G20後の米中日株式市場の見通し 金融緩和や景気刺激策が相場を下支え

 

 

G20後の米中日株式市場の見通し 金融緩和や景気刺激策が相場を下支え

【ポイント1】大阪サミットは「公平・無差別な貿易へ努力する」ことを宣言

海洋プラスチックごみによる汚染削減を国際目標に設定20190701gl1

■大阪で開催された20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は、29日に自由で無差別な貿易環境の実現に向けた首脳宣言「大阪宣言」を採択し、閉幕しました。海洋プラスチックごみによる追加的な汚染を2050年までにゼロにまで削減することを目指す国際目標などが設定されるなど、一定の成果を挙げました。ただ、貿易面では「自由貿易の推進」といった文言が盛り込めず、「開かれた市場を保つため努力する」にとどまりました。

【ポイント2】米中首脳会談は協議再開で合意20190701gl2

ファーウェイへの制裁緩和を示唆

■G20サミットで最も注目されたのが米中首脳会談でした。7カ月ぶりとなった米中首脳会談では、米中協議が再開される上、3,000億米ドルへの追加関税が猶予されることが正式に決定されました。今回の決定は妥結ではありませんが、年後半の大きな不透明材料が後退したと考えられます。交渉のスピードが加速することは見込み難いですが、ハイテク分野を巡る摩擦がさらに激化する可能性は一旦低下したと思われます。

■また、トランプ大統領は、華為技術(ファーウェイ)への制裁を緩和する可能性を示唆しました。5月に米中協議が決裂した後、トランプ大統領はファーウェイに対する制裁を強化させました。これが中国の態度を一段と硬化させたとの見方もあっただけに、今回の内容は、市場の予想よりも踏み込んだ内容だとして、前向きに評価された模様です。これで習近平首席、中国政府ともメンツを保つことができました。

【今後の展開】米中株式市場は堅調へ、日本株式市場も年後半に戻りを試そう20190701gl3

(1)米国株式市場~利下げ期待から堅調に推移

■米中協議の再開が合意されましたが、内容や時間軸など細目の決定はこれからです。7月2日は対中制裁関税第4弾(3,000億米ドル)の意見公募の期限ですが、とりまとめにとどまると思われます。引き続き米中協議には注意が必要ですが、当面は、業績と金融政策が注目されます。

■業績は今後発表される4-6月期決算と年度下期の見通しを確認する必要があります。米中貿易摩擦が生産活動にマイナスの影響を与えると考えられ、売上高や利益の実績や予想にどの程度織り込まれているかが注目されます。

■金融政策については、7月末の米連邦公開市場委員会(FOMC)で予防的利下げが実施される可能性が高いと思われます。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、短期的な変化ではなく、グローバル景気の基調を判断材料にするとしており、9月も含め、合計50bpの利下げが予想されます。追加関税の可能性とさらなる業績の悪化懸念が後退する中での利下げは、米国株式市場にプラスに作用すると期待されます。

(2)中国株式市場~投資家心理の好転から上昇、景気刺激策への期待が高まろう

■中国株式市場は、ファーウェイの制裁緩和が示唆されたことや米中協議が再開する方向に歩み出したことなどから投資家の心理が好転し、堅調な推移が予想されます。今回の米中首脳会談を踏まえて、景気マインドの悪化にある程度の歯止めがかかる可能性もあります。中国の6月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.4と5月から横ばいで、景気マインドの改善には時間がかかりそうですが、交渉が継続する見通しとなったことで、中国政府の財政支出を中心とした景気刺激策に対する期待が高まると考えられます。今後、中国株式市場は景気回復の確からしさをうかがいながらの展開となりそうです。

(3)日本株式市場~米中の回復から遅れるものの年後半にかけて戻りを試す展開に

■日本株式市場は、米中協議が再開されることで外部環境の好転が期待され、短期的に上昇が予想されます。もっとも米中協議の先行きを巡る不透明感は継続するため、不安定な展開が続くと思われます。また、7月中旬以降は、国内企業の4-6月期決算を迎え、これまでの米中追加関税の影響から業績の下方修正は避けられず、株式市場は一旦それを織り込むと思われます。ただ、主要各国・地域において金融緩和などの政策対応が実施されることによって、株式市場の底割れは回避されると考えられます。その後は、米中協議の緊張がさらに緩和することや主要各国地域の金融政策などの政策による下支えに加え、企業業績も底打ち期待が高まると想定されることから、日本株式市場は年後半にかけて戻りを試す展開になると予想されます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

(2019年7月1日)

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