらの推移を予想します。感染対策強化の影響で昨年12月の小売売上高は減少しましたが、スーパーマーケットの売上高は年を通して前年比プラスで推移しており、同施設を多く保有する最大手リートの業績に寄与するとみています。オーストラリア市場は、中央銀行が量的緩和延長を発表したことなどから、景気回復を支えに底堅い推移を予想します。巣ごもり消費でオンライン売上高は前年比2桁増とEコマースが着実に浸透しており、配送センター等の産業用施設リートの業績拡大が予想されます。
(2021年2月9日)
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