アジア・オセアニアリート市場の現状と見通し

2020/04/23

アジア・オセアニアリート市場の現状と見通し

1.新型コロナウイルス感染拡大でリート市場の混乱が深まる
2.新型コロナウイルス感染拡大とロックダウンを背景に生まれ始めた乖離
3.強い割安感~年後半の収束、経済回復の道筋を確認しながらの展開

1.新型コロナウイルス感染拡大でリート市場の混乱が深まる

■アジア・オセアニアリート市場の代表的な指数であるアジア・パシフィック(除く日本)リート指数は、2月後半に最高値を付けた後、3月下旬にかけて大幅に下落しました。最高値からの下落率は▲40.6%でした。新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化懸念等が背景です。主要市場の下落率は、シンガポールが同▲37.7%、香港が同▲35.5%、オーストラリアが同▲49.2%でした。

■シンガポールリートは、アジア各国に投資するリートが多いのが特徴ですが、新型コロナウイルスの感染が広範囲に及んだことから、リスク回避ムードが波及して下落しました。同国では3月23日以降、すべての外国人の入国及び乗り継ぎが禁止されました。政府は新型コロナウイルス問題が年末まで続くことを想定しており、小売業や観光業の回復には時間がかかると考えられます。香港リートもこれまでのデモの影響に加え、新型コロナウイルスの影響でオフィスを中心に需要の減少が予想されます。

■オーストラリアリートは、消費が減少し賃金の成長が鈍化するなど景気が全般的に減速基調にある中で、新型コロナウイルス問題が景気の悪化に拍車をかけました。小売り売上高の悪化が続く中、政府は3月20日にすべての外国人の入国規制、22日にロックダウン(6カ月以上続く可能性に言及)を発表しました。今後6カ月間、生活必需品を除き、多くの店舗やレストランが閉鎖を余儀なくされるため、小売り売上高は大幅に落ち込み、テナントの倒産が増加する可能性が高まると考えられます。ロックダウンにより、住宅取引も停滞するとみられ、住宅市況が再び低迷する可能性もあります。

2.新型コロナウイルスとロックダウンを背景に生まれ始めた乖離

■景気循環セクターを直撃するロックダウン

●今回、新型コロナウイルスが世界的に拡大する中でアジア・オセアニアリートは大きく下落しました。足元では回復途上にありますが、セクター別に下落率、戻り率をみると、下落や、その後の戻り方に乖離があることが確認できます。

●下落率が相対的に大きいのは「ホテル」、「複合」、「倉庫」、戻り率が相対的に低いのは「小売り」や「オフィス」です。こうした景気循環セクターは消費活動に直接依存しているため、新型コロナウイルスの感染拡大とヒトの移動を制限するロックダウンは、経済活動にとって大きなマイナス要因となります。実際に国内外旅行や外食、宿泊及びショッピングなどの外出を伴う需要が大幅に減少しました。年初来高値から安値まで「ホテル」は▲59.5%、「小売り」は▲43.8%の下落となりました。さらに「小売り」は年初来安値からの足元までの戻り率が19.2%に留まっており、引き続き厳しい環境が続いています。

●「オフィス」は同▲42.5%の下落となりました。新型コロナウイルスの感染拡大により、在宅勤務を採用する企業が増加したことで、オフィス・スペースに対する需要の減少と収益悪化懸念の拡大が背景とみられます。戻り率も19.9%に留まっています。

■新しいビジネススタイルの息吹を取り込むリート

●相対的に下落率が低く、戻り率の高いセクターもあります。一つが「産業用施設」です。「産業用施設」には、電子商取引の急速な成長を背景に好調となっているオンライン・ショッピングなども含まれており、ロックダウンが消費行動の変化を加速させている面も指摘できそうです。同様に、「特殊用途」も相対的に堅調です。「特殊用途」には、データセンターや携帯電話の基地局などといったディフェンシブ性の強い物件が多く含まれています。

●在宅勤務の増加が今後どの程度ビジネススタイルを変化させるかを見通すのはまだ難しい局面です。しかし、安定したインターネット環境やデータストレージ及びモバイルなどに対する需要の強まりは、新型コロナウイルス問題が収束した後も長期的な「働き方と働く環境の変化」として浸透していくことになりそうです。

3.強い割安感~年後半の収束、経済回復の道筋を確認しながらの展開が続こう

■2007年以降の平均値を下回るPBR

●今回の大幅な下落を受け、アジア・パシフィック(除く日本)リート指数の株価純資産倍率(PBR)は大きく低下しました。PBRは20年3月に底を付け4月に若干回復していますが、それでも0.88倍と、リーマン危機後の下落局面も含めて計算した平均値(1.10倍)を割り込んでいます。

●一方、20年3月末の主要国・地域の配当利回りと各国の国債利回りとの格差は大きく拡大しました。豪州リートは7.1%、シンガポールリートは5.4%です。こうした指標からみると、低金利環境の下で、アジア・オセアニアのリート市場は悪材料を織り込みつつ、かなりの水準訂正が進み、割安感の強い位置にあると思われます。

●ただ、各国経済の悪化はしばらく続きそうです。新型コロナウイルスの感染の広がりやロックダウンの解除とその後の経済指標の動向などを確認しつつの展開が続くと思われます。

■アジアでも相次いで打ち出される財政・金融政策

●シンガポールでは、現金給付(最大900シンガポールドル)、従業員の給付の一部肩代わり等GDP比で11%に及ぶ財政政策が打ち出されました。香港では、財政赤字をGDP比で4.8%に設定し、また、市民に一律1万香港ドルの現金支給が決定されています。

●オーストラリア政府は、3月30日に財政政策第3弾を発表しました。具体的には新型コロナウイルスの影響を受けた企業が雇用を維持する場合、一律一人当たり2週間につき1,500豪ドル、合計1,300億豪ドルの給与補助金が支給されます。

●各国・地域とも、新型コロナウイルスの感染拡大を阻止するために移動制限を強化する一方、財政・金融政策を積極的に発動しています。今後は、年後半の収束、経済回復の道筋が見えるかが重要です。道筋が見えれば、投資家心理は改善に向かい、アジア・オセアニアリート市場は大きな反発局面を迎えると考えられます。

(2020年4月23日)

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アジア・オセアニアリート市場の現状と見通し

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